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Hitachi IT Platform Magazine

一人目のキーパーソンは、柔軟な働き方を実現するテレワークを推奨し、国の地方創生プロジェクトにも参画する株式会社テレワークマネジメント代表の田澤由利さん。テレワーク・在宅勤務の実現が、企業にどのような価値をもたらすのかを尋ねました。

テレワークで、社内の働き方も変わる

今、国の推奨もあり、テレワークが注目されていますが、いざ導入となるとプロジェクトがなかなか進まないケースがあるとも聞きます。円滑な導入に向けて、企業は何をすべきでしょうか?
まずは危機感を共有することです。
これを言うとハッとされる方が多いんですが、子育てだけでなく、親の介護や本人の病気・怪我、災害や異常気象など、オフィスで働くのが難しくなる状況は、誰にいつ訪れるかわかりません。地位や職種に関係なく、どの社員にも同じような状況に立たされる可能性があります。その時、柔軟に働ける職場になっていないと大変なことになる、という認識を全員が持つことです。

そしてもうひとつは、テレワークで行える仕事は限られる、という思い込みを捨てること。 今ITが進歩したおかげで、すべてではありませんが、たいがいの仕事は在宅でできます。テレワークでできるのはデータ入力など一部だけと思われがちですが、そんなことはありません。
あと、管理する立場の方からよく聞くのが、「離れていると評価ができない」という声ですが、在宅勤務者の評価はどのように行えばいいのでしょうか。
そう聞かれた時、逆に私は「今は、どのように評価しているんですか?」と聞き返します。すると、「成果はもちろん、働く様子や勤務時間などを総合的に見ている」とおっしゃいます。
だったら同じように評価すればいいじゃないですか。仕事をしている姿はWeb会議ツールで見ることもできますし、仕事中の画面をチェックできるツールもある。断片的な勤務時間をカウントできるツールもありますし、もちろん成果物はメールでチェックできる。ITを使えば社内同様の管理ができるんです。
ここまで話すと、はたと「自分は今までちゃんと評価してきただろうか?」と気付く方がいらっしゃいます。

目の前にいることに安心して、なんとなく頑張っているな、遅くまでいるな、で、やはりなんとなく部下を評価している上司の方も少なくないかもしれません。
テレワークに取り組むと、離れていて姿が見えなくても仕事の生産性を管理・評価するしくみが自ずとできあがります。すると、結果として社内の生産性の管理・評価を見直すことにもつながっていくんです。つまり、テレワークの導入は企業全体の「生産性の向上」をもたらします。
ワークライフバランスは確かに大事ですがその推進の結果、会社の生産性が落ちました、では本末転倒です。その点、テレワークは、企業の成長とワークライフバランスの両方をセットで見込める優れたしくみだと思います。

「時間あたりの生産性」というものさし

育児や介護など時間に制約のある社員と、そうではない社員同士がともに働くなかで、両方をフェアに評価するのは難しいと思いますが、その点はいかがですか。
私は「時間あたりの生産性」というものさしで評価すべきだと思っています。
いま、世の中では「成果」を評価のものさしにする動きが目立っていますが、これでは時間に制限のある在宅勤務者にとっては不利です。8時間フルに働ける人と4時間しか働けない人が、同じ成果を出した場合、同じ評価になってしまう。

田澤さんの会社では具体的にどのような評価制度にしているんですか。
まず「時間あたりの生産性」を評価して、その人の時給を決めます。そこに「会社に出て来てくれてありがとう」という意味の出社手当や「長時間会社にいてくれてありがとう」という意味の時間拘束手当などが付きます。このような手当で、会社に来られる人と来られない人の不公平を解消できます。また、短時間しか働けない人でも、自らの創意工夫により「時間あたりの生産性」が高まれば時給がアップするので、本人の仕事への取り組み度合に応じた対価が得られるわけです。
「8時間会社にいること」が評価されるのではなく、「1時間あたりで何ができたのか」が評価される、ということですね。成果主義への懸念として、逆に長時間労働を促進する可能性があげられていますが、これならそれも防ぐことができますね。

限られた時間の中で手際よく仕事をこなす。これを制度化することが企業の生産性向上、ひいては日本のGDP向上につながっていくのではないか、と思っています。

地方に住みながら東京の仕事をする

国の地方創生プロジェクトにテレワークが盛り込まれるようですね。なぜテレワークで地方が元気になるんですか。
今、総務省が「ふるさとテレワーク」というプロジェクトを進めています。地方にサテライトオフィス等を整備して東京の人財を受け入れ、東京の仕事をそのまま地方で行うモデルをつくろう、というものです。
これは、育児や介護で働きにくい人のサポートだけでなく、価値観の多様化にもこたえられそうですね。例えば30代でどこに家を買おうか決断する中で、土地の高い東京でマンション暮らしをするより、土地も安く、自然の豊かな地方で子育てをする、みたいな選択肢が現実的になりますね。
企業にとってのメリットは、やはり人財不足の解消。東京から労働力が減っても、地方の労働力を計算に入れることができます。たとえば繁閑のあるビジネスでも、繁忙期の雇用が容易になるでしょう。また人財が分散されますから災害時の危機管理という面でもメリットがあります。

東京一極集中は、雇用、交通など、さまざまな面で限界に来ていますから、今後日本が発展していくためには、テレワークのようなしくみは必要でしょうね。
そして、それを実現するためのITはもうすでに存在しています。
あとは新しい働き方へ動き出すだけ、ですね。田澤さん、今日はどうもありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。

ラボ室長の探訪後記

田澤さんの著書「在宅勤務が会社を救う〜社員が元気に働く企業の新戦略〜」の中で、在宅勤務中の社内有識者がビデオ会議を通して営業現場に加わり、お客さまの意思決定を支援するというユースケースが紹介されていました。ITを活用すれば、在宅でも営業活動に参加できるという発想は画期的であり、企業にとっては有能な人財を活かすことができて、従業員にとってはライフステージが変化しても自分のスキルを活かしながら働き続けることができて、Win-Winの関係性が生まれます。
また、地方で生活しながらITを使って東京の仕事を行う働き方は、都市部の一極集中による諸問題を緩和しつつ、地方活性化につながる新しい発想です。

このようにITを活用した柔軟な働き方は、発想と実践次第で大きな可能性を秘めているのです。時間と場所によらず、働きたい人が働き続けられる社会の実現に向けて、さまざまな企業でテレワークが当たり前になるように、日立はITの支援を考えていきたいと思います。

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