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企業情報研究開発

第2回CSI Innovation Talk「FUTURE TRUST」開催

未来の信頼のかたちとは? 新しい信頼のかたちがもたらす社会イノベーションのチャンス

2019年3月5日

FUTURE TRUST

Local TrustからDistributed Trustの時代へ

テクノロジーの発達とともに、社会は"中央集約的な構造"から"分散的な構造"へ変わりつつあり、それと同時に信頼のかたちも変わるのではないか。ビジョンデザインプロジェクト「TRUST / 2030」では、グローバルデザインファームMethodとともに、未来の信頼のかたちの探索を通じて社会の変化や人々の価値観の変化を探ってきました。今回は「FUTURE TRUST」と題し、外部からゲストをお招きし、オープンイベントを実施しました。

まず来場者を迎えたのは「ミニエキシビジョン」。
ここではプロジェクトの展示や「新しい信頼のかたち」にまつわる複数のキークエスチョンを用意し、来場者が投票。他の来場者の回答を見ながらも、自身の意見をどうするか来場者が悩む姿が見られました。

トークセッションでは冒頭、Method Associate DirectorのJoshua Leigh氏が人間社会における信頼の変化の歴史とTRUST / 2030についてトークを展開しました。

小規模で集団生活を送っていた人類は「個人と個人」による小さな社会を形成していました。そこでは「誰かの信頼の損失は相手である個人の責任」だとされますが、都市化が進み、政府・銀行・組合等々の組織を介した取引が増えると「個人と大勢」が信頼関係で結ばれるようになります。

さらに現在、インターネットの誕生・普及により「大勢と大勢」が結ばれる時代が到来しました。そうして「Local Trust」(ローカルにおける信頼)から「Distributed Trust」(拡散社会における信頼)へと変化する過程に触れながらLeigh氏は「これからの社会の変化が、人々の生活・価値観をどのように変えるのか」という命題に対して「TRUST / 2030」が掲げる3つのビジョン(方向性)を共有。「ここから生まれる新しい信頼のかたちを思索していきたい」と語りかけました。

技術・社会・生活の領域にまつわる「新しい信頼のかたち」

続いて、ゲスト3名から「信頼の変化・未来の信頼」に関する問題提起をいただきました。

技術の視座から話題提供いただいたのは、株式会社インフォバーン 代表取締役 CVOの小林弘人氏。
小林氏は、"信頼の左右非対称性"として「多くの信頼は一方通行であり、非対称」と指摘、アルゴリズムを含めた透明性の担保がなければ信頼されないと続けます。さらに、「信頼した方が社会コストが下がる」と述べ、"信頼できない"なかで仕組みの構築や維持にかかるコストの増大を下げるための「ゼロ知識証明」などを用いた新たなテクノロジーの波が生まれているとしました。

最後に、評論家 ジェフ・ジャービス氏が提唱する「Public Parts」(自分のプライバシーをオープン化し、公益にかなえる観点)を引き合いに出しながら、「パブリックとプライベートは対立するものではない。そのバランスはスライダーの目盛りであり、状況にあわせ調整できる必要性がある」と述べました。

続いて社会の領域からは、Facebook Japan Directorの馬渕邦美氏が登壇しました。
馬渕氏は「世界レベルの情報産業革命が巻き起こるなか、信頼にも直結する不安要因が頻出している」としながら、「とりわけ日本は将来に対してとても悲観的、かつ、社会システムに対する信頼度が低い国」と指摘。しかし他方で「所属している会社・組織への信頼度や期待感は比較的高い」という特徴を示すことから「そうした信頼に投資をすることが企業の有益につながる」と提言しました。さらにその一例として、売上予測や人事評価にAIを活用することで従業員のエンパワーメントを向上させ、結果的に企業の透明性も担保しているFacebook社の取り組みについてもご紹介いただきました。

最後は"生活"の領域から、内閣官房シェアリングエコノミー伝道師の石山アンジュ氏。
石山氏は"シェアリングエコノミー"に明確な定義は存在せず、「隣家と醤油の貸し借りをする」といった昔ながらの信頼関係も、一種のシェアリングエコノミーだと言います。しかし一方で今到来しつつある「シェアリングエコノミー2.0」の特徴として「プラットフォームを介し、個人と個人がモノ・場所・時間・スキル等を直接的にシェアするのみならず、CtoCでのつながりがソーシャルキャピタルにもなりえる」と、自身の経験も交えながらその魅力を共有します。そんな"シェアエコ2.0時代"の重要なファクターは「いかにして信頼をつくれるのか」。時代とともに信頼の形が変化するなかで「テクノロジーと信頼をつなぐ未来のカギは、人類の良心とその拡張にあるのではないか」と述べました。

「新しい信頼」を取り巻く、自由闊達な意見の場

アンカンファレンスでは、インフォバーン社 井登友一氏のファシリテーションのもと、登壇者と来場者が自由に議論を交わしました。

個人の情報を守る、プライベート偏重になる日本において「Public Parts」をいかに日本で醸成できるのかという意見に、「シリコンバレーではクリスマスシーズンになると、自宅のガレージなんかで眠っているおもちゃを恵まれない子どもたちに提供している。バーチャルな世界でもよいので、公共コミュニティにおけるそうした小さな成功体験が重要なポイント」と小林氏。

さらに、「シェアリングエコノミーの世界ではユーザーが分散的な構造をした社会を飛び越え、相手を信頼する。より多くの日本人がそうした信頼の境界線を飛び越えられるようになるには?」という質問には、石山氏が「人類は小規模集団のなかで個人間の信頼で結ばれていたはず。飛び越えられないのはきっと長らく中央集約的な構造に身を置いていたから。『それより以前は、個人間の信頼で結ばれていた』と気づくことが第一歩になるのではないか」と述べました。

人材をマネジメントする視点で注目が集まった「AIによる人事評価」。個人が個人に寄せる信頼をどう担保するのか、失敗するのも人間としたときにその失敗はどう鑑みられるのかという意見では、馬渕氏は「AIの評価である程度の判断は下されるが、その後、人間によるキャリブレーション(調整)という段階を踏み、このときに個人間の信頼度が考慮される。ロングタームで見たときにその人が会社の成長をどうつくっていくのか、その部分は人間にしかわからない」と回答。ダイバーシティの観点で、バイアスをどのようになくすことができるのかが重要と述べました。

さらに、テクノロジーは信頼醸成にどのような役割を果たすのかという質問に対し、石山氏は「人類が持ちうる良心が信頼で、それをさらに広げるのがテクノロジー」と回答。Leigh氏は「人類がAIを活用するにあたり、初期段階の設定、あるいはAIの訓練を技術的なセクターで行うとき、AIを取り扱う人間側の意識下にある思惑が介在してしまいがちになる。それが如実に結果に表れるため、そうしたバイアスも十分に考慮しなければならない」と続けました。

アンカンファレンス終了後には、株式会社JERIQUEの田中淳子氏による“信頼”をコンセプトにしたフードが振る舞われたネットワーキングタイムを実施。食材提供元が2次元バーコードでわかるサラダや、著名ファーストフード店とブランド銘柄の牛肉どちらを選ぶかというハンバーガー、パッケージにまったく情報がなくどう信頼できるのかを考えさせるスナックなどが用意され、大いに盛り上がりました。