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企業情報研究開発

写真「鈴木 誠人(すずき まさと)」
鈴木 誠人(すずき まさと)
研究員

デジタル放送時代。コンテンツがあふれる中、見たい番組を確実に見つけるのも一苦労です。「知っていたらきっと見たのに!」ということも少なくありません。「何かいい番組ないかな」とほおづえをついてチャンネルを替えているときには、テレビに聞いてみてはいかがでしょう。日立のテレビWoooでは、XP07シリーズから、「Woooおすすめ番組」機能を搭載しています。

(2012年3月27日 公開)

番組に出会う可能性を広げる

「Woooおすすめ番組」機能とはどのような機能ですか。

写真「鈴木 誠人(すずき まさと)」

鈴木ひと言で言いますと、テレビ単体で機能する番組推薦技術です。ユーザがテレビで番組を録画または視聴した履歴を使って、ユーザの好みを分析し、その好みに合う番組を選び出します。

デジタル放送の番組数は、首都圏だと地上デジタル放送とBSデジタル放送あわせて1週間でだいたい8,000番組にもなります。その中からユーザが見たい番組を探すのは、とても大変です。番組を探す従来の手段としては、「番組表を見る」、「検索機能を使う」などありますが、どれもユーザ側から目的の番組を探す方向のものばかりでした。でも、「目的の番組があるわけではないけれど、何となくいい番組を見たい」、というときもありますよね。そんなとき、テレビ側から番組を提示する方向の機能もあるといいね、ということで、この機能を開発したのです。「ザッピング」という言葉をご存知ですか?「何かいい番組ないかな」とチャンネルを次々に替えることですが、それと同じ感覚で番組を探す手段と思っていただければよいでしょう。

どのようにして、ユーザの好みを知るのでしょうか。

鈴木デジタル放送では、リモコンのボタンを押すと番組表が表示されますよね。その情報は放送局から提供されるものです。そこに含まれる、時間、タイトル、ジャンルなどの情報を使用して、ユーザの好みを分析します。例えば、月曜21時のドラマをよく見る人には、「月曜」の「21時」の「ドラマ」という情報を基に、月曜の21時に放送されるドラマを推薦するといった具合です。

ただ、放送局から得られる情報では分析に不十分な部分もあります。例えば、ドラマは国内ドラマと海外ドラマの分類しかありません。でも海外ドラマには、アメリカのドラマも韓流ドラマもありますよね。アメリカのドラマが好きな人と韓流ドラマが好きな人が同じ趣味か?と問われると多くの人が首をかしげるのではないでしょうか。このように、カテゴライズで不的確だと判断した部分は、放送局から得たデータを再分類するよう工夫しています。この例ですと、韓流ドラマを多く見る方には、韓流ドラマが多く推薦されるようになっています。

また、デジタル放送の番組情報には、「タレントのAさん、珍回答連発!」などの番組内容や出演者一覧が載っていることがありますね。ここから出演者や監督などの情報を抽出して、分析に利用しています。

図1 「Woooおすすめ番組」機能画面
「Woooおすすめ番組」機能の画面図

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ロヴィ、Rovi、Gガイド、G-GUIDE、およびGガイドロゴは、米国Rovi Corporationおよび/またはその関連会社の日本国内における商標または登録商標です。

「確実性」、「発見性」、「意外性」でおすすめ

おすすめの番組を決める基準は何ですか?

鈴木ユーザの好みを考えるにあたって、「確実性」、「発見性」、「意外性」の三つの基準があります。「確実性」は、ユーザが確実に行動するであろう領域を示します。例えば、普段からよく見ている番組などです。この領域の番組を推薦されれば、ユーザは確実に録画したり視聴したりするでしょう。次に、「発見性」。確実に見る番組だけ推薦されても面白くありませんから、好きな俳優が出演しているバラエティなど、予想の範囲内ではあるものの、ユーザが知らなかった可能性がある番組も推薦します。そして、「意外性」ですが、これは、「意外で面白い」と思ってもらえる領域を示します。いままで見ていた番組とは違う、想像もつかなかった番組を推薦します。

好みに合っていないと誰も見向きもしてくれませんが、あたりまえすぎても飽きてしまう。では、ユーザが喜ぶ推薦範囲は何だろう?ということで、この三つの基準で、推薦する番組を決めています。番組を決めるプロセスを考えるにあたっては、「タレントのAさんが出ているドラマをよく見る人にとっては、何が「確実」で何が「意外」で、何が「発見」なのか」、といった具体的なユースケースを挙げて検討していきました。

図2 ユーザの嗜好(しこう)性分析
ユーザの嗜好性分析の構造を示した図

分析にはある程度の行動履歴が必要なのですか。

鈴木一つでもユーザの好きな番組の情報があれば、すぐにおすすめ番組が表示されます。おすすめ機能を開始する際、まず好きな番組を登録するようになっているのですが、その登録内容を条件に最初の分析を行い、推薦結果を提示する仕組みです。

ユーザが初めておすすめ機能を使おうと思ったときには、すぐに使える手軽さがニーズとなると考えたため、少ない条件ですぐにおすすめ番組を表示できるようにしました。また、すぐに使えるためのもう一つの要件として、ユーザを待たせることなく推薦結果を提示できるように、通常の推薦と比べて高速に分析するアルゴリズムを採用しています。

お客さまが満足できる推薦結果をめざして

分析の精度を高めるために苦労されたことはありますか?

写真「鈴木 誠人(すずき まさと)」

鈴木分析のためにどんな情報を拾うかという選定と、その情報の重みづけの2点で苦労しました。

まず、分析に使う情報ですが、「カレーが好きな人」を例に考えてみましょう。「カレーが好きな人」が気に入りそうなメニューを推薦する場合、「カレー」というキーワードを使って探しても、「野菜カレー」、「ビーフカレー」など、あくまでカレーしかヒットしません。ところが、「カレーが好き」という情報から、「ご飯に何か掛かっている存在」が好きなのだと解釈し、それをキーワードにすると、「どんぶり物」もヒットします。このように、視聴や録画の記録からどういう組み合わせでどのような情報を拾うようにするかが、検索結果にかかわってくるため、その選定に試行錯誤しました。また、放送局から得られる情報を使っていますから、情報の抜き出しやスリム化にも苦労しましたね。

次は、その情報の重みづけについてです。先ほど、ユースケースを挙げて検討したと言いましたが、ユースケースに対して最適な推薦結果を導きだすために、情報一つ一つに「重みづけ」を加えます。重みづけのバランスによって、挙がってくるおすすめ番組が変わってきます。例えば、ある人の好みとして、「ドラマ」と「タレントのAさん」というキーワードが同じくらい出てくるとします。それぞれのキーワードの評価を同じにすれば、Aさんが出ているドラマはもちろんのこと、Aさんと全然関係ないドラマもおすすめ番組としてヒットしますし、タレントAさんが出演しているバラエティ番組やクイズ番組もヒットします。ところが、もし「出演者」は評価が1で、「ジャンル」は評価が10という重みづけがあったなら、おすすめ番組のほとんどがドラマで、タレントAさんに関する番組は、ドラマ以外ほとんど推薦されなくなります。どのような重みづけをすると、ユーザが満足いく結果を出せるのか。そのバランスを検討し、調整するのが大変でした。

ずいぶん多くのユースケースを検討されたのでしょうね。

鈴木そうですね。あるユースケースを実現するために抜き出す情報とその重みづけを検討したら、別のユースケースから導いた抜き出し情報や重みづけと整合性を取る必要がありますから、検討は1か月以上続きました。わたしとあわせて3人で取り組んでいたのですが、仮説を立てて実験してみるものの、まったく予想外の結果が出てしまい、「あーこれじゃやっぱりだめか」というようなこともよくありましたね。突拍子もない結果が出たときには「何だこれ!」ってみんな大爆笑です。結構にぎやかなメンバーだったので、「あそこだけうるさい」と言われたこともありました(笑)。

実際の画面での見せ方にもかかわったのでしょうか?

鈴木設計部署の方々と話をして、番組推薦技術をユーザにわかりやすく提示するためのアイデアを取り入れてもらうこともありました。例えば、おすすめ番組の一覧には、おすすめの度合いを星の数で示す「推薦度」の表示があります。これが最初はなかったんです。ですが、おすすめ番組をただ一覧で示しても、どの番組がどれだけおすすめなのかよくわからないね、という意見がわたしたち研究チームの中から出まして。それで、取り入れてもらうことが決まったものなんです。

「見たいコンテンツを、見たいときに、見たいように見る」

「おすすめ番組」機能のほかに、日立のテレビの特長を教えてください。

鈴木「見たいコンテンツを、見たいときに、見たいように見る」、という言葉があります。これは、日立が考える、テレビのあるべき姿に関するスローガンです。この言葉が、いまの日立のテレビにピッタリな表現だと思っています。

例えば、家で録画したものを、見たいときに見られる機能として、「iVDR-S」と、「DLNA」に準拠したネットワークに対応しています。「iVDR-S」はカセット型のHDDです。番組を「iVDR-S」に直接録画することもできますし、内蔵HDDに録画した番組をダビングすることもできます。この「iVDR-S」に録画したデータを、ビデオテープやDVDなどと同じような感覚でほかの部屋へ持って行き、テレビや対応機器で再生することができるのです。一方、「DLNA」に準拠したネットワークを経由して番組を再生することもできます。自分の見たいように、コンテンツを見るシチュエーションを選べるんですね。

また、オートチャプターという、番組の見どころにチャプターを自動で設定する機能があります。例えば、歌番組で自分が見たい歌の先頭までジャンプして表示するということができるんですね。このように、「見たいコンテンツを、見たいときに、見たいように見る」というテーマに沿って、いろいろな機能を実現しているのが、日立のテレビだと思います。

図3 iVDR-S
iVDR‐Sの紹介

図4 DLNA対応ネットワーク
DLNAの紹介

画像を拡大する

図5 オートチャプター機能
オートチャプター機能の紹介

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「iVDR」は、「iVDR技術規格」に準拠することを表す商標です。(Information Versatile Device for Removable usage)「iVDR-S」はコンテンツ保護方式である「SAFIA」を搭載した「iVDR-Secure」のことです。
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DLNAは、Digital Living Network Allianceの商標です。

一ユーザとして、「うれしい」を追及する

テレビの今後について、どのような夢をお持ちですか。

写真「鈴木 誠人(すずき まさと)」

鈴木実は、わたしは入社当初から「見たいコンテンツを、見たいときに、見たいように見る」というスローガンと同じことを実現したいと思っていました。例えば、録画したテレビ番組を携帯電話で持ち出し、通勤時間中に見る。途中までしか見られなかったら、家に帰ってその続きをテレビで見る、といったことです。当時は、携帯電話で動画を見るという環境自体が整っていませんでしたが、環境が整ったいまでも、利用している人は一部です。昨今、テレビ離れが進んでいるといわれますが、自分の行動に従って、シームレスに動画を携帯できる技術が充実すれば、楽しいテレビライフが実現すると思うのです。

そして、ユーザにとって「わかりやすい」操作性も重要です。わたしは技術を理解しているので簡単に利用できますが、一般の人が使いづらいと感じる機能もまだまだあります。「わかりやすく、いつでもどこでも見られる」がわたしのめざすところです。

ほかにも、お持ちの夢はありますか。

鈴木テレビは家族みんなで使うものなので、家族それぞれに合わせた情報をテレビ側から提示できる、「パーソナライズ」を実現できるとよいですね。例えば、子どもが電源を入れたらアニメ、大人だとニュースが表示されるという具合です。番組推薦技術についてもパーソナライズを実現できればと考えています。実際におすすめの番組をユーザ個々人に合わせて別々に提示したいという話は研究員の中で出ているのですが、「それぞれにピッタリのものを自動的に出す」までは実現できていません。これからの課題の一つだと思っています。

ユーザの「うれしい」を追及しているのですね。

鈴木はい。担当しているのがコンシューマー向け製品ということもあり、わたしは作り手である一方、ユーザでもあります。ですから、両方の視点を持って開発に取り組んでいます。入社したころから、「自分が買いたいものを作りなさい」と、上司に言われてきました。その教えに従って取り組んでいるという感じです。

特記事項

  • 2012年3月27日 公開
  • 所属、役職は公開当時のものです。

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