ページの本文へ

Hitachi

企業情報研究開発

料金プランや機種を選んで契約を申し込めば、その場で携帯電話が手に入る。そんな利用者の「当たり前」を実現する通信事業者の業務を支えているのが「ビジネスサポートシステム」です。世の中のトレンドに合わせてどんどん変化する商品に対応するため、システム開発はとても複雑に…。商品をいち早く市場に投入できるよう、複雑化するシステムをより短期間で開発できないか。その思いに、日立のソリューションがお応えします。

(2016年6月1日 公開)

トレンドに合った商品をいち早く提供するために

ビジネスサポートシステム(BSS:Business Support System)とはどのようなものですか。

宮田通信サービスを提供する事業者が、サービスの申し込みや料金請求などの業務に使用しているシステム全体のことを言います。
みなさん、携帯電話を購入するとき、料金プランや機種を選んで、通信事業者に契約を申し込みますよね。そうすると、申し込んだ当日に、ちゃんと使えるように設定された携帯電話を渡してもらえる。実はその裏で、窓口で申し込んだ内容に従って、いろんな設定や手続きが行われています。携帯電話に電話番号を割り当てて、メールアドレスを使えるようにして…といった具合に。そのときに使用されている業務システムです。
申し込みのほかにも、通話時間と料金プランを突き合わせて毎月請求書を作成したり、料金を支払わなかった契約者に対して通話できないように管理したり、といった業務にも使用されています。

BSSの構築を容易にしようと思われたきっかけはなんでしょうか。

宮田通信事業は、サービスの変化がものすごく激しい業界なんです。携帯電話のサービスだけを見ても、3か月に1回くらいのペースでどんどん新しい料金プランが出てきたり、機種が増えたりしていますよね。
わたし自身、SEとしてBSSの開発に携わってきましたが、その開発期間もだんだんと短くなっていて…。いかに早く世の中のトレンドに追従した料金プランや機種を提供できるかが、通信事業者のビジネスとしての勝負所になってきている。ビジネスチャンスを逃さないために、事業者が「こういう商品プランを作りたい」と考えたらすぐに対応できるBSSが求められている、と気づきました。
でも、これまでのBSSの開発は事業者ごとに一からシステムを設計していたので、短期間で対応するのは難しかった。そこで、そもそもの開発方法を変えよう!と、より効率的にBSSを構築できる「ビジネスサポートシステム構築支援ソリューション」を開発しました。

松浦今回のソリューションでは、「こういう商品プランを作りたい」と考えて商品構成を設計すれば、サービスの申し込みや料金請求など、BSSで実行する処理まで設計できる仕組みを提供しています。実際に今回のソリューションを適用したことで、これまでの方法では間に合わない…と思われたシステムを、期日どおりお客様に納入することができました。

業務のモデル化で短期開発を実現

具体的にはどのような仕組みなのでしょうか。

松浦このソリューションは、「イベント駆動型分散処理基盤」と「モデル駆動型ビジネスサポートシステム基盤」という、二つの実行基盤で構成されています。

図1 ビジネスサポートシステム構築支援ソリューションの仕組み
ビジネスサポートシステム構築支援ソリューションの仕組みを示した図

まず、「イベント駆動型分散処理基盤」。通信事業では、サービスの申し込みや、使用料金を計算するための通信ログを収集するといった、業務イベントが発生します。そういった多種多様な業務イベントを順序よく処理するための基盤です。
申し込みや料金計算に必要なログの収集などのイベントでは、毎日大量のデータが送られてきます。そのため、分散サーバを使用することで、大量のデータでも滞りなく処理できるようになっています。

そして、イベント駆動型分散処理基盤の上にあるのが、わたしたちが開発を担当した「モデル駆動型ビジネスサポートシステム基盤」。申し込みや料金請求などの業務をあらかじめ「モデル」として定義しておいて、商品を企画したときに、必要な処理を簡単にシステムに落とし込めるようにするための基盤です。この基盤があることで、BSSをより短期間で開発できるようになっています。

新しい商品を企画したら、どのような契約をすればいいか、申し込みの手順はどうなるか…など、必要な業務と手続きの順序を設計しなければいけないんです。でも、毎回一から設計するのは大変です。
そこで、利用者が申し込む「商品」を起点にして、申し込みから開通までに必要な業務のフローを分析し、商品構造と申し込みフローの関係をモデルとして整理しました。モデル化したフローを基盤に取り込んでおくことで、新たに商品を企画したときに、「じゃあこういう業務フローになるね」と、基盤がフローを自動でひも付けてくれる。SEは自動で設計されたフローを使って、必要な処理の組み合わせを変更したり、商品独自の処理を検討したりする。すると業務フローができあがります。
できた業務フローを、イベント駆動型分散処理基盤で実行できるようにマッピングすれば、BSSの構築が完了する、という仕組みです。

図2 商品設計から機能設計までの流れ
商品設計から機能設計までの流れを示した図

3回聞いてノウハウを引き出せ

完成までには苦労されたことも多かったのでは。

写真「宮田 辰彦(みやた たつひこ)」

宮田フローの設計では、利用者が選んだプランやオプションに合わせて処理する順番を制御することが、とても重要です。例えば、インターネットに接続できない状態でメールアドレスだけが登録されている…なんてことになると、システムとして矛盾した状態になります。そういった順番をどううまく制御するか、というのが難しかったですね。

一つずつ順番に処理するように並べれば楽なのですが、そうすると、処理に時間が掛かり過ぎてしまう。同時に処理すれば1週間で終わる業務が1か月掛かる、ということにもなりかねません。通信事業者が要求するサービスレベルを達成するためには時間を短縮する必要がある。同時にできる処理は並行で処理しつつ、それぞれのオプションの設定が矛盾しないように、というところに苦労しました。

松浦このとき重要になってくるのが商品設計のポリシー、つまり商品をどうやって設計させるかというルール作りです。たとえば、携帯電話を契約するときのプランにしても、新たなオプション商品として位置づけるのか、それとも、既存の商品の選択項目として位置づけるのか。位置づけによってフローがまったく変わってきます。SEとの議論やわたし自身のこれまでの知見を生かしつついろんなパターンを試行錯誤しまして、最後は「これはもうこういう風に定義しちゃいましょう」という感じで決めていきました。

宮田何でも自由に作れるシステムって、結局、何も作れないシステムなんですよ。自由度を上げれば上げるほど、一から作る場合と同じになってしまう。今回は「BSSの開発効率を上げる」という目的がありましたので、システムが自動で処理できるようにあえて制約を持たせたと言いますか、必要なルールを取捨選択していきました。

開発に当たって特にこだわった点は。

写真「松浦 芳樹(まつうら よしき)」

松浦SEが持っているノウハウをいかに引き出すか、という点でしょうか。
今回のモデル化は、もともとSEの頭の中にあった概念を目に見える形にして、システムに反映するというもの。とはいえ、実際にノウハウをモデル化できるかどうかは、検証してみないとわからなかったんです。SEは「できるんじゃない?」と言うんですけど、それはあくまでも感覚値。きちんと検証するために、SEにヒアリングするときには「必ず3回聞こう」というルールを自分の中で決めました。SEが何となく「こうかな…」と言ったことに対して、「どうしてそうなんですかね」「こういう場合はどうですか」と質問して、掘り下げていくことを徹底しました。
わたしはBSSについての知見がない状態から研究に携わったので、逆にそれが、何の偏見もなく、「何で」「何で」と繰り返し聞けてよかったのかな、と思います。

時代のニーズに即した研究開発を

今後の展望を教えてください。

松浦今回開発したイベント駆動型分散処理基盤を使えば、大量のデータも分散して処理できます。大量のデータを処理する必要がある分野で、ぜひ活用したいと思っています。

宮田いまはIoT(Internet of Things)分野で活用できるのではないか、と考えています。IoTでは、あらゆる場所にあるセンサーから収集したデータを使って、統計分析したり、異常を検知したり…っていうことをやろうとしているんですね。例えば、いろいろな電力機器から上がってくる情報を分析したり、工場にある各センサーのデータから異常を検知したり。大量に上がってきたデータを逐次分析する必要があるので、処理としては今回開発した基盤とすごく似ている。どのようにすればIoT分野で活用できるか、今後研究していきたいと考えています。

松浦モデル化の部分もIoT分野で応用できるのではないかと思いますね。IoTのデータが実際どのように分析されているのか、まずはデータ分析の流れの大枠を目に見える形にする。そこから、「こういうモデルに設定しておけば、いろんな分析に応用できる」っていうアーキテクチャを決めようと、研究に取り組んでいます。

お二人の研究で、活用の場がますます広がりそうですね。

宮田企業の研究所というのは、マーケットに受け入れられる研究をしていく必要があると考えています。わたしは単純に「研究がしたい」と思って入社したのですが、SEとしてお客様と直接対話する経験を重ねる中で、お客様のニーズをきちんと拾って、ニーズに合ったものを研究していかなければ、と思うようになりました。すごい技術ができてから使い方を考えるのではなくて、すごい技術ができそうだと仮説ができた時点でお客様にニーズを伺う、そういうスタイルで研究しています。

松浦わたしも、いろんなデータを実際のサービスで活用するにはどうしたらいいかを考えながら、今後も研究していきたいと思っています。

*
LTEは、欧州電気通信標準協会(ETSI)の登録商標です。
*
WiMAXは、WiMAX Forumの商標または登録商標です。
  • ページの先頭へ

類似キーワードコンテンツ

  • ページの先頭へ