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顧客が何を求めているかを理解し、シンプルな形に整理して価値創造のパターンを可視化するための方法論である「バリュープロポジション・デザイン」が注目されている。

この方法論の書籍の共著者の一人である、イヴ・ピニュール氏が、2015年4月15日に来日セミナーをおこなった。その内容をレポートする。

イノベーションのために必要な、「顧客価値」からの思考

多摩大学大学院教授 紺野 登 氏
多摩大学大学院教授 紺野 登 氏

開会に際して、登壇した多摩大学大学院教授の紺野登氏は、イヴ・ピニュール氏とは15年来の知り合い。今回の『バリュー・プロポジション・デザイン』の前著にあたる『ビジネスモデル・ジェネレーション』(共に翔泳社刊)のもう1名の共著者でもアレックス・オスター・ワルダー氏とともに、ビジネスモデルの新しい方法論の普及に努めてきた。紺野氏は、日本企業にこそ、バリュー・プロポジション・デザインの考え方が必要だと語る。

「ビジネスモデル」そして「バリュープロポジション」は、単なるツールではなく、経営学の分野でも意義のあるものです。今、起きているイノベーションは、かつて「技術革新」と誤って訳されたようなものとはまったく異なる質的な変化。企業の製品が中心のプロダクトアウトのようなものではなく、顧客、市場、社会といったデマンドサイドから生まれてくるものです。80年代にピークを迎えた戦略論や組織論などの経営学の考え方は急速に陳腐化しているからです。日本企業が弱いとされている課題設定力、コンセプト創造力、リーンスタートアップ型の実践力を強化するために、ピニュール氏の考え方を取り入れていただきたい。



まず顧客を理解し、価値創造のパターンを理解する

続いてイヴ・ピニュール氏が登壇。前著で、日本でもベストセラーとなった『ビジネスモデル・ジェネレーション』と『バリュー・プロポジション・デザイン』の考え方の基本を紹介した。

顧客が何を求めているかを、顧客自身に直接聞いたり、顧客の行動を観察したりしてしっかりと把握し、価値創造のパターンを目に見える形にすることです。大切なことは、顧客にとって「やるべきことをやること」です。 そして顧客にとって、より大切なペイン(悩み)、ゲイン(恩恵)を解決するバリュー・プロポジション(価値提案)をつくりあげることが、利益の出るビジネスにつながるのです。

バリュー・プロポジション・デザインは、そのための手法として、「バリュー・プロポジション・キャンバス」というフレームワークを提示する。姉妹本の『ビジネスモデル・ヘネレーション』で紹介された「ビジネスモデル・キャンバス」と相補的な関係をなすものだ。このツールの活用と、考え方を、ピニュール氏は詳しく語った。

バリュー・プロポジションキャンバスは、ビジネスモデル・キャンバスの構築ブロックのうち、2つの要素、バリュー・プロポジション(価値提案)と顧客セグメント(顧客価値)にズームインしたものです。

ビジネスモデル・キャンバスが、事業そのもののモデルを作り上げるための体系的なツールであるのに対して、バリュープロポジション・キャンバスは顧客によりフォーカスする。顧客を観察し、ヒアリングし、考察することから、「バリューマップ」と「顧客プロフィール」という2つのイラスト型のマップに記入していく。

顧客プロフィールで大切なことは、顧客が抱えているペイン(悩み)をさぐることです。望ましくない問題、障害、リスクを具体的に洗い出します。そして、顧客にとってのゲイン(望んでいる結果や恩恵)も表していきます。望ましいゲイン、予想外のゲイン、何がゲインを生み出しているかを考えていくことです。

顧客の仕事とペイン、ゲインを表記していき、顧客プロフィールをつくり上げていく。これは、これまでマーケティングの分野で、「ペルソナ」といわれた顧客設定の考え方よりも、より深く顧客の思考を掘り下げていくための方法論だ。

そして、次に顧客に提供する製品とサービスを「バリューマップ」から記述する方法を紹介した。

提供できる製品やサービスのリストが基礎になります。ですが、製品とサービスだけでは、価値を生み出すことが出来ません。特定の顧客のセグメントと結びつけ、ペイン、ゲインとの関係をみていくことから、顧客にとっての価値を考えることができます。

ピニュール氏は、顧客のペインを取り除くための「ペインリリーバー」、顧客のゲインを生み出すための「ゲインクリエーター」という方法を紹介し、デザインのプロセスをいくつかの企業の事例で紹介した。

顧客の仕事、ペイン、ゲインにたいする価値提案がデザインできたら、それを何度も検証し、継続的にプロトタイプの修正をおこなっていきます。順序だったものではなく、反復的なプロセスとしておこなっていくことが有効です。 そこから学び、学習を繰り返すことがバリュー・プロポジションの目標です。

顧客について分析し、ズームアウト、ズームインという視覚的な方法を駆使しながら価値創造をおこなっていく。このように、バリュープロポジション・デザインの全体プロセスを紹介したピニュール氏。最後におこなわれた質疑応答では、企業で取り入れるための導入方法や、既存組織でビジネスを立ち上げるための方法についてアドバイスをおこない、講演を終えた。




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