現在のITインフラを語るうえで、仮想化技術は欠かせない要素となっている。企業の仮想化技術活用シーンも、かつての試験利用からよりコアな業務での本番利用へと変わってきている。その一方で、仮想化は導入や運用管理の複雑化といった問題を抱えており、専門技術を持たない企業にとって導入のハードルを高める要因ともなっている。そうしたなか、ソフトウェアからハードウェアまで最適な構成によって仮想化環境をあらかじめ構築済の「垂直統合型システム」への関心が高まっている。現在の仮想化技術の課題を浮き彫りにしつつ、この新しいインフラシステムの有効性について検証したい。
日々刻々とビジネスを取り巻く環境が移り変わる現在において、企業が競争優位を実現するためには、いかに時代の流れを汲んだIT戦略を打ち出すかがカギを握るようになった。そうしたなか、多くの企業では、散在している既存のサーバを物理的に集約するとともに、仮想化技術を導入することで、迅速かつ柔軟、そして効率的なIT活用に取り組んでいるのである。ビジネスとITが切っても切れない関係となったいま、ビジネス部門からの要求に対して、IT部門がスピード感を持ってITサービスを提供するためには、もはや仮想化は必須の技術と言っても過言ではないだろう。
事実、IT市場調査会社のIDC Japanが今年4月に発表した国内サーバ市場の調査結果および市場予測によると、2012年には仮想マシンの出荷台数が物理サーバベースの出荷台数を初めて上回った。さらに同社は、2012年は約69万台だった仮想マシン出荷台数が、2016年には実に175万台にまで増加すると予測している。
(ソース:http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1304/11/news090.html)

国内サーバ市場の動向 2007年〜2016年(出典:IDC Japan)
また、仮想化システムの利用目的についても、よりビジネスのコアな部分へとシフトしてきている。数年前までは、仮想化導入の目的はテスト環境としての利用が主流だったが、現在では本番環境での利用が当たり前になってきているようだ。IDC Japanが今年2月に実施した調査では、仮想化技術を本番環境で運用しているシステムの種類は、販売/顧客/契約管理システムが最も多く、次に会計システム、データベース(基幹系)と続いている。このことからも、ミッションクリティカルな領域での仮想化技術利用が定着しているのがうかがえる。
(ソース:http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1304/11/news090.html)
ここまで仮想化技術が普及した背景としては、まず先述のようなビジネスニーズに対する即応性の求められていることが挙げられる。めまぐるしい市場競争の中で、他社に先がけて新しいシステムを開発・導入しなければならなかったり、ビジネスの成長に合わせて早急にシステムを拡張する必要があったりする場面では、物理機器をその都度調達する必要のない仮想化ならではの柔軟性と迅速性が威力を発揮するのだ。
そして、物理サーバの集約により、コストや設置スペース、さらには消費電力の削減を図り、同時にITリソースを有効活用できるのも、企業にとって仮想化技術が持つ大きな魅力となっている。ギリギリまで無駄を省く昨今の企業経営では、ITコストもまた抑制圧力が強まる一方にある。そうしたなか、ITリソースの限界近くまで利用することができる仮想化技術が好んで利用されるのも当然のことだと言える。
他にも仮想化には、BCP(業務継続計画)やディザスタリカバリのための、バックアップやフェイルオーバーといった冗長性や可用性を高める構成を組みやすいというメリットがある。とりわけ日本国内では、2011年の東日本大震災以降にこうした障害および災害対策を目的とした仮想化技術の導入が急速に進んだ。
IT調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)が国内企業を対象に実施した「IT投資動向調査 2013」の結果からも、仮想化技術に対する関心の高さがうかがえる。19あるIT投資のカテゴリーの中で、「仮想化技術の導入」は、「IT基盤の統合・再構築」、「ビジネスプロセスの可視化・最適化」に続く3位の重要度指数となっている。トップのIT基盤の統合・再構築でも、仮想化技術は大きな要素であることを考慮すれば、仮想化の重要性はさらに高いものと見ていいだろう。さらに実施率でも、仮想化技術の導入を実施済みと回答している企業は47.2%と半数に迫っている。これが2015年度の実施率予想となると、7割を超える企業が仮想化技術を導入するとしており、IT基盤の統合・再構築に続く2番目の実施率となっている。
(ソース:http://www.itr.co.jp/company_outline/press_release/121205PR/index.html)

主要なIT動向の重要度と実施率(出典:ITR「IT投資動向調査2013」
このように、仮想化環境は企業のITインフラとしてもはや一般的な選択肢となっている。その流れは、サーバの分野にとどまらず、デスクトップ仮想化も急速に普及し始めている。
しかし一方で、仮想化の普及がもたらす弊害も出始めている。物理サーバに対して仮想サーバの数が急激に増えたことで、運用管理者にとって管理対象もまた拡大することとなった。加えて、仮想サーバを利用することによって、ハードウェアやソフトウェアの組み合わせが膨大なパターンとなってしまうために、さらなる管理の複雑化をもたらしている。このため、ハードウェアにかかるコストは削減できても、運用管理コスト全体は増加する傾向にあるのだ。
とりわけ深刻なのが、仮想化技術の導入や運用には高度な技術とノウハウ、それに煩雑な作業が必要となることだ。例えば、1台の物理サーバにどれだけの数の仮想サーバを作ればいいのかを、CPUの種類やスペックと数、メモリのサイズ、ストレージの規模と種類、ネットワークのスループットなどを踏まえて見極めるキャパシティプランニングは、仮想化技術導入プロジェクトにおいてその成否を握ると言っていい重要なフェーズだが、ここを的確に遂行できる人材はかなり限られているはずだ。
他にも、ライセンス体系の検証、OSやミドルウェア、アプリケーションと各種ハードウェアの“相性”問題を考慮した構成、可用性を高めるためのクラスタリング等、冗長化構成の設計など、いずれも豊富な経験とノウハウが必要であり、仮想化技術導入のハードルを高くしている。また、実業務での利用シーンを想定してインフラを構築しなければならないため、ITだけでなくビジネスにも精通している人材も必要となる。
もし、こうした正しい知識や技術を持たないまま仮想化技術を導入してしまった場合には、単なるITコストの無駄にとどまらず、その後のビジネスに支障をきたすリスクもあることを忘れてはならない。
そこで、サーバ仮想化がもたらす恩恵はそのままに、ノウハウが少ない企業であっても容易かつ安全に導入・運用ができるよう、サーバやストレージ、ネットワーク、そして仮想化環境とその管理機能も統合した新しいインフラシステムが最近注目を集めている。「垂直統合型システム」もしくは「垂直統合型プラットフォーム」とよばれるこれらの製品には、仮想化インフラ構築に対する高度な知見に基づいてソフトウェアとハードウェアすべてを事前検証し最適な構成がなされている。垂直統合型システムには、アプリケーションサーバなどのミドルウェアまでを組み込んだ製品もあり、導入後そのままプライベートクラウド基盤としての利用が可能となっている。
こうした垂直統合型システムの中でも、特に日本企業での利用シーンに合致した製品と言えるのが、昨年10月に登場した日立の「Hitachi Unified Compute Platform(以下、UCP)」だ。UCPは、日立が国内外で培った高性能・高信頼なハードウェア、ミドルウェアときめ細かい運用ノウハウを組合せ、ITシステム構築、運用作業の自動化や、サーバ、ストレージ、ネットワークの一元管理を可能にすることで、仮想化やクラウドの迅速かつ容易な構築、運用を実現している。
特に「UCPかんたん仮想化モデル」では、かんたんに“仮想化運用”するための日立独自の運用ツールが提供されており、仮想化環境の構築・運用の経験が少ない企業でも、かんたんに小規模なプライベートクラウド基盤を導入できるようになっている。
UCPかんたん仮想化モデルは、工場で仮想化環境を構築し、最短10営業日という短期間で納品が可能で、サーバや仮想化ソフト、サポートサービス等が一括で提供される。システム設計もヒアリングシートに答えるだけで完了するという簡便さだ。仮想化のメリットの一つであるバックアップについても、あらかじめ仮想マシン全体のバックアップが設定済で出荷されるので、企業は特別な設定をする必要がない。さらに、日立独自の運用支援マニュアルや現地トレーニングによる技術支援など、手厚いサポート体制も、その後の余裕を持った運用につながることだろう。これらの要素をトータルして考えると、そのコストパフォーマンスは相当に高いと言ってよい。
もはや仮想化技術は、企業規模を問わず活用を検討すべきものだ。“初めての仮想化”であっても、容易かつ安心して導入を行い、そして無理のない運用管理を実現したいのであれば、UCPは最適な選択肢の一つになるだろう。