ページの本文へ

Hitachi

企業情報研究開発

  • 写真「足立 進吾(あだち しんご)」
    足立 進吾(あだち しんご)
    研究員
  • 写真「高橋 信補(たかはし しんすけ)」
    高橋 信補(たかはし しんすけ)
    主任研究員

水道管の亀裂などによる漏水で、世界では多くの水が失われています。特に東南アジアでは、浄水場から各家庭へ配水する過程で3割以上の水を失っている国があり、漏水対策は世界的な課題となっています。

日立は、海外展開をねらいとして、従来よりも小さい漏水も対象にできる、画期的な漏水調査の支援技術を開発し、実証実験を行いました。技術開発の裏には、「漏水を点ではなく面でとらえる」という研究者の発想の転換がありました。

(2015年10月21日 公開)

世界で注目を集める漏水管理技術

漏水は世界的に深刻な問題だそうですね。

足立水は世界的に注目されている分野です。2000年前後から、21世紀は水の世紀だと言われています。20世紀は石油で戦争が起きたけれども、21世紀は水で戦争が起きるという極端な話もされています。

水は、浄水場から道路の下に埋まっている水道管を通して各家庭に送り届けられます。しかし、水道管は40年、50年といった非常に長い期間使われるので、どうしても古くなります。そうすると、亀裂が入り、水が漏れていく。特に東南アジアでは漏水が深刻な問題で、配水された水のうち、漏水で失う水の割合が30%を超える国があります。30%以上漏水しているということは、貴重な水をそれだけ捨ててしまっているということになります。今回紹介する漏水対策の技術は、貴重な水資源を守るという観点からも非常に重要なのです。

今回の開発は、海外展開をねらいにしているのですね。

足立日本国内の漏水は非常に少なく、東京都だと配水量の約3%に維持されています。こうした高度なインフラを海外のほかの地域にもぜひ広げていきたいという思いがありました。

高橋長い間水のビジネスは国内を対象にしていました。ただ、国内は市場が成熟しているため、海外にも目を向けて事業化していこうということで、日立では2010年から、インテリジェントウォーターシステムという、水道を含めた水環境分野の海外事業化のプロジェクトを始めました。その中で、いろいろな技術開発をしましたが、特に海外向けでは、漏水管理のニーズがいちばん高いと考えまして。漏水を速やかに削減したり、効率的に管理したりする技術を中心に研究テーマを設定して、開発することになりました。

漏水管理技術とはどのような技術なのでしょうか。

足立漏水量を減らすための技術で、一般的には水道管への余剰圧力の低減、漏水の発生個所の調査、漏水の迅速な修理、水道管の取り替えといった手法があります。これらの手法は、漏水の種類によって使い分けられます。

漏水の種類は、大きく、調査で発見できない「不可避漏水」と、調査すれば発見できる漏水とに分けられます。さらに、調査すれば発見できる漏水には、地下に隠れてしまうものと、地上に現れてくるものがあります。地下に隠れてしまう漏水に関しては、音を聞いて水道管の上を歩くという能動的な調査をして発見する必要があります。今回開発した技術は、地下に隠れてしまう漏水をうまく減らしていく、あるいは、少ない漏水量を効率的に維持していくための、能動的調査を支援するものです。

図1 漏水の分類と対策
漏水の分類と対策

点ではなく面でとらえる

今回開発した技術について詳しく教えてください。

足立漏水管理は、管理する地域の水道管網をDMA(District Metered Area)という単位で区切って行います。その中に入ってくる水の量と出ていく量をはかることで、どれくらい漏水しているかを調査するんです。DMAの中でも漏水の多さは場所によってばらつきがあるのですが、従来の方法ではDMA内のどの場所に漏水が多いか、ということまではわかりません。そのため、漏水している場所を探すためには、DMA内にあるすべての水道管網の上を歩いて調査する必要がありました。

そこで我々は、このDMAの中をさらにいくつかの「エリア」に分けて、DMAの中で漏水の多いエリアを見つける技術を開発しました。そうすると、漏水の多いエリアに対して重点的に対策ができ、漏水の調査を行う範囲を減らすことができます。

図2 従来の漏水管理技術との比較
従来の漏水管理技術との比較

高橋この技術では、エリアごとに漏水量を推定するために、管路の老朽度といった情報を使用しています。漏水量を推定するには、一般に、水理解析という管網の圧力などを推定する技術を使うのですが、それだけだとエリアを特定するのはなかなか難しいんです。漏水が起きているポイントのパラメーターをたくさん設定しなくてはいけなくて。そこで、エリアの中で管路がどう分布しているか、どの管が古くてどの管が新しいか、といったアセット(資産)の情報を組み合わせて補い、漏水の分布をうまく見つけることで、エリア単位での推定を可能にしています。

エリアで分割する点がこの技術の特徴なのですね。

高橋そうですね。一般的には、漏水が発生している位置をピンポイントに発見しようと、漏水を点でとらえる方法を考えます。でも点で見つけるのはとても難しいんですよ。ちょっと漏れている個所については見つけようがなくて、大きい漏水しか見つけられないので。じゃあ点ではなくて面でとらえようという考え方がこの技術の特徴ですね。漏水を効率的に管理して削減するには、面的にどの辺で漏水が多いかということをまず捕まえることが非常に重要だと思っています。

足立一つ一つは小さな漏水であっても、多く発生することで大量の水が失われてしまう。このことに対応して、小さな漏水の集まりとして漏水の多い地域を推定しようというのがこの技術のねらいとしたところです。

机上検討から実証へ

海外で実証実験を行ったそうですね。

足立はい。技術の推定精度を検証するために、東南アジアの水道事業体との実証実験を行いました。実証実験で確認したことは、どれくらいの量の漏水があれば、DMA内の漏水しているエリアを特定できるか、ということです。実際に漏水を発生させるのは難しいので、実験は、消火栓からの放水を漏水と見立てて、その水量を推定できるか確認するという手法で行いました。結果として、DMA内の一つのエリアからの3.5%の漏水を正しく見つける、という目標を達成できました。

点で見つけるような方法では、3.5%の漏水を見つけることは難しいです。3.5%の漏水が1個所から起きていて、たまたまそのすぐ近くに圧力計があって…というシチュエーションであればできることもあると思いますが、現実は難しい。それが、我々の方法では達成できました。

実証結果への評価はいかがでしたか。

足立実証の成果を受けて、事業部の方々に納得いただけたということが大きいですね。実証がうまくいくかという点では、実はわたし自身はあまり心配をしていませんでした。しっかり考えてうまくいくという風に思っていましたし、ようやくたどり着いたという思いがあったくらいです。ですが、一緒に取り組んできた事業部の方は、「本当にうまくいくの?」と、心配をされていたようです。実証実験のあと、「実証を通じて迫力がでてきた」「事業を広げるようにこれからも頑張っていきましょう」と言っていただけたのがうれしかったです。

机上検討から実証実験を通して、印象的だったことはありますか。

写真「高橋 信補(たかはし しんすけ)」

高橋この研究はわたしたちのチームでは経験の少ない分野でしたので、この分野の専門の先生にご指導をいただきながら進めたということがあります。最初は足立がシミュレーションを提示しても厳しいコメントが多かったですね。

足立机上の計算では、都合のよい仮定を設けることができてしまいますからね。現実にはシミュレーションどおりにいかないことも多いということで、ご自身の経験も踏まえていろいろと的確なアドバイスをいただきました。これを受けて、シミュレーションの仮定を変えることで机上検討を精緻化し、実フィールドでの実証を通じて、実用できるということを積み上げ、評価してきました。

高橋最終的には「いいね」と言っていただいたんですよね。専門の先生にもお墨付きをいただけたかなと思います。

漏水対策の総合ソリューションをめざして

漏水管理技術の今後の展望を聞かせてください。

写真「足立 進吾(あだち しんご)」

足立実際の現場では、この漏水調査だけではなくて、さまざまなアプローチを組み合わせて使っていくことが重要になると考えています。漏水を速やかに発見修理すること、リアルタイムに漏水を検知する技術、圧力を適正化する技術、管網の管理、効率的な更新、あと配水コントロールといったところがあります。リアルタイム検知や管の更新に関しては、引き続き実証を通じて開発していく必要があると思います。

高橋配水コントロールは国内では実績があり、日立の強みなのですが、海外ではこれからというところです。配水コントロールに加えて、漏水管理技術という新しい技術を組み合わせて、漏水対策の総合ソリューションとして海外に展開できたら、と思っています。一つ一つの技術ではなくて、やっぱり全部持っているという方が迫力があって、ビジネス展開も拡大できると期待しています。

ご自身の今後の目標はありますか。

足立技術開発は「使われてこそ」だと思っています。この漏水管理技術に関しても、広く使われるように改良していきたいと思っています。

高橋最近わたしは漏水以外にエネルギーマネジメントについての研究もしています。電力のピークをカットしたり、要求に応じて電力量を抑制したり、という技術です。このエネルギーマネジメントを、水道分野を中心に、鉄道などのほかのインフラシステムとも連携しながら応用していって、全体としてより効率的に電力を削減していくようなことができないか、といったことを考えています。水道だけに閉じるのではなく…ベースは水道に関する技術なのですが、その他のインフラとも協調しながら、大きな目標を達成していくという方向に進んでいきたいです。

特記事項

  • 2015年10月21日 公開
  • 所属、役職は公開当時のものです。

関連リンク

  • ページの先頭へ

類似キーワードコンテンツ

  • ページの先頭へ