
柳田 信義 (やなぎだ のぶよし)
日立製作所 日立研究所 〔1995年入社〕
専門分野:計算固体力学
配管の溶接部は、応力腐食割れの要因の一つである引張残留応力が存在しており、改善が望まれます。溶接された配管内面の引張残留応力を、配管の内外面に温度差を与えて圧縮残留応力に改善する技術が IHSI です。数値シミュレーションにより残留応力を精度良く解析する技術を開発して、IHSI の改良に貢献しました。

溶接中の局部的な加熱による温度分布(上)
溶接後の引張残留応力分布(下)
A1: 溶接では、接合する部分のみが局部的に加熱されます。加熱された部位の膨張が周囲の材料によって拘束され、物体内に「熱応力」が生じます。この熱応力により「圧縮の塑性ひずみ」が発生すると、これが原因となって溶接後に引張残留応力が発生します。
残留応力は、実際の構造物を直接測定する実験的な方法、および数値シミュレーションによる解析的な方法により、求めることができます。

管板厚内応力分布の変化
A2: IHSI は、すでに運転を開始している原子力発電所の配管溶接部に適用されている対策です。 配管内に水を流して冷却しながら同時に外面から高周波誘導加熱を行って管板厚内で温度差を生じさせ、これによる熱応力によって、加熱部の内面に圧縮残留応力を付与する方法です。
IHSI 施工中は、配管内面には引張の熱応力が生じ、溶接により発生した「圧縮の塑性ひずみ」が「引張の塑性ひずみ」に変わります。 引張の塑性ひずみにより、施工後には圧縮残留応力が付与されます。

A3: 溶接中の温度分布を求める温度解析、応力分布を求める熱弾塑性解析、および高周波誘導加熱による発熱量を求める電磁場解析を行っています。 原子力発電所には、さまざまな寸法・形状の配管溶接部があります。
IHSI の開発では、多くの数値シミュレーションにより条件を変えたときの応力評価が容易にできることから、時間と経費を節約しています。 開発を加速する上で数値シミュレーションは重要な技術となっています。
最近話題の技術について、研究者が詳しく語ります。