株式会社 日立製作所 中央研究所
グリーンコンピューティング研究部 主任研究員 野尻 徹
CO2排出量抑制や電力コストの削減、そして継続的な電力不足に対処するために一層の節電が求められている昨今、ITシステム運用の拠点インフラであるデータセンターにおいて、IT機器のみならず空調機なども含めた総合的な省電力化が急がれている。そうした中で日立が注力しているのが、IT 設備連係制御技術だ。ITを対象とした制御システムと設備管理を対象とした制御システム、この二つの制御システム間で相互に情報を交換・連係することで、データセンター全体としての省電力運用を実現するものである。実証実験を経て、いよいよ実用化に向けて歩み始めたこのIT 設備連係制御技術への取り組みについて、日立製作所 中央研究所 グリーンコンピューティング研究部 主任研究員の野尻 徹が語った。

株式会社 日立製作所 中央研究所
グリーンコンピューティング研究部
主任研究員 野尻 徹
かつてITは、生産活動や物流の効率化、資源消費の削減など、省エネルギーや環境保護に大きな貢献を果たす存在であった。
それが現在、状況は一変している。データセンターを中心として爆発的に増加していくIT機器が消費する電力が大きな社会問題となり始めたのだ。動画情報などインターネット上を流れる情報量の増加にともない、IT機器全体の消費電力は今後ますます増加していくことが予想されている。
省エネルギーや環境保護に対するプラス要因であったITは、いまやマイナス要因に転じてしまった。そのターニングポイントとなったのは2007年と言われている。
同年の8月、アメリカの環境保護庁が「サーバとデータセンターの電力効率に関する報告書」を米議会に提出し、データセンター省電力化の必要性を強く示唆した。そして、これを受ける形でデータセンター関連の各ベンダーが省電力化へ乗り出した。
もちろん、日立としても積極的なデータセンター省電力化への取り組みを重ねている。
その活動の中心に位置しているのが、2007年9月より推進しているデータセンタ省電力化プロジェクトクールセンター50(以下、プロジェクトクールセンター50)である。2008年度から2012年度までの5年間で、データセンター全体の消費電力を最大50%削減することを同プロジェクトは目標としている。ITの高度化や利用拡大によって増加していく電力をこの取り組みによって相殺し、データセンター全体としての消費電力を2007年度比で最大50%削減することをめざすのだ。
そこでの取り組みの状況を、日立製作所中央研究所 グリーンコンピューティング研究部の主任研究員である野尻徹は、次のように語る。
「日立では、データセンターの消費電力削減を図るため、サーバやストレージなどのIT機器やコンポーネントから、高効率の電源モジュール、UPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)、インバータ制御の空調機まで、データセンターを構成するあらゆるレイヤーの設備について技術開発を推進し、着実な成果を上げています」
ユニークなところでは、uVALUEのタネで紹介した自然外気冷房型空調システムのような取り組みもある。気温や湿度の低い冬季を中心として、外気を活用することでデータセンターの省電力化を図るというものだ。
もっとも、これらの技術をそのまま実際のデータセンターに適用すれば、狙いどおりの省電力化を達成できるわけではない。野尻は一方で、次のようにも語る。
「成果を上げてきたのは、あくまでも要素技術としての話です。これらの技術を多様かつ複雑な条件・環境下にある実際のデータセンターでいかにインテグレーションし、運用していくのか。お客さまに提供するソリューションとして実用化(事業化)するまでには、乗り越えなくてはならない壁がまだたくさん残っています」
機関誌「Uvalere(ユーヴァレール) Vol.22」より
文=小山健治 写真=吉江好樹
記載の情報は取材時点のものです。