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金融ソリューション

概要

 SEPA (Single Euro Payment Area:単一ユーロ決済圏)とは、EU加盟国を含めた32カ国において、国内外の区別なくユーロ建ての小口決済が行える地域・およびそれを実現するスキームのことであり、SEPA決済対象となる取引は3つあります。

  • ①送金・口座振込(SCT:SEPA Credit Transfer)
  • ②自動引落し(SDD:SEPA Direct Debit)
  • ③カード決済(SEPA Card Payments)

 SEPAは、クロスボーダー決済に対しても国内決済に対しても同様に適用できるような共通決済スキームを目指しており、SEPAの決済メッセージはISO20022というXMLベースの国際標準に準拠しています。また、決済スキームと決済提供者(決済インフラ)を分離するべし、という考え方に基づき、決済方法やメッセージ標準などの共通ルールのみ定められており、どの決済インフラサービスを利用するかは、個別の金融機関が判断します。
 ここでは、昨年11月2日に導入されたばかりのSEPA引落しスキーム(SDD)についてご紹介します。SDDスキームでは、支払者別に個人(B2C)スキームと法人(B2B)スキームに分かれ、前者にはコアSDDスキーム(SEPA Core Direct Debit Scheme)、後者にはB2BのSDDスキーム(SEPA Business to Business Direct Debit Scheme)を用意しています。これら2つのスキームは、定期的/1回限りの引落しやBIC(*1)/IBAN(*2)利用などの共通的な仕様な部分がある一方、B2B スキームでは承認されたトランザクションの払戻し(返金)ができないこと、支払銀行に対して事前承認が行われていることの確認や支払人の意思確認が必要とされていること、などの違いもあります。

SDD導入メリット

 SDDスキームを導入するまでは、各国に決済ルールやメッセージフォーマットが異なっているため、多国籍企業はそれぞれのローカルルールやローカルフォーマットに対応する必要がありました。また、決済に必要な時間も数日から2〜3週間まで、国によって大きく異なっていたため、企業のキャッシュマネジメント上の課題になっていました。SDDスキームの導入により、これらのルールやフォーマットの違いがなくなるため、決済期間が統一、かつ短縮され、企業のキャッシュマネジメント業務の効率化が期待されます。その上、各企業はクロスボーダー決済のために国ごとに銀行口座を持っていましたが、SEPA域内の1つの口座だけで対応することができるため、資金の集中管理も容易になります。
 金融機関にとってもSEPAに対応することにより、メッセージに取引関連情報を追加するなど、付加価値サービスを提供することができるようになります。例として、オランダのローカルスキームでは、決済メッセージに受取人の身分確認情報やサインした日の情報がなかったため、SEPAスキームを適用する際、金融機関がこれらの情報を追加提供することができます。以上のように、決済期間の短縮化、付加情報の提供など、中期的にユーザー、銀行双方のメリットとなるスキームとして期待されています。

SDD導入後の課題及び今後の展望

 SDDスキームを普及させるために、欧州決済協議会(EPC(*3))はユーロ圏内の金融機関に2010年11月1日までにSDDスキームに対応することが求めています。また、ユーロ圏外の金融機関には、2014年11月1日までの対応を求めていますが、現状では旧スキームの利用も認められています。金融機関にとっては、当面新旧両方のスキームが共存するため、提供・維持コストが重複して発生することになり、SEPAスキーム移行の阻害要因になっています。当初は、2010年末以降旧スキームが完全に廃止され、SEPAスキームのみ使われることが想定されていましたが、現時点では各金融機関のSEPAへの対応・移行が遅れているため、完全移行の実現は困難といわれています。SDDスキームに先駆けて施行されたSCTスキームは導入されてからおよそ2年経過していますが、 現在でもまだ5%未満の利用率です。その主な原因は、旧スキーム廃止時期が明確になっていないことだと言われています。これに対し、旧スキームの廃止時期を決定して、強制的に移行を進めるべきと主張しているSEPAメンバーも多く存在する一方、少数ではありますが、決済サービス提供者の自由やユーザの選択肢も尊重すべきと訴えているメンバーもいます。SDD及びその他のSEPAスキームの今後の普及に向け、2010年11月にEU圏内の金融機関がすべて予定通りに導入実施するという大きなマイルストーンがクリアできるか、そのため旧スキームの廃止時期が早期に合意できるかが鍵となります。

日立の取組み

 SDDもSCTと同じ金融メッセージ標準ISO20022に準拠しているため、システム対応にはXMLメッセージ処理が必須となります。現状、SEPAは欧州での動きであり、その歩みは当初の期待ほど順調ではありませんが、中長期的に考えれば、欧州域の金融機関、さらには欧州で事業活動を行う外資金融機関での国際標準対応、すなわちXML対応は必然化すると考えられます。また、この国際標準化の流れは欧州以外の米国やアジアでも避けがたいものとなってきています。日本の金融機関にとってもこれらの動きは対岸の火事ではなく、自らの課題として対応を検討すべき時期が来ていると考えて間違いないでしょう。
 日立は、XBRLをはじめとする国際標準化の活動に積極的に参画し、金融機関のグローバル対応に不可欠なソリューションを提供して参りました。今後もISO20022を初めとする標準化の流れを的確に捉え、グループ会社及びパートナー社の協業により日本の金融機関のグローバル化、金融マーケットのグローバル化に対応したソリューションをいち早く提供してまいります。

*1
Bank Identifier Code:銀行を特定するためのコード
*2
International Bank Account Number:受取人が口座を保有する銀行の所在地、支店、口座番号を特定するための番号であり、送金エラーの削減や処理の迅速化のため欧州銀行協会とISOによって策定された規格。
*3
European Payments Council:SEPAの実現に向けて2002年に結成された決済サービスに関するEU銀行界の民間組織