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省エネ志向が広がり、家庭用としてもLED照明が普及してきました。少ない電力で明るく光るイメージのLEDですが、照明器具によっては部屋の隅のほうが暗く感じられることも。原因は、直進して広がらない、LEDの光の性質にあります。

日立のLEDシーリングライトは、明るさと省エネを両立。レンズで光を広げるから、部屋中明るく光ります。今回は、進化を続けるLEDシーリングライトの開発にスポットライトを当てます。

(2014年9月10日 公開)

省エネ意識の高まりとLED照明

以前に比べて、身近なところでもLED照明を見かけるようになりました。

写真「村田 誠治(むらた せいじ)」

村田もともと省エネになるということで注目されてはいましたが、普及の一番の理由はLEDの価格が下がったことだと思います。LEDが照明として市場に登場した当初は、省エネだからといって、白熱電球や蛍光灯から交換するには値段が高すぎるという印象が否めませんでした。それが、少しずつ世に普及するにつれて価格が下がってきて、いまでは、みなさんの身近なところでも使われる光源になってきました。

別井東日本大震災以降、みなさんの省エネに対する意識が高まったことも大きな理由ですね。LED照明は省エネであるという考え方が広がり、置き換えが進んでいます。

LEDはなぜ省エネなのでしょうか。

別井簡単に言うと、白熱電球や蛍光灯よりもLEDの方が電気エネルギーが光になりやすいということです。

例えば白熱電球の高温のフィラメントからは、赤外線を含むさまざまな波長の電磁波が出てしまい、光にならない分のエネルギーがロスになってしまいます。その点、LEDはバンドギャップと呼ばれるエネルギーの幅がちょうど光の波長に合っているので、電気エネルギーのほとんどが光になります。エネルギーの光への変換効率が高い、つまり省エネなのです。

村田照明器具としてどのくらい省エネか比較する一つの指標として、定格消費電力が挙げられます。同じ適用畳数の製品なら、消費電力が少ない方が省エネだと言えます。日立の製品で言えば、適用畳数が「〜14畳」の2013年度のLEDシーリングライトの消費電力は、省エネタイプの蛍光灯器具の約半分です。また、LEDシーリングライトは毎年進化しているので、前年度のLED製品と比較しても、約18%の削減を実現しました。

図1 消費電力の比較(適用畳数「〜14畳」用の場合)
消費電力を比較したグラフ(適用畳数「〜14畳」用の場合)

日立独自のレンズ機能つき「ドーム型LEDユニット」とは

従来の光源からLEDにそのまま置き換えられるものなのですか。

村田いえ、LEDと従来の光源では光の指向性が異なるため、そのまま置き換えると「いままでと光り方が違う」ということになってしまいます。

例えば、従来の光源の一つである蛍光灯は、管の形をしていて筒の表面が光っています。そのため、光はさまざまな方向へ広がっていきます。一方LEDは、発光している面積が小さく、光の進む方向が前方に集中しています。光の指向性が異なるとはこういうことです。

ですから、蛍光灯から特別な工夫をせずにLED照明に換えると、明るさに違和感を覚えるはずです。LEDの性質上、照明器具の真下ばかりがまぶしいくらいに明るく、部屋の壁側にはあまり光が届かないといった問題が生じるためです。これがLED照明の課題でした。

この課題を解決したのが、日立独自のレンズ機能つき「ドーム型LEDユニット」です。

別井家庭用LEDシーリングライトの中をご覧になったことはありますか?

写真1 レンズ機能つき「ドーム型LEDユニット」
レンズ機能つき「ドーム型LEDユニット」の写真

LEDシーリングライトの内部には、14畳用だと320個くらいのLEDが並んでいます。LEDは直接手で触れるとやけどや感電で危ないので、一つずつドーム型のカバーで覆われています。形としては、ちょうど「たこ焼き器」を透明にしたような感じですね。

この、LEDにカバーを被せたもの全体を「LEDユニット」と呼ぶのですが、日立は、このカバーの一つ一つのドーム部分にレンズ機能をつけました。

レンズについて詳しく教えてください。

村田我々が開発したレンズは、横方向75度に強い光を飛ばします。このレンズをドーム部分に採用することで、正面に進む光よりも、横方向に進む光を強くしているのです。

別井光を広げるために、カバーに工夫を施している製品はほかにもあります。一般的には、この部分を「ざらざら」のすりガラス状にして、光を柔らかくするという方法が用いられます。そうすると光が「ほわっと」広がるのです。これで、光がまっすぐにしか進まないという課題は一見解決したように思えます。ですが、この光の広げ方はあまり効率的とは言えません。

まず、「ほわっと」した光の広がり方は、均等すぎて横方向の光の強さが足りません。また、一部の光はざらざら部分の細かい凹凸に反射して、LED側に戻ってしまいます。これだと、せっかくの光が吸収されて無駄になってしまいます。そのため、我々は「つやつや」した平滑面のレンズにこだわって開発しました。

図2 LEDユニットのカバーの種類と光の広がり方
LEDユニットのカバーの種類と光の広がり方を示した図

経験値ゼロからのスタート

平滑面のレンズを作るのは難しいのでしょうか。

別井そうですね。平滑面のレンズは、光を曲げることは得意ですが、曲げた光が部分的に強くなりすぎることがあります。すると、照明器具の外側の覆いであるセードに、光の筋や模様が出てしまうのです。そうならないためには、レンズを徹底的に設計する必要がありました。

村田レンズは、シミュレーションで形状を決め、試作品を作ってテストする、という流れで検証しますが、なかなか想定どおりの結果は得られません。

別井さらにややこしいことに、シミュレーションが正しくても、試作品と製品で作り方が異なるせいで思ったように光らない、というケースもあるんです。試作品はプラスチックを削って作りますが、製品は大量生産するため、溶かしたプラスチックを金型に流し込んで作ります。このようにレンズの作り方が異なるため、試作品「だから」想定どおりに光らない、という可能性も考えなければいけません。

シミュレーションが間違っているせいなのか、それとも試作品の作り方のせいなのか…。この見極めが非常に難しい。試作品でこういう風に形がずれていると仮定すると、光学的にこういう性能になるのではないか、ということをさかのぼってシミュレーションでチェックすることもありました。

試行錯誤の連続なのですね…。

写真「別井 圭一(べつい けいいち)」

別井日立がLED照明に参入したのは2011年からですし、私自身、2012年からLED照明を手がけるようになったので、まったく経験がない状態からのスタートでした。

開発を始めて気づいたのですが、光学の分野でも、照明って独特の難しさがあるんです。
LED照明に携わる前、わたしはプラズマディスプレイ、村田はプロジェクターや液晶テレビのバックライトを研究していました。これらの開発は、目標を定量的に定めることができました。例えば、液晶テレビのバックライトなら、均一に光らせることを数値目標に掲げれば、厳密な設計ができますし、効果を明確に判定できます。

しかし、照明は「ぼやん」とした世界なのです。目標を数値で定めて、それを達成する照明器具を作ったとします。「これで大丈夫だ!」と思って、開発を依頼してこられた事業部の方に確認すると、「もう少しふわっと…」「この部分もきれいに光らせられませんか」などとコメントをいただくんです。「ふわっと」「きれい」って、何だろうってね。定量的な目標を設定できないんですよ。難しいけれどおもしろいですね。

レンズ配置を最適化し、さらなる高効率を実現

レンズの配置にも工夫があるそうですね。

図3 LEDの光り方の違い
LEDの光り方の違いを示した図

村田LEDシーリングライトは、器具の中央部と外周部分にはLEDがついていませんが、我々はLEDのない部分もきちんと光らせたいと考えました。そこで、より効果的に光らせるためにレンズを2種類用意して、それぞれの特性を生かせるよう配置を工夫しています。

2種類のレンズというのは、照明器具の中央部を明るくするためのレンズと、周囲の方向を明るくするためのレンズです。これらを最適な配置にすることで、セード全体が明るく光るLEDシーリングライトを実現できました。

LEDの配置はすべて同じではありません。LED照明器具は、「何畳用」という製品のラインナップに応じて、使用されるLEDの数が変わってきます。数が変わってもセード全体がきれいに光るよう、それぞれのサイズで最適な配置を追求しました。

2013年度の製品は「省エネ大賞」を受賞されたそうですね。

村田はい。研究の成果を認めていただいたと感じ、大変うれしく思っています。2013年度のLEDシーリングライトは、適用畳数の明るさ基準範囲で最大限の明るさ*と、固有エネルギー消費効率102.4〜104.8 lm/W(ルーメン/ワット)の高い省エネ性能を実現しました。光学的にいかに損失を減らすかにこだわり、明るさと省エネを両立できたことが、受賞に至った一つのポイントだと思っています。

別井製品の売れ行きも好調だと聞いています。市場参入からわずか3年ということを考えると、後発にもかかわらず存在感を示すことができていると感じます。家電量販店の照明器具売り場でも、目立つところに置いていただけるようになりました。LED照明の購入を検討されるお客様が、売り場で光り方を確認して日立製を選んでくださることが、なによりもうれしいですね。

*
一般社団法人日本照明工業会の定める「住宅カタログにおける適用畳数表示基準」(ガイド121:2011)による。

LED照明の今後の可能性

今後、ますますLED照明が広がっていきそうですね。

写真「村田 誠治(むらた せいじ)」

村田日本国内だけでなく海外にもLEDを使った省エネ性の高い照明が広がっていくと思います。大きな話になりますが、全世界のみなさんに明かりにまつわるエコマインドを持っていただけたら幸いです。

LED自体の性能も向上していますし、活用する我々研究者・技術者もよりよい照明環境を世界中のみなさんに提供できるよう、日々研究に励んでいます。世の中により価値のあるものを提供していくことを常に心がけながら、エネルギー問題の解決の一端を担えるような仕事ができたらと考えています。

写真「別井 圭一(べつい けいいち)」

別井LED照明は、いまはまだ白熱電球や蛍光灯、ハロゲン電球などの代替照明としての役割がメインです。そのため、既存の照明器具の光り方をLEDで再現しているケースが多いと言えます。

ですがわたしは、LEDならではの照明器具の形があってもいいのではないかと感じています。既存の照明は、一つの管や球であるために、利用範囲が制限されることがありました。しかし、LEDは小さくてどこでも光らせることができます。この特長を生かした、「LEDだからこそ実現できる照明器具」があってもおもしろいのではないでしょうか。

最近は、導光板を使った変わった形のパネルや、デザイン性の高い車のウィンカーなどにもLEDが用いられるようになってきています。「電球形」「ハロゲン形」といった従来の照明器具名で呼べないような、LED独特の照明器具ができたら…。LED照明にはまだまだ多くの可能性があると思っています。

特記事項

  • 2014年9月10日 公開
  • 所属、役職は公開当時のものです。
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