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企業情報研究開発

2014年12月1日

発表者からのレポート


図1 WFC方式の比較
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図2 試作した輪帯位相板
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2014年10月20日から23日までの4日間、台湾の新竹市でISOM'14 (International Symposium on Optical Memory) が開催されました。この会議は光メモリに関する国際学会であり、参加国はアジアが中心です。本年の参加者は173名でした。

横浜研究所からの発表は4件で、筆者は「Rotationally Symmetric Wavefront Coding for Extended Depth of Focus with Annular Phase Mask」と題して、輪帯位相板を用いた軸対称系での波面符号化による焦点深度拡大技術について発表しました。

撮像光学系における焦点深度拡大技術は近年研究が盛んであり、中でも波面符号化方式(WFC)は構成が簡単な技術として知られています。WFCは光学系に挿入した位相板により被写体像に焦点ずれに対して不感なボケを与え、そのボケを画像処理で除去することで実効的に焦点深度を拡大する技術です。図1の(1)は、従来のWFCの方式の例です。位相板は三次関数形状をしておりCPMと呼ばれています[1]。この方式では矩形の開口を設ける必要があり[2]光量の損失があります。また位相板形状が非対称であることに起因して、明瞭な偽像の発生、像の位置ずれ、回転調整が必要であることなどの問題がありました。これらの問題を克服するために軸対称形状の位相板での方式が今までにいくつか提案されています[3][4]

横浜研究所では軸対称形状の位相板方式でのWFCを実現するにあたり、位相板の製造性確保のため、従来の提案よりも簡略な構成の位相板での実現を意図し、図1の(2)に示すような複数の輪帯からなる輪帯位相板(APM)の設計を検討しました。各輪帯を通過する光束が互いに干渉するので焦点ずれに対してボケを不感にすることが困難でしたが、輪帯間に段差を設けることにより干渉を除去できることが分かりました。その結果、CPMと同等の焦点深度拡大効果を持つ位相板を設計することができました。図2にその試作品を示します。

図3に被写界深度拡大効果を確認できる画像を示します。通常光学系では100㎜の距離のQRコードには合焦していますが、60㎜の距離の指、1.1mの距離のスポークパターンはボケています。一方APM、CPMを用いたWFC系ではどこにもボケがありません。また、指の輪郭を見るとAPMではCPMよりも偽像が少ないことが分かります。


図3 被写界深度拡大効果
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図4 センサ傾き許容性の実験
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図4はセンサ傾き許容性の実験結果です。センサを3°傾けてテストパターンを撮影しました。通常系では外側のパターンにボケが発生していますが、APM、CPMではボケは発生していません。さらに、APMではCPMよりも偽像の発生が少ないことが分かります。

このようにCPMの持つ欠点を克服した位相板を設計し、その効果を確認することができました。横浜研究所では、本技術の製品適用に向けてさらに研究を続けます。

(太田 光彦    記)

参考文献

  • [1] Edward R. Dowski, Jr., and W. Thomas Cathey "Extended depth of field through wave-front coding", APPLIED OPTICS Vol.34, No.11 1859, 10 April 1995
  • [2] Koich Sakita, "Aperture Shape Dependencies in Expanding Depth of Focus for Imaging Camera by Wavefront Coding", ISOM'13 We-J-04
  • [3] E. Efren Garcia-Guerrero, Eugenio R. Mendez, and Hector M. Escamilla, "Design and fabrication of random phase diffusers for extending the depth of focus", OPTICS EXPRESS Vol.5, No.3 910, 5 February 2007
  • [4] Oliver Cossairt, Changyin Zhou and Shree Nayar, "Diffusion Coded Photography for Extended Depth of Field", ACM Transactions On Graphics Vol.29 Issue4 Article NO.31,July 2010
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