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中国クレジットカード市場の市場規模

中国のクレジットカード市場は、2002年にスタートした「金プロジェクト」により、デビットカード・クレジットカードの発行やカードネットワーク(中国銀聯:UnionPay)の整備が開始されて以降、急速な発展を続けています。中国人民銀行の統計によると、クレジットカード発行数は、2009年度上半期で1.63億枚に達し、成長率はオリンピック景気に沸いた2008年度上期に記録した35.4%には及ばないものの、14.3%の伸び率という安定した成長段階にあります。
中国では、現金指向の強い文化や、クレジットカード発行時の与信条件の高さを背景として、デビットカードの割合が圧倒的であり、クレジットカードの発行数はカード全体の8.2%(2009年上半期)程度となっています。一方で、クレジットカードの1人当たり保有数は0.82枚に過ぎず、日本の3.3枚、米国の4.39枚に比べ少ない状態にあり、また所得水準の上昇を背景として、今後も市場拡大が続くと見られています。

中国クレジットカード市場の法制度とインフラ

ノンバンクにクレジットカードの発行が認められている日本と異なり、中国では1999年に中国人民銀行が定めた「銀行カード業務管理規則」により、銀行(外資銀行も含む)のみが、カード(デビット・クレジット)の発行者(イシュア)となることを許諾されています。中国で発行されるカードブランドとしては、UnionPay(中国銀聯)に加え、VISA、Mastercard等の国際カードブランドも進出していますが、加盟店手数料の安いUnionPayが発行数の69.6%を占めており、最も有力なブランドとなっています。UnionPayは自らの決済ネットワークを提供するとともに、銀行の委託により取引のオーソリゼーションをセンタで代行します。

クレジットカード市場での差別化

(1)現地銀行のクレジットカード事業の収益モデル

日本のクレジットカード事業の主な収益源は、各々収益全体の3割以上を占める、加盟店手数料と利息です。中国でも主な収益源は利息と加盟店手数料ですが、主なブランドのUnionPayでは、加盟店手数料が低い水準に留まっており、クレジットカード事業単体での発行銀行への事業貢献は比較的小さいものとなっています。しかし、各発行銀行は、提携カード事業、ターゲットユーザの選定、キャッシング、分割払いでの利息収入等において異なる戦略をとることで、差別化されたサービスを提供しています。特に、後発となる都市商業銀行(日本の地銀相当)、および外資系銀行は、ハイエンドユーザや若年層など特定顧客層へのターゲティングを行い、広範なユーザへのカード発行を行う国有商業銀行と異なるサービスを提供しつつあります。

(2)提携カード事業

航空会社・旅行会社・小売業等との協働により、多くの提携カードが発行され、割引等のサービス面での差別化が図られています。多くの場合、カードの与信・発行・運用は銀行が実施しています。提携会社は割引やポイントサービスを通じたカードホルダーに対する販促ツールとしてカードを活用しています。

(3)キャッシング

多くのクレジットカードはATMまたは窓口でのキャッシング機能を持ちますが、手数料・利用上限は各銀行のポリシーに依存します。

(4)分割払いと個別ローン

多くの銀行が、クレジットライン内での消費財の分割払いをクレジットカードのサービスとして提供しています。同時に、クレジットカードユーザに向け、自動車ローン、リフォームローンといった高額商品向け個別ローンを事前審査した上で提供しています。個別ローンの手数料はさまざまであり、各銀行はローン商品の差別化を実施しています。

消費者金融の動向

中国銀行業監督管理委員会(China Banking Regulatory Commission: CBRC)は、無担保での小額融資の機会拡大のため、消費者信用事業の拡大を検討しており、2009年6月より、北京・上海・天津・成都の4都市において、ノンバンク企業への消費者金融事業を認めるパイロットを開始し、モニタリングを実施しています。2010年までに、外資系のチェコPPFグループが天津地区に消費者金融会社の設立を検討しているという情報でもわかるように、ノンバンク系の外資企業にとっても無担保融資事業への道が整備される可能性があります。

今後の取組み

今後現地銀行は、ターゲットユーザを絞ったカード商品の開発や、リスク管理高度化による不良債権率の改善など、クレジットカード事業の事業拡大、収益性向上への取り組みをさらに活発化させ、同時に他の商品分野、例えば高額商品の個別ローンや無担保消費者ローンを視野に入れることで、クレジットカードを関連商品のクロスセルの機会として活用することが予想されます。
このような状況下、中国市場で日本の成熟した事業ノウハウを活用する機会はさらに拡大します。一部の日本のクレジットカード会社は、すでに現地大手銀行と提携カードを発行した実績がありますが、今後、ユーザターゲティング・クロスセルなどのノウハウ提供やそれを前提とした共同事業の立ち上げなど、中国クレジットカード市場への参入がさらに活発化すると見込まれます。一方で、ノンバンク系カード会社においても、今後急拡大が予測される中国での消費者金融市場において、日本で培ったノウハウを活用した事業機会が期待されます。
当社は、国内でのクレジットカード関連システムへの対応で得たノウハウや現地のリソースを活用し、お客さまの中国事業検討をサポートいたします。