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企業情報研究開発

2015年11月10日

発表者からのレポート

2015年10月4日から8日までの5日間、日本の富山市でISOM 2015 (International Symposium on Optical Memory 2015) が開催されました。この会議は光メモリに関する国際学会であり、参加国はアジアが中心です。本年の参加者は117名でした。

ISOMは本年度から新しい試みとして、ポスターセッションにおけるデモプレゼンテーションを募集しました。筆者はこれに応募し「Visible-Infrared Achromatic Imaging by Wavefront Coding with Wide-Angle Automobile Camera」と題して、デモプレゼンテーションによる発表をしました。


図1 デフォーカスの波長特性
拡大図


図2 画質のデフォーカス特性
拡大図

近年、撮像装置の焦点深度拡大のための研究が盛んに行われていますが、単純な構成で焦点深度拡大効果を得られる技術としてWFC (Wavefront Coding) が知られています[1][2][3]。WFCは光学系に挿入した位相板により被写体像に焦点ずれに対して不感なボケを与え、そのボケを画像処理で除去することで実効的に焦点深度を拡大する技術です。WFCはさまざまな分野への適用が可能ですが、その焦点深度拡大効果により光軸方向の色収差を除去することもできるので、可視光と赤外光が混合した照明下での夜間用カメラへの適用も期待されています。我々は広角車載カメラにWFCを適用し、色収差除去の効果を確認しました。

使用したレンズは焦点距離0.8mm、画角180°以上の車載カメラ用レンズです。図1は使用したレンズの波長によるデフォーカスの特性を示しています。波長550nmから950nmで約0.04mmの変化があります。カメラの焦点深度はPSNR (Peak Signal-to-Noise Ratio) という指標で定義し、WFCカメラの焦点深度は通常カメラの焦点深度の約3倍になるように設計しました(図2)。この設計を元に位相板を試作し、レンズに位相板を組み込みました。この際、レンズの赤外線カットフィルタを除去しています。


図3 実験での取得画像
拡大図


図4 図3の部分拡大図
拡大図

図3に取得画像を示します。(a)(b)は通常カメラでの画像、(c)(d)はWFCカメラでの画像です。また(a)(c)は可視光照明、(b)(d)は赤外光照明です。各カメラでの合焦位置は可視光照明で無限遠に設定しています。図4図3の部分拡大図です。(a)-(d)は図3の各条件に対応しています。画像内のスポークパターンはレンズから140mmの距離です。通常カメラでは可視光照明(a)ではピントが合っていますが、赤外光照明(b)ではボケが生じています。WFCカメラでは可視光照明(c)でも赤外光照明(d)でも画像にはほぼボケがありません。さらに可視光照明でもWFCカメラでは通常カメラよりもエッジがシャープに表れています。これは可視光照明の中には赤外光の成分も含まれているからと考えられます。

このようにWFCカメラにおける可視赤外光照明での色収差除去の効果を確認しました。研究開発グループ 情報通信イノベーションセンタでは、本技術の製品適用に向けてさらに研究を進めます。

(太田 光彦    記)

参考文献

  • [1] Edward R. Dowski, Jr., and W. Thomas Cathey "Extended depth of field through wave-front coding", APPLIED OPTICS Vol.34, No.11 1859, 10 April 1995
  • [2] Koich Sakita, "Aperture shape dependencies in extended depth of focus for imaging camera by wavefront coding", OPTICAL REVIEW Vol. 22 No. 1, 27 February 2015
  • [3] Mitsuhiko Ohta, "Rotationally symmetric wavefront coding for extended depth of focus with annular phase mask", The Japanese Journal of Applied Physics Vol. 54 No. 9, 25 August 2015
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