Hitachi Storage Magazine Vol.9 掲載
主要なITベンダーから相次いで垂直統合型プラットフォームが登場する中、日立が満を持して市場投入したのが「Hitachi Unified Compute Platform」(以下、UCP)である。 変化し続けるビジネス環境において迅速な業務構築・改変と、自動化・自律化による運用コストの削減を両立させることがそのコンセプト。「IaaS基盤モデル」と「PaaS基盤モデル」の2種類のプラットフォームにより、用途に応じたクラウド環境を提供し、効率的なITインフラ運用をサポートする。

日立製作所 情報・通信システム社
ITプラットフォーム事業本部
事業統括本部 PFビジネス本部
担当本部長 本間 久雄
──日立からも垂直統合型プラットフォームとしてUCPが発売されましたが、どんな狙いで開発されたものなのでしょうか。
本間 経営者は仮想化技術によって高性能・高信頼な機器を高効率で活用し、ROIを最大化することで、新たな事業価値創造のために投資を振り分けたいと考えています。 ところが現実はどうかというと、仮想サーバ数の急増によってデータセンターの運用環境は複雑化しています。また、さまざまなベンダーの機器、複数の管理ソフトウェアにより、システム設計や検証作業も複雑化しています。
一言でいえばUCPは、こうした仮想化の管理ギャップを解消するものです。サーバ、ストレージ、ネットワーク、管理ソフトウェアをセットにして、すぐに使える統合プラットフォームとして提案しています。 コンセプトは、「変化し続けるビジネス環境において迅速な業務構築および改変と、自動化・自律化による運用コストの削減を両立し、攻めのIT戦略を可能とするプラットフォーム」です。
── UCPには、「IaaS基盤モデル」(UCP Profor VMware vSphere®)と「PaaS基盤モデル」(UCP with OpenMiddleware)の2つのモデルが用意されていますが、それぞれの特長を教えてください。
本間 IaaS基盤モデルは、プラットフォームを効率的に運用したいお客さま向けに高信頼の仮想化環境を提供するもの。一方のPaaS基盤モデルは、プライベートクラウド環境を構築されるお客さま向けにミドルウェアを含めた実行環境を提供するものです。
──日立はこれに先立ち、もともと独立して活動してきたサーバ、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアの各事業部門を1つに統合する組織改編を行っていますね。UCPはこの取り組みの最初の成果と言えるのでしょうか。

日立製作所 情報・通信システム社
ITプラットフォーム事業本部
開発統括本部 統合PF開発本部
担当本部長 青島 達人
青島 おっしゃるとおりです。2012年4月にITプラットフォーム事業本部が発足し、これまでのような製品カテゴリごとの部分最適ではなく、プラットフォームとして全体最適の価値を高めていくことをめざしています。 1つの組織としてまとまったことで、時代の流れに合わせた製品を開発する体制が整いました。その結果、UCPの製品化が実現したのです。
──とはいえ、違った"文化"を持った事業部門が1つになる中では、さまざまな衝突もあったのではないかと思うのですが……。
青島 もちろん、まったく衝突がないわけではありません。 例えば、ソフトウェアとハードウェアでは、開発プロセスや販売の進め方、原価の管理、投資の回収など、本質的にビジネスモデルそのものが違っているのですから、考え方の違いが浮き彫りになる場面も少なくありません。
しかし、サーバ、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアといった専門分野に関係なく、メンバーが膝を突き合わせて開発に取り組む中で、お互いの価値観を認め合いながら切磋琢磨していこうという空気が自ずと醸成されています。
また、それぞれの専門分野は企業買収によって1つになったわけではなく、もともとオール日立としてやってきた仲間同士であり、高い信頼性に対する強い"こだわり"は共通しています。
こうした和の精神を持ってモノづくりに臨んでいく姿は、国産ベンダーならではの特長であり、強みになると考えています。
──UCPの具体的な構成要素について教えてください。
本間 まずIaaS基盤モデルでは、高信頼のブレードサーバ「BladeSymphony BS500」ならびに仮想化に対応したストレージ「Hitachi Virtual Storage Platform」でハードウェアを構成し、新しく開発した「統合プラットフォームオーケストレーション機能」を組み込んでいます。
PaaS基盤モデルのほうは、ブレードサーバはIaaS基盤モデルと共通ですが、ストレージには「Hitachi Unified Storage 130」を採用しています。 また、運用管理ソフトウェアとして「JP1」を、実行系ソフトウェアとしてクラウドサービスプラットフォームの「Cosminexus」ならびにリレーショナルデータベースの「HiRDB」を組み込んでいます。
──統合プラットフォームオーケストレーション機能とは、どんな機能なのでしょうか。
青島 仮想マシンと物理サーバの統合管理を行うものです。 具体的には、VMwareの管理ソフトウェアである「VMware® vCenter™」(以下、vCenter)のプラグインとなるもので、仮想マシンとそれに対応したハードウェアを紐づけ、相関関係を"見える化"し、一元的な管理を実現します。 例えば、仮想マシンを新しく立ち上げる際に必要なデータストアの作成や割り当てなども、vCenterから呼び出されるソフトウェアによりシームレスなオペレーションが可能となります。これにより、業務側で仮想化環境を運用している担当者は、IT部門の管理者にその都度作業を依頼する必要はなくなります。

VM管理画面からのシームレスなハードウェア管理
── PaaS基盤モデルのJP1は、どのような役割を担っているのでしょうか。
青島 最大の特長は、IT運用を自動化するJP1/Automatic Operation(以下、JP1/AO)の搭載です。 JP1/AOは、仮想マシン運用、サーバ設定など、運用手順書に従い手動で操作していた煩雑なIT運用を自動化する製品です。日立が大規模データセンターの運用を通じて培ってきた運用手順の豊富なノウハウを自動化コンテンツとしてテンプレート化し、すぐに使えるコンテンツとしてご用意してます。 これまでは運用手順書に沿って手動で実行していた複数のハードウェアやソフトウェアにまたがる複雑なオペレーションを、コンテンツに記されたフローに基づいて自動実行するわけです。仮想マシンが次々に立ち上がり、管理対象が増えて複雑化してしまった仮想化環境においても、運用管理の負担を大幅に低減することができます。

JP1/AOを活用したIT運用自動化の有効活用範囲
その他にもJP1には、稼働監視ツールによる障害対処プロセスの迅速化、省力化など、自動運用支援のためのさまざまな機能が用意されています。これにより、IT運用の容易性を高めるとともに、重要業務で求められる高度なサービスレベルを確保します。
──UCPを導入することで、企業はどんなメリットを得ることができるのでしょうか。
本間 UCPの構成要素はすべて事前検証済みで、最適化された状態でインテグレートされているため、導入そのものを非常に容易に行えます。同等のプラットフォームを個別のコンポーネントから構築した場合と比べ、導入工数を50%削減*1できます。
また、先ほど青島が申し上げた「統合プラットフォームオーケストレーション機能」を活用することで、仮想マシンのデプロイ時間を15日から15 分程度*1に短縮できます。また、PaaS基盤モデルではテンプレート活用により仮想マシンの設計作業時間を40人日から13人日*1へ削減することが可能です。 こうしたサービスイン時間の短縮は、ビジネスの環境変化に即応したいという経営者の要求に応えていきます。
── UCPに対してどんな企業から引き合いがあるのでしょうか。
本間 現在のところ、業種としては金融系、産業・製造系、公共系といった大手のお客さまからの引き合いが中心となっています。日立がこれまで提供してきたプラットフォームの信頼性を高く評価し、関心を持っていただいています。
──導入となった場合、どの程度までカスタマイズ対応は可能ですか。
本間 あまりにも根幹的な部分でのカスタマイズとなると、統合プラットフォームとしての本来の意義を失ってしまいます。"さじ加減"が難しいところですが、日立はUCPを「ソリューションを提供していくためのコア」と位置付けており、可能な限りお客さまのご要望に応えていきたいと考えています。
──その意味では、今後さまざまな業種・業務向けにサブメニューやオプションを用意し、UCPのIaaS基盤モデルやPaaS基盤モデルを活用した商材としての幅を広げていくといった可能性もあるのでしょうか。
本間 はい。その方向にUCPを発展させていこうと考えています。 例えば、現在のPaaS基盤モデルに搭載している実行系のソフトウェアはCosminexusおよびHiRDBとなっていますが、当然のことながら他のアプリケーションサーバやデータベースを利用したい、あるいはオープンソース系のミドルウェアを利用したいと考えるお客さまも多くおられます。そうしたニーズもしっかり受け止め、お応えしていかなければなりません。
IaaS基盤モデルをベースに、お客さまの求めるソリューションを個別対応でインテグレートしていくというケースも十分にありえると思います。
──そうした他社製のミドルウェアと組み合わせた場合でも、日立の強みは活かされるのでしょうか。
本間 もちろんです。日立はさまざまな業務システムから社会イノベーションを支えるインフラシステムまで豊富なシステム構築の経験を有しており、プラットフォームとともにそのノウハウをお客さまに提供します。 例えば、日立はSAP AGとの間で十数年にわたるアライアンスを結んでおり、日立自身がユーザーとしてSAP®システムを利用し、お客さまに対してコンサルティングから構築、運用まで一貫してサポートするワンストップソリューションを提供しています。
また、次々に湧き出すように発生するビッグデータをリアルタイムに活用し、競争力の強化や収益の向上を実現したいというニーズの高まりを受け、メモリ上で高速なデータ処理を実現するSAP AGのインメモリソフトウェア「SAP HANA®」をブレードサーバのハイエンドモデルである「BS2000」に実装した「日立インメモリDBアプライアンス for SAP HANA™」と呼ばれるシステムも手がけています。こうした実績からも、日立が提供できる付加価値は多方面にわたります。
──ビッグデータというお話しがありましたが、今後のUCPの展開を見据えたとき、やはりビッグデータ利活用への適用は大きなテーマになりそうですね。
本間 当然、そうなります。 ビッグデータに関しては、先ほど申し上げたようなストリームデータのリアルタイム処理のほか、Hadoopを利用した大規模な非構造化データの分析などに対するニーズも高く、UCPとしてどういった形で対応していくのかは非常に重要なテーマです。さらに将来的には、多様なアナリティクスに関するアルゴリズムや手法、日立自身が蓄積してきた知見やノウハウをシナリオ化し、業務に応じたテンプレートとしてUCPに組み込んでいくといったことも考えていきたいと思います。
── UCPのもう1つの特長である、運用管理の自動化もさらに進化していくことになるのでしょうか。
青島 プラットフォームの運用管理に関する作業負荷はゼロが良い。システムが自律的に最適な状態にチューニングを行い、万一トラブルが起こった場合にも自動的に修復が行われる――究極的にはこんな姿を思い描き、そこに一歩でも近づくべく、日立ではJP1をはじめとする運用管理ソフトウェアの進化に向けた開発に日々取り組んでいます。
──それはすごいですね。まさに運用管理の理想像と思われます。
青島 もっとも、人間がまったく関与しないというのは極端すぎる話ですが。 普段はユーザーに意識させることなく運用を続け、故障やトラブルの予兆を捉えた場合など、人間による判断が必要になった時だけ管理者とコンタクトをとり、アクションを促すといったレベルの自動化・自律化をめざしたいと考えています。
日立は効率的なストレージ運用管理を行う「Hitachi Command Suite」をはじめ、よりハードウェアに密着したレイヤーから監視や運用管理を支援するツール群も有しており、これらの技術とJP1の連携を深めていくことで、かなりのレベルに到達できるのではないかと思います。 また、日立がお客さまのシステムを24 時間365日体制でしっかり見守り、安定稼働を支える「JP1システム監視サービス」の機能強化や、JP1/AOのコンテンツをさらに拡充させるといった側面からも、お客さまにおける運用管理の省力化に貢献していきます。

日立統合プラットフォームの強化の方向性