ページの本文へ

Hitachi

ビッグデータ×AI(人工知能)

業績改善の立案者はコンピュータ

〜ヒト・モノ・カネを統合的に分析しビジネスの最適化を目指す〜

企業の現場から経営まで、あらゆる部門でビッグデータを活用しようという動きが本格化してきています。 財務データや顧客データ(POS・会員データ)など、企業活動に関するデータに着目して業績向上の要因を分析することは、その典型例でしょう。 しかし、こうした企業活動に関するデータ以外にも業績に影響を与えるデータが存在することが最近の実証実験で明らかになってきました。 経験的には以前から影響があると考えられてきた接客時の対応、職場の活気、休憩室での会話など、人間行動に関する分野です。

本稿では企業活動だけでなく人間行動も含めた、ヒト・モノ・カネに関する多種多様なデータを統合して解析し、ビジネスの全体像を把握、改善していく取り組みについてご紹介します。

業績改善の立案者はコンピュータ
〜ヒト・モノ・カネ統合分析エンジン〜

かつてデータが少なかった時代には、主に経験と勘でビジネス上の判断が行われてきました。 また、データを分析するといっても財務情報、顧客データ、物流データなど、その範囲は企業活動から得られるデータに限られていました。 しかし、「ビッグデータ」という言葉が象徴するように、IT技術の進歩によって収集できるデータは膨張を続けています。 もはや人間が把握できるデータはそのごく一部でしかなく、実際には企業競争を優位にするような重要な情報が見落とされているのかもしれません。

「人が分析できる量を超えているなら、コンピュータを使って見てもらうようにしては。」そう考えて日立製作所が開発したのが、「ヒト・モノ・カネ統合分析エンジン」です。 企業活動に関するデータと日立が独自に開発した計測センサによって収集した人間行動に関するビッグデータに対し、業績に影響を及ぼす大量の指標群を生成し、これらの関係性を自動分析します。 たとえば、「売上のアップを図るにはどうすればいいか」と問えば、コンピュータがその解決策のヒントを割り出してくれます。

現在、日立製作所と日立ハイテクノロジーズの両者で企業への本格導入を進めており、本システムを試験的に導入したコールセンターや小売店舗で受注業績や客単価が向上したという結果が得られています。

図1:ヒト・モノ・カネ統合分析エンジン
図1:ヒト・モノ・カネ統合分析エンジン

営業業績に影響する主要因を解明 【コールセンター事例】

電話営業の成績に寄与する要因を特定し、受注業績を13%向上したコールセンターの事例をご紹介します。

日立製作所と日立ハイテクノロジーズは、コールセンターを運営する株式会社もしもしホットラインの協力のもと、上司と部下の対面行動や身体の動きなど、人間行動に関するデータから業績向上に影響する要因を探りました。

実験ではコールセンターのセールス担当者の行動を1か月にわたって計測し、得られたデータを分析エンジンによって解析。 その結果、電話を使ったセールス活動の業績と休憩中の職場の活発度に相関が見られました。さらに、この分析結果を検証するために職場の活発度向上が見込まれる同年代のセールス担当者で編成したチームについて同様の分析を行ったところ、職場の活発度が上がるとともに、受注率が13%も向上するという結果を得ました。

図2:コールセンターでの成果
図2:コールセンターでの成果

小売業での客単価と店員の配置の相関性が明らかに【小売店舗事例】

店舗における客単価向上に寄与する要因を特定し、店員の最適配置により客単価を15%向上させた小売店舗の事例をご紹介します。

日立製作所と日立ハイテクノロジーズの両者は、とあるホームセンターの協力のもと、来店客がいつどこでたちどまり、何を購入したのか、さらに店員はどのような行動をとったのか、従来取得できなかった人間行動に関するデータから売上向上の要因を探りました。

実験では10日分のPOSデータと従業員や来店客の行動データを収集。 これを分析エンジンにかけて、売上に関連する6,000個超の指標を自動生成し、それらの指標から客単価向上の方程式を出力します。 分析の結果、店内には従業員がいると客単価がアップする「高感度スポット」があることが判明しました。 そこで、売場での従業員の配置と客単価に相関があることを活用し、可能な限り高感度スポットに従業員が滞在するようにして、客単価が15%も向上するという結果を得ました。

図3:小売店舗での成果
図3:小売店舗での成果

継続的なデータ分析がビジネス全体の最適化につながる

計測センサを用いて測定したコールセンターのセールス担当者の行動や、店舗の来店客の動線は様々なものに影響を受けます。 例えば、小売店舗の実験後に同様の実験を行ったところ、高感度スポットがわずかに移動していたことが発見されました。

新商品の投入などでお店の棚割が変われば、当然来店客の動線も変ってきます。 それだけに、分析エンジンを組み込んだ店舗運営サポートシステムを使って、どのような要因が業績に影響するのかを継続的に確認して、効果的な施策を導入することが、ビジネス全体の最適化につながると考えています。

研究の発端は世界最小のコンピュータを作ろうという試みが

ヒト・モノ・カネ統合分析エンジンや人間行動を計測するセンサの開発の発端になったのが、世界最小のコンピュータを作ろうという試みでした。 開発を担った日立中央研究所では当時、世界最先端のマイクロコンピュータの研究をしており、この応用として小型の名札型センサや赤外線ビーコンといった人間計測センサが開発されました。 そして、計測センサの用途として、約5年間にわたり人間行動を研究し、企業内の社員のコミュニケーション頻度や活動状況などのデータの収集と可視化に努め、100万日にわたり人間行動データを蓄積しました。 そこで培ったノウハウがヒト・モノ・カネ統合分析エンジンに詰め込まれています。

上述したコールセンターや小売店舗での事例はその成果の一つであり、2014年度には「ヒューマンビッグデータサービス」として本格的なサービス開始が計画されています。 今後、日立では人間行動における研究実績と大量のデータに裏付けられた科学的な知見に基づいたコンサルティング、システムインテグレーションを提供し、社会インフラの高度な知能化に向けたさらなる活用を目指していきます。

特記事項

  • この記事は、「会報誌 HITACHI USER 2013年5月」に掲載されたものです。
  • 記載の会社名、製品名はそれぞれの会社の商標もしくは登録商標です。