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企業情報研究開発

2013年12月6日

発表者からのレポート


写真1 受賞の様子

2013年10月31日から11月2日までの3日間、2nd Asian Conference on Information Systems (ACIS 2013) が、タイのプーケットで開催されました。ACISは広く情報システム全般を取り扱う国際会議で、前身の国際会議も含め、年々規模が大きくなってきています。今年は、口頭発表とポスター発表を合わせて76件の技術発表がなされました。

日立製作所横浜研究所からは2件の口頭発表があり、1件がBest Paper Awardの1つを受賞しました。本稿では受賞した「Risk-aware Data Replication to Massively Multi-sites against Widespread Disasters」についてレポートします(写真1)

地震や津波などの大規模災害環境においても、被災地で継続すべき重要な情報サービスがあります。例えば、戸籍情報サービスやお薬手帳などの医療情報サービスです。戸籍情報サービスは公的機関が被災住民の安否確認を行うために、医療情報サービスは被災住民に適切な医療を施すために、それぞれ用いられます。

このような情報サービスを継続するための方法として、サービスの提供に必要なデータをあらかじめ遠隔地に複製しておくことで災害からデータを保護するディザスタリカバリシステムの利用が一般的です。しかし、東日本大震災(2011年)の経験から、大規模災害下ではこのシステムに問題があることがわかってきました。大規模災害により、被災地からデータ複製先サーバにアクセスする広域通信路が損壊してしまうため、被災地ではサービスを受けることができないのです(図1)


図1 データ保護システムにおける問題
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図2 リスクアウェアデータ複製の概要
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本研究では、リスクアウェア複製という方法を提案し、この問題解決に取り組んでいます。リスクアウェア複製では、データ複製先となるサーバを従来のような遠隔地ではなく、近隣に複数用意します。モデル化した災害リスクと数理計画法を用いて、各サーバの災害からの危険性を定量的に評価することで、多数のサーバから安全な複製先をシステマチックに探索できます(図2)。この手法を災害シミュレーションを使って評価した結果、無作為に複製先を選ぶ場合に比べて、保護されるデータ量が20%以上向上できることがわかりました。

本研究は、文部科学省による委託研究「高機能高可用性情報ストレージ基盤技術の開発」として、東北大学と(株)日立ソリューションズ東日本と共同で推進しています。今後、本研究をさらに進め、医療情報サービスの模擬環境における基盤ストレージシステムとして実装し、2016年度に実環境への適用可能性を実証することを計画しています。

(松本 慎也    記)

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