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企業情報研究開発

2015年11月25日

発表者からのレポート

2015年8月31日〜9月3日にかけて、IDAWC 2015 (International Desalination Association World Congress 2015) がアメリカ サン・ディエゴで開催されました。海水淡水化は、大きく分けて蒸発法と逆浸透(RO)膜法がありますが、サン・ディエゴはRO膜の発祥の地とのことです。口頭発表、ポスター発表合わせて、300件の発表がありました。

RO膜法の海水淡水化では、海水の浸透圧以上の圧力を加えることで、水分子のみがRO膜を通過し、淡水を得ます。ここでの課題は、膜のファウリング(目詰まり)です。ファウリングが起きると、同じ淡水量を得るために必要な圧力が高くなります。ある程度圧力が高くなったところで膜を洗浄してファウリング原因物質を除去して性能を回復しますが、洗浄液はRO膜にダメージを与えるため、何回か洗浄した膜は新品に交換する必要があります。洗浄や新品との交換は、淡水化システムの稼働率低下につながるので、RO膜を可能な限り洗浄しないで運転する方法が望まれます。このため海水淡水化システムではRO膜の前処理工程を備えています。前処理工程では、RO膜のファウリング原因となる、濁質、有機物、微生物などを除去しますが、設置する海域により水質が異なるため、前処理工程はシステムごとに異なります。


図1 検証中のインライン測定装置
拡大図

従来は、海水中のファウリング原因物質を直接検出する手段がないため、RO膜のポンプの圧力上昇によってファウリングを確認していました。この方法は、ファウリングが検出されるまでに時間がかかるうえ、前処理工程の効果検証に実証設備が必要となります。そこで、我々は、迅速かつ高感度にファウリング物質量をモニターできる技術を開発しました。本技術では、ファウリング原因物質がRO膜の表面に吸着することに着目し、高感度な水晶振動子マイクロバランスのセンサ上にRO膜の表面を再現することで、ファウリング原因物質を選択的に捕捉します。

本技術に関しては、これまで原理検証の結果をIDAWC 2013、SIWW 2014 (Singapore International Water Week 2014) に発表してきましたが、今回は、サウジアラビアの大学、KAU, CEDT (King Abdulaziz University, Center of Excellence in Desalination Technology) との共同研究の成果として、インライン測定の可能性検証を報告しました。これまでの原理検証のオフライン測定では、測定ごとにセンサを交換していたのを、センサの洗浄工程を加えて表面を再生することで、繰り返し測定ができるようにしました。また、自動サンプリング機構を設けて、6時間に1回、4日間自動で測定する手法を開発しました(図1)。この装置を用いて、前処理工程の異なる2つの海水淡水化システムにおいて、RO膜の圧力上昇と測定値の相関が得られました。本発表に対しては、本手法と従来指標や他社から提案されている新指標などを組み合わせることにより、海水淡水化システムの安定稼動に貢献できるのでは、というコメントをいただきました。

今後は、2016年3月までの共同研究期間の中で、異なる水質をRO膜に供給して圧力上昇との相関を観測予定です。製品適用に関しては、まずはオフライン測定を前処理設計の支援に用いることを検討しています。

本研究は、サウジアラビアのKAUおよび日立製作所インフラシステム社 技術開発本部、研究開発グループの共同研究により推進しました。関係各位に感謝いたします。

(中野 敬子    記)

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