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  • 写真「平山 淳一(ひらやま じゅんいち)」
    平山 淳一(ひらやま じゅんいち)
    研究員
  • 写真「秋富 知明(あきとみ ともあき)」
    秋富 知明(あきとみ ともあき)
    研究員

近年、ビジネスの課題解決に人工知能への期待が高まっています。日立は、需要変動や現場の工夫を理解して業務指示を出す人工知能を開発。物流システムに組み込むことで、現場での作業時間8%削減という効果を実証しました。人と協力することでより良い改善の工夫ができるというHitachi AI Technology/Hについて、開発にまつわるエピソードや苦労したところなど、お話を伺いました。

(2016年4月28日 公開)

協力する人と人工知能

最近、人工知能が注目されていますね。Hitachi AI Technology/Hとはどういうものなのでしょうか。

平山業務のデータや過去の実績データから需要変動や現場の工夫を理解して、現場に最適な業務指示を出せるプログラムです。今回、Hitachi AI Technology/Hを物流システムに組み込んで、現場の業務改善に効果があることを実証できました。

秋富これまでの業務システムは、一度作ってしまうと簡単には変更を加えられませんでした。現場の作業者が業務改善のために行っている工夫を業務システムに反映しようとしても、システムエンジニアなど人が仲介する必要があって、実現が困難でした。

しかし、Hitachi AI Technology/Hを組み込むことで、業務システム自体には変更を加えることなく、業務システムから改善の工夫が加えられた業務指示を現場に出せるようになります。現場では、Hitachi AI Technology/Hが出した業務指示に従ったり、作業者が独自の工夫を加えたりしながら作業します。すると、作業の結果が実績データとして蓄積されます。Hitachi AI Technology/Hは実績データを基に、新たな工夫が加えられた業務指示を出せるようになります。つまり、人と協力することでHitachi AI Technology/Hは賢くなるんです。

図1 Hitachi AI Technology/Hによる業務改善のサイクル
業務システムに組み込んだHitachi AI Technology/Hが業務を改善するサイクル

人と協力して賢くなる…おもしろいですね。

秋富そうですね。世の中にもおもしろい例がありますよ。チェスは、人より機械の方が強いことがわかっているのですが、いちばん強いのは、機械と人がコラボしたときなんです。機械と人がペアになって戦う大会もあって。つまり、人工知能に全部任せるのではなく、人と一緒に作業した方がより力を発揮できる、ということが共通認識になってきています。

今回の開発のきっかけは何だったのでしょうか。

秋富わたしはもともと、データを解析して業務改善に生かそうという研究をしていました。「ビジネス顕微鏡」と呼ばれていたものですが、それが発端になっています。

ビジネス顕微鏡の研究では、名札型のセンサーを人に装着して行動に関するいろいろなデータを測定していました。業務中に誰と会っているか、話していてうなずいている人が誰かなどです。そして、測定したデータを分析することで、現場の課題解決に利用していました。ですが、測定したデータを業種ごとにゼロから分析する必要があり、コストに合わないのが問題になっていました。そこで、業種に縛られない、いろいろな業種に対応できる汎用的なものを作りたい、ということが一つのきっかけになりました。

平山一方、物流の現場でも、作業の生産性を上げて人件費の削減につなげたい、という課題が挙がっていました。現場では、改善のための話し合いをしていろいろ試してはいたのですが、なかなかうまくいかなくて。過去の実績データをうまく活用したいというニーズと、Hitachi AI Technology/Hの開発のタイミングが合って、今回、物流システムを使って現場実証を行うことになりました。

Hitachi AI Technology/Hの研究に携わることになったとき、どのように感じましたか。

平山実は、人工知能って本当にできるのか少し半信半疑でした。人工知能の研究は世の中に昔からありますが、企業として「人工知能」って冠を乗せて実用化できるのかな、と。でもおもしろそうだな、とも思いました。

秋富わたしは、大変なところに入ってしまったな、と思いました。注目されている研究なので成果を上げなくては、と。チャレンジングなテーマだったので、周りの視線を感じましたね(笑)。

現場の作業時間8%短縮を実証

Hitachi AI Technology/Hの仕組みについて教えてください。

図2 Hitachi AI Technology/Hの仕組み
Hitachi AI Technology/Hの仕組み(3段階の処理)

平山Hitachi AI Technology/Hが入力データを基に現場に業務指示を出すまでには、処理が3段階あります。

まず、業務システムに入ってきたデータがどんなタイプのデータかを、自動的にある程度判断します(データの自動解釈)。

次に、データ同士の関係性を見るためにデータとデータを何とおりにも組み合わせて項目を生成します(特徴量の生成)。

そのあと、作業の改善につながる特徴量を絞り込み、仮定を立てます(方程式の生成)。

業務システムは、Hitachi AI Technology/Hが生成した方程式に従って、改善の工夫が加えられた業務指示を現場に出します。

実際にどのような業務でどのような成果があったのでしょうか。

秋富検証を行ったのは、いわゆる「ピッキング」と呼ばれる、物流倉庫での集品作業の現場です。注文された商品を発送するために倉庫の棚から商品を取り出す作業ですね。商品の注文が入ると物流システムが指示書を作成、作業者は指示書のリストに従って集品作業を行います。

図3 倉庫の混雑状況の違い
倉庫の混雑状況の違い(Hitachi AI Technology/Hを搭載した場合と搭載しない場合)

しかし、倉庫内では複数人が集品作業をしているため、特定の棚の商品に注文が偏った場合、倉庫の一部に作業者が集中し混雑することで生産性が低下してしまうという課題がありました。

この物流システムにHitachi AI Technology/Hを搭載したところ、指示書の順番を並び替えることで、倉庫内の混雑が抑えられて生産性の向上につながると、Hitachi AI Technology/Hが仮説を立てました。

仮説に従って物流システムが指示書の順番を並び替えたところ、作業者は普段どおり指示書に従って集品作業を実施しただけで、集品作業の作業時間が8%短縮されるという効果につながったのです。

汎用的に使えるものをめざして

今回の開発で苦労した点はありますか。

写真「平山 淳一(ひらやま じゅんいち)」

平山いちばん苦労したのは、2段階目の「特徴量の生成」です。この部分には、どういうルールで特徴量を生成するかを埋め込んでいるのですが、そのルールを決めるのに苦労しました。最初の発想は、考えられる限りデータを組み合わせて特徴量を生成する、というものでした。ですが、考えられる組み合わせをひたすら埋め込んでいったので、演算子がたくさんつながった特徴量が出てきてしまいました。特徴量としてはいいのかもしれないけど、何がしたいのか人が見てわからないものになってしまって。それを読み解くための研究者同士の打ち合わせが必要になってしまい、これは違うね、本末転倒だねということがありました。

その後、秋富さんが中心になって、試行錯誤の結果さまざまな業種に使える汎用的な特徴量に絞られていって、いまの形に至りました。

秋富汎用的な特徴量だけに絞り込むために、特定の業種、例えば物流に使えそうだな、というのはほとんど考えないようにして、こういう現象が抜き出せるといいな、と大本から考えるようにしていました。その考え方って、研究者の考え方と逆行しますけどね。研究者は、どんどん深く掘り下げて考えることが多いかと思いますが、いろいろな業種で使える現象を抜き出すためにどうすればよいかを、なるべく浅く考えるように意識しました。

特徴量はデータ同士の組み合わせなので、膨大になってしまいそうですが。

平山最初に「データの自動解釈」の処理をすることで、効率よく特徴量を生成できるような研究を進めています。例えば9けたの数字「123456789」が、数量を表しているのかIDを表しているかは、業務システムには解釈できません。Hitachi AI Technology/Hでは、データの分布や表記のゆれなど20個くらいの属性を見て、その数字が数量なのかIDなのかを解釈しています。このデータの自動解釈によって、無駄な演算をすることなく必要な特徴量を生成できるようになります。

業務システムに入ってきたデータをここまで自動解釈できるのは、いままでありそうでなかった新しいことですね。

これからのHitachi AI Technology/H

展示会などで非常に多くのお客さまに注目されているようですね。

秋富社外のお客さまに研究内容を見ていただく展示会のInternet of Things(IoT)部門で、Hitachi AI Technology/Hがお客さまからいちばん高い評価をいただきました。ビジネス上の課題解決を自動化することは、どこの会社にとっても響く内容なのだと思いました。

平山展示会では、お客さまから「いま、こんな課題があるんだよね」「こんなことがしたいけどできるかな」と多くの相談をいただきました。多くの方がHitachi AI Technology/Hを必要としてくれていると実感しましたね。

Hitachi AI Technology/Hはどのように進化していくのでしょうか。

写真「秋富 知明(あきとみ ともあき)」

秋富いまはすごくシンプルなロジックで、データの自動解釈から方程式の生成までができるようになっています。今後はもっと複雑な要因を見つけられるよう、Hitachi AI Technology/Hをどんどん進化させていこうとしています。

そのためには、特徴量の作り方がミソになってきます。特徴量をもっと汎用的にして、どんな現象が裏にあっても方程式を生成できるHitachi AI Technology/Hを作りたいですね。

平山わたしは、Hitachi AI Technology/Hをいろいろな業種に適用していければ、と思います。今回、物流で成果が出たので、流通やプラントなどほかの業種でも実証結果が出ることを社内外にどんどんアピールしていきたいです。

研究者としての今後の目標を教えてください。

秋富もともと日立に入社したのが、人の行動を解明したいという動機だったんです。いまは、業務として人工知能を研究していますが、最終的には、人工知能を使って人の行動をもっと解明したい、という純粋な研究者としての興味があります。また、人がもっと働きやすくなるとか、人生が楽しくなるとかそのようなことに、人工知能が使われるようになればと思います。

平山わたしは最新の技術を勉強するのが好きなので、最新の技術を追いかけたいと思います。

あと、人工知能をビジネスとしても成功させたいですね。日立が、人工知能というふわふわした華のあるものもやっていることを、社外の人に知ってもらいたいです。「日立っておもしろいことやっているな」と思ってもらえるとうれしいです。

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