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企業情報研究開発

2014年6月4日

発表者からのレポート


図1 広域分散クラウドのコンセプト
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横浜研究所は、計算処理やデータの保存を、スマートフォンなどの端末に近いデータセンタで行うことで、アプリケーションがサクサク動くような高い応答性を実現する、分散クラウドコンピューティング(図1)、および、アプリケーションとデータの配置の最適化を開発し、2014年4月26日から5月2日にカナダにおいて開催された国際会議 IEEE INFOCOM2014のワークショップCrossCloudにて発表しました。

発表の概要

グローバル化に伴い、アプリケーションを利用する端末が地理的に分散します。アプリケーションが格納されるデータセンタから遠隔にある端末においては、データ処理要求を送信してから処理結果を受信するまでの応答時間が数百ミリから数秒になります。この値は、ユーザビリティを損なわずに利用できる応答時間の限界を超えます。

エンドユーザが閲覧のみ行う静的なWebコンテンツにおいては、端末近傍のサーバにキャッシュすることにより、応答時間が削減されます。一方、エンドユーザが閲覧と書込みを行うアプリケーションにおいては、分散したデータの一貫性を保つため、分散するデータ間で相互参照が生じます。また、分散したアプリケーションの構成要素間でデータ処理が生じます。 そのため、アプリケーションやデータを分散配置し、端末近傍でデータ処理したとしても、必ずしも応答時間が削減されません。応答時間を削減する上で、アプリケーションとデータの配置場所の最適化が課題になります。


図2 WATSの概要
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アプリケーションとデータの配置場所を最適化する従来研究では応答時間を定式化し、整数計画法等で最適化問題を解きます。しかし、クラウド事業者にとって、アプリケーションの構成要素間の相互参照関係や各データに要求される一貫性の強さはブラックボックスです。仮に、これらを把握できたとしても、相互参照関係や要求される一貫性の強さが応答時間に及ぼす影響を定量的に把握するには膨大な分析が必要になります。さらに、パブリッククラウドの性能はばらつきます。そのため、アプリケーションの応答時間を正確に定式化することが難しいのが実情です。また、従来方式を実運用に適用する場合、算出された配置構成の妥当性を検証するため、テスト環境における実測が必要となり、運用管理の負荷が増加します。

そこで、本研究においては、配置計画や分析に要する運用管理の負荷を増やさずに、自律的にアプリケーションとデータを最適なデータセンタに配置し、応答時間を削減します(図2)。提案方式の特徴は以下の2点です。1つ目は、定式化された最適化問題を解く従来のアプローチと異なり、配置構成を繰り返し変更することで、段階的に応答時間を削減する点です。2つ目は、各配置構成において計測される応答時間を含む実行時間の履歴に基づいて、次の配置構成と繰り返し配置変更の停止をベイズ推定により判定*する点です。本判定により、繰り返し配置による計算資源コストの増加を抑えつつ、応答時間を削減します。

*
最も応答時間が小さくなる配置構成を計算し、応答時間が削減される確率がある閾値以下になる場合に、繰り返し配置変更を停止と判定します。

(藪崎 仁史    記)

関連する論文

  • Hitoshi Yabusaki, et. al., "Wide Area Tentative Scaling (WATS) for Quick Response in Distributed Cloud Computing ," IEEE INFOCOM 2014, CrossCloud, April 2014.
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