株式会社 日立製作所 スマートシティ事業統括本部
グローバル事業統括推進センタ ソリューション推進センタ センタ長 佐野 豊
最新のITを駆使して電力消費と発電の状態、双方のバランスを取りながら、柔軟に電力の流れを制御する次世代電力網「スマートグリッド」が、今あらためて大きな注目を集めている。また、その技術をベースとして、風力や太陽光などの再生可能なエネルギーを用いた分散型発電システム、クリーンなEV(電気自動車)を主役とした都市交通、ビル・住宅などの都市システムなどを総合的に結びつけたスマートな次世代都市の展開も世界各地で本格化している。そうした中での重要なファクターとして位置づけられているのが、EV充電ソリューションだ。国内外での実証実験や事業化プロジェクトも活発化し、EV充電ソリューションは、構想段階からいよいよ実用化の時期を迎えたと言える。
そこでの日立の取り組みを、スマートシティ事業統括本部 グローバル事業統括推進センタ ソリューション推進センタのセンタ長を務める佐野 豊が語った。

次世代電力網「スマートグリッド」の技術をベースに、再生可能なエネルギーを用いた分散型発電システム、最新のITを用いたビル・住宅などの都市システムなどを総合的に結びつけたスマートな次世代都市の構想が世界各地で本格化している。
もちろん日立としても強い意気込みを持っており、電力エネルギー、水処理、交通の3つの事業領域から、スマートな次世代都市の実現に向けてアプローチしている。
そうした中での重要なファクターとして急浮上しているのが、EV(Electric Vehicle:電気自動車)である。
すでに身近な存在になったハイブリッドカー(HV)に続き、主要自動車メーカーによるEVの量産が本格化したことで、普及に向けた動きが一気に加速すると期待されている。ただ、現状のEVは1回の充電で走行できる距離は200キロメートル未満と短く、ガソリン車やハイブリッド車に比べて移動に制約を受けるのが難点だ。
そこでEVに向けたスマートな機能を持った充電インフラを都市にきめ細かく整備することで、利便性をカバーしようという取り組みが活発化しているのである。
一方では、EVに搭載された大容量のバッテリーを蓄電システムとしても活用していこうという構想も進んでいる。電力需要のピーク時や計画停電時にEVを家屋やさまざまな施設の配電盤と接続し、バッテリーから給電することで、バックアップ電源としての役割を果たさせるのだ。
日立製作所 スマートシティ事業統括本部 グローバル事業統括推進センタ ソリューション推進センタのセンタ長を務める佐野豊はこう語る。
「電力エネルギーの観点からみるとEVは、再生可能エネルギーを含めた電力の効率的な利用と需要の平準化に貢献するコンポーネントとなります。一方でEVは、排気ガスを出さないクリーンで使い勝手の良いコミューターとして都市交通を支えます。その意味からEVは、電力エネルギーと交通の2つの領域をつなぐプラットフォームとして発展していく可能性が高いのです。スマートな次世代都市におけるEVのあるべき姿を見据えつつ、日立はEV充電ソリューションの実用化をめざしています」
■ 日立のめざすEV充電ソリューション全体イメージ

DSM:Demand Side Management DMS:Distribution Management System SG:Smart Grid
EV充電ソリューションとは、具体的にどんな機能やサービスを提供するものなのだろうか。また、日立はその実用化に向けて、どんな取り組みを重ねているのだろうか。
そこにはさまざまな技術要素があるのだが、「パワーエレクトロニクス系の機器や制御システム」、そしてITをベースとした「クラウド型情報サービス」の大きく2つのシステム体系が、日立における取り組みの主軸となる。
EV向けの急速充電器は、最大50kWという大容量の電力をEVのバッテリーに短時間(15〜30分)で供給するパワーエレクトロニクス機器であり、大量普及の際の設置や運用に関しては、電力系統や周辺の電気系設備との関係を十分に配慮しなければならない。
こうした観点から日立は、1つの電源パネルから4台のEVに対して同時に給電を行える急速充電器を開発している。さらにスマートグリッドと密接に連携して、きめ細かな可変運用を可能とするシステムを開発中だ。
「電力需要のピーク時に多数のEVが充電スタンドに訪れた際には、各車への給電を薄く広く分散することで、電力系統へのインパクトを最小限に抑えることができます。逆に、電力需要に余裕がある際には、各車に集中的に給電を行って利用者へのサービスを向上させるのです。特に風力や太陽光などの再生可能エネルギーに由来する電力の余剰分は、使わなければ無駄に捨てられるだけであり、EVのバッテリーへの充電は最も有効な活用方法となります。このようにEV充電の運用に際しては、その時々の状況に応じた柔軟な切り替えが重要な技術となります。
日立グループでは情報制御システム社を中心に、モーターをドライブするコンバーターやインバーター、UPS(無停電電源装置)などの機器やシステムの開発を長年にわたり手がけてきました。その歴史の中で培ってきた電機メーカーならではのモノづくりの強みや運用ノウハウを、急速充電器の制御システムにも生かしていこうとしています」
機関誌「Uvalere(ユーヴァレール) Vol.22」より
文=小山健治(ジャーナリスト) 写真=吉江好樹
記載の情報は取材時点のものです。