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Hitachi

日立ストレージソリューション

IDC コラム/レポート

ANALYST PROFILE

森山 正秋氏

森山 正秋(もりやま まさあき)
エンタープライズインフラストラクチャ/PCs
グループディレクター
IDC Japan株式会社

ストレージ、サーバーを含む複数のリサーチグループを統括。アナリストとしては、国内ストレージ調査の責任者として、年間情報サービス「Japan Storage Systems」「Japan Storage Solutions」「Japan Quarterly Disk Storage Tracker」「国内企業のストレージ利用実態調査」などを担当。また、多くのマルチクライアント調査やカスタム調査を手掛けている。IDC Japan主催のJapan Storage Vision、Directions Tokyo、Japan Predictionsの講演メンバー。ストレージ業界の各種カンファレンスでもベンダーやユーザーを対象にした多くの講演を行っているほか、その発言は各種メディアで取り上げられている。

コラム:企業の変革を支えるオールフラッシュアレイの新しい選定基準

利用環境で変わるストレージインフラの選定基準

ITを活用してビジネスモデルの変革、新しい価値の創造、競争優位性の確立に取り組む企業が増えている。IDCではそうした企業の取り組みをデジタルトランスフォーメーション(DX)と定義している。DXを実現するためには、ITテクノロジーの活用に留まらず、経営層のリーダーシップ、IT部門の組織や人材の変革などが求められるが、DXを推進する基礎となるのは多様なデータとそこから価値を抽出する企業の力である。

DXの推進の一環として、ビッグデータへの取り組みが進んでいる。ただし、国内企業のビッグデータへの取り組みはまだ実験的な段階や限定的な利用段階に留まっている場合が多い。また、そこで利用されるデータも基幹系のみ、あるいは情報系のみ、または構造化データのみといった場合が多い。しかし、ビッグデータの本質は多様なデータの組み合せによる新しい価値の発見や創出にあり、ビッグデータの活用が本格化すると共に、基幹系データと情報系データや、構造化データと非構造化データを組み合わせた多様で大規模なデータに基づいて新しい価値を生み出すことが求められるようになる。

企業がビッグデータの本格活用を進めるに当たっての課題の一つは、データの収集/蓄積/分析を担当するストレージインフラの選定である。ビッグデータ向けストレージインフラは、多くのユーザーが利用し、企業の競争力を左右するミッションクリティカルな本番環境では、実験段階や限定的な利用段階とは異なる選定基準が求められる。特に、分析対象となるデータを蓄積、保護し、分析のパフォーマンスを支えるストレージインフラは、高信頼性、高可用性、高度な運用性など本番環境が求める選定基準を満たすことが必要になる。

オールフラッシュアレイは汎用ストレージに移行

ストレージ市場では大きなテクノロジーの変革が進んでおり、ビッグデータ向けストレージインフラで求められる大規模なデータの蓄積/保護や分析を支える新たなテクノロジーの市場が相次いで形成されている。そうしたテクノロジーの代表的な存在がオールフラッシュアレイである。オールフラッシュアレイは、I/O性能で限界が見えているHDDの代わりにフラッシュデバイス(NANDメモリー、SSD)を搭載しているだけではなく、フラッシュデバイスのメリットを最大限に引き出すために、HDDとは異なるフラッシュデバイスの動作などに合わせて、コントローラーやソフトウェアなどでフラッシュ最適化を行っているストレージアレイである。

オールフラッシュアレイは国内でも4年ほど前から市場形成が始まった。当初は新興企業が中心であったが、大手のストレージベンダーが相次いで参入したことで2015年以降は市場の成長が加速している。オールフラッシュアレイは、当初は導入コストが高く、従来型のストレージアレイが提供してきたストレージサービス(スナップショット、レプリケーションなど)に十分に対応していなかったケースも多く、非常に高いI/O性能や、低いレイテンシー(遅延時間)が強く求められる特定用途向けから利用が始まった。具体的には、クラウドサービスプロバイダーが、オールフラッシュアレイを導入してサービスを高速化することで顧客満足度の向上を図ることがその一例として挙げられる。 しかし、その後のフラッシュデバイスのコスト低下、重複排除/圧縮機能の搭載による容量効率の向上などでシステムとしての経済性が向上している。また、従来のストレージアレイが提供していたストレージサービスを提供できるモデルが相次いで市場に投入されたことで、プライマリーストレージとしての利用が拡大している。オールフラッシュアレイを導入する業種も幅広い分野に広がっており、それぞれの業種で業務の改善や刷新などを目的としての利用が進んでいる。オールフラッシュアレイは短期間のうちに、特定用途向けの特殊なストレージインフラから、企業を支える汎用的なストレージインフラに移行している。

オールフラッシュアレイの多様化で用途に応じた選定基準が重要に

IDCでは、国内外付型ストレージシステム市場の支出額ベースでの2015年〜2020年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)はマイナス0.5%と予測しているが、オールフラッシュアレイについては32.3%と非常に高い平均成長率を予測している。オールフラッシュアレイの高成長の理由としてはフラッシュデバイスのコスト削減が進むだけでではなく、そのシステムとしての導入メリットが挙げられる。オールフラッシュアレイは、ストレージインフラのパフォーマンスを向上させるだけではなく、フラッシュデバイスの特徴から、低消費電力、省スペース、システム台数の削減によるコスト抑制など経済性や環境への配慮といった面でも優れており、従来のストレージ支出のパターンを変える可能性を持っている。2016年〜2020年において、オールフラッシュアレイは企業における汎用ストレージとしてのポジションを獲得し、既存のストレージアレイと同様に製品の多様化が進むと予測される。

ユーザー企業は、オールフラッシュアレイの汎用化と多様化に伴い、今後は多くの用途でそのメリットを享受できるようになる。しかし、そこでユーザー企業が留意すべき点は、オールフラッシュアレイの多様化に伴って、その選定基準も利用用途に応じて変化していくことである。オールフラッシュアレイの市場形成当初は、そのパフォーマンスが非常に重要な選定基準であった。しかし、プライマリーストレージ市場で採用が広がると共に、システムとしての経済性やストレージサービスの提供能力が選定基準に加わった。さらに、大規模なビッグデータ活用などのミッションクリティカルな本番環境での利用では、高信頼性/高可用性、データ保護機能、高度な運用性が重要な選定基準として加わる。ミッションクリティカルな環境で、オールフラッシュアレイのパフォーマンスと高信頼性/高可用性を両立させるという市場はまだ形成され始めたばかりであるが、国内企業のDXへの取り組みが進み、大規模なデータを活用したビジネスの創出やビジネスモデル変革などが活発化すると共に、企業の競争力に大きな影響を与える重要な市場に成長すると考えられる。

今後数年間でオールフラッシュアレイは汎用ストレージとしての位置付けを確立する。ユーザー企業にとっては、利用用途に応じてオールフラッシュアレイを適切に選定し使い分けていくことが、DXを支えるインフラ構築にとって重要になるとIDCでは考えている。