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「二重スリット実験」として知られるこの実験は、量子力学のテキストのはじめに登場することが多いので皆さんはよくご存知でしょう。実験は図1のように行われます。電子顕微鏡の中の電子源から電子を一個づつ発射します。発射された電子は「電子線バイプリズム」という装置を通ります。この装置は、中央には細い糸状の電極が張ってあり、その両側に二枚の平行な金属板を置いたものです。糸の太さは1ミクロン(千分の一ミリ)以下です。糸の両側を通過した電子は、検出器で一個一個検出されます。この検出器は、浜松フォトニクスの光子検出器を電子用に変えたものです。驚くことに、電子一個を100%に近い効率で検出する感度を持っています。

図1 二重スリット実験
図1 二重スリット実験

実験を開始しましょう。モニターの画面を見てください。

実験を開始すると、モニター上のあちこちに明るい輝点が現れます(図2(a)、(b))。これが電子です。電子が輝点として一個一個検出されます。これらの電子は、5万ボルトに加速されています。すなわち、光の速度の約40%であり、毎秒12万キロメートル、一秒で地球の周りを3周も回る速度です。長さ1メートルの電子顕微鏡の中は、1億分の1秒で、あっという間に通過してしまいます。電子は電子源から出た瞬間に、検出器で検出されると思って間違いありません。ランダムな位置にやって来る電子を沢山積算すると、きっと一様な分布になると思われるかも知れません。

しかし、もう少し実験の推移を見守って下さい。図2(c)が示すように、大量の電子が積算されると、上下方向に縞らしきものが見えてきます。実験が終わる20分後には、はっきりとした干渉縞が観察できます(図2(d))。干渉縞が輝点から出来ており、それぞれの輝点は電子を示していることにも注目して下さい。

図2 電子が積算されてできた干渉縞
図2 電子が積算されてできた干渉縞

大変不思議な結果が得られました。一個一個の電子を送ったにもかかわらず、干渉縞が観測されたのです。この干渉縞は、電子の波が電子バイプリズムの両側を同時に通過して下で重なりあったときにだけ生ずるものです。電子は観察すると、常に一つ一つの粒子として検出されます。しかし、それが積算されると、干渉縞を生じるのです。電子顕微鏡の中には最大で一個の電子しか存在しなかったことを思い出してください。電子顕微鏡の中に2個の電子が同時に存在したとしたら、2個の電子による干渉縞が現れる可能性も否定できませんが、それも起こりえません。毎秒10個の電子しか発射されないので、電子顕微鏡の中には電子は一個だけしか存在しえないからです。常識では考えられない結果にたどり着いてしまいました。

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