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企業情報研究開発

2013年8月8日

発表者からのレポート


写真1 発表の様子

横浜研究所は、端末の近くでデータを処理・保存することで通信速度が速く、通信にかかるコストが安い広域分散クラウドコンピューティング、および、信頼性を高くする通信経路制御の試作機の開発に成功し、"Flow control for higher resiliency in wide area distributed cloud computing"と題して、国際会議COMPSAC 2013 (Computer Software & Applications Conference)にて発表しました(写真1)

本国際会議は、2013年7月22日から26日にかけて京都にて開催されました。COMPSACはコンピュータ、ソフトウェア、およびアプリケーションに関するIEEEの国際的な会議であり、コンピュータやソフトウェア技術、アプリケーションにおける研究成果や進歩、今後の動向を議論する学界、産業界、政府のための主要な国際会議の一つとなっています。

発表の概要


図1 従来のクラウドコンピューティングの
課題

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近年、ビッグデータによって、インターネットなどの広域のネットワークに流れる通信量が爆発的に増加する一方で、クラウドを利用するアプリケーションの種類が増えており、クラウドに求められる通信品質は多様になっています(図1)。例えば、機械のセンサ情報の収集や分析、制御を行うM2M (Machine to Machine)アプリケーションでは、電子メールなどの従来のアプリケーションと比べて、より高速に通信できること、サービスが停止しないことが求められます。M2Mアプリケーションは、例えば、さまざまな工場のタービンやポンプ、建設機械などに搭載したセンサのデータを収集して分析します。これによって、世界中の工場にある機械の状態を国内から把握してメンテナンスできるようになります。

しかし、従来のクラウドでは、高速な通信を停止することなく維持することへの対応や、急速に増加する通信量への対応が難しくなっています。その原因の一つとして、多くのM2Mアプリケーションは、1つまたは少数のデータセンタで処理されますが、アプリケーションにアクセスする端末は世界中に分散していることが挙げられます。物理的に遠く離れた地点からアクセスすると、通信時間が長くなり、通信にかかるコストも高くなります。


図2 広域分散クラウドコンピューティング
のユースケース

拡大図



図3 提案するフロー制御の構成
拡大図

この課題を解決するため、横浜研究所では、広域分散クラウドコンピューティング(以下、広域分散クラウド)を開発しています。広域分散クラウドでは、世界中のオフィスや工場などの場所にコンピュータ(以下、マイクロデータセンタ)を設置し、各マイクロデータセンタでデータを処理・保存します(図2)。端末の近くでデータを処理することで、高速な通信と通信コストの削減が実現できます。しかし、広域分散クラウドでは、マイクロデータセンタの障害が発生した際に、サービスを継続することが問題になります。その理由は、オフィスや工場に設置されるマイクロデータセンタはサイズが小さく、頑丈な建物や冗長な設備を備えるデータセンタに比べると、壊れやすいためです。

そこで、横浜研究所では、障害が発生した際に、マイクロデータセンタの通信の出入り口である通信装置で、受信した通信データ(パケット)の宛先を他のマイクロデータセンタに変更する経路制御技術を開発しました。これによって、通信の宛先をすばやく変更できないセンサなどにおいても、障害が発生した際にマイクロデータセンタの入口で宛先を変更できます。そのため、障害が発生した後も、他のマイクロデータセンタにあるアプリケーションを利用できるようになり、サービスを維持することができます。

また、通信の宛先を変更するために、OpenFlow*1という技術を使っていますが、OpenFlowで広域に分散した通信装置に設定する上での問題(パケットインメカニズムによって発生する遅延)を解決するシステム構成(図3)を提案しました。提案した構成では、ネットワークの設計やネットワークの情報収集などの管理機能を一箇所に集中させつつ、通信装置に設定する機能を各マイクロデータセンタに分散させます。管理機能を一箇所に集中させることで、全てのマイクロデータセンタやネットワークの状態に基づいて、広域分散クラウド全体がうまく動くような設計ができるようになります。また、設定する機能を各マイクロデータセンタに分散させることで、設定にかかる遅延を小さくすることができます。試作機を用いて実験を行った結果、従来の構成に比べて、速やかに設定できることが確認されました。

(藪崎 仁史    記)

関連する論文

  • Hitoshi Yabusaki, et. al., "Flow Control for Higher Resiliency in Wide Area Distributed Cloud Computing," proceeding on 37th IEEE COMPSAC2013, IWFIT, July 2013.
*1
OpenFlowはOpen Networking Foundationの登録商標です。
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