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コラム・インタビュー

日本の製造業がめざすべき「品質管理業務の標準化」と「検査業務の自動化」

日立製作所 産業・流通ビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部 産業システム本部 第二システム部 主任技師の井川祐輔氏

日立製作所 産業・流通ビジネスユニット
エンタープライズソリューション事業部 産業システム本部 第二システム部
主任技師の井川祐輔氏

日立が提供するもう1つのソリューション「品質検査」は、IoTを用いることでコロナ禍での品質確保と経営目標のKPI(重要業績評価指標)達成への取り組みに貢献する機能を備えている。特に、製造業の経営層を悩ませる喫緊の課題となっていた不適切検査からの脱却に効果的だ。

数年前から日本の製造業で続発した不適切検査の原因を分析すると、大きく「人手不足」「役割と権限があいまい」「不正が行える環境」の3つに集約される。日立製作所 産業・流通ビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部 産業システム本部 第二システム部 主任技師の井川祐輔氏は、「これら3つの課題を解決するために日本の製造業がめざすべき、『品質管理業務の標準化』と『検査業務の自動化』を品質検査ソリューションによって実現できます」と語る。

品質検査ソリューションの位置付け品質検査ソリューションの位置付け

品質検査ソリューションの位置付け 品質検査ソリューションの位置付け(クリックで拡大)

ところで日立は、どういった背景からこの品質検査ソリューションを展開するに至ったのだろうか。実は日立は、20年以上前から製薬業界向けに品質検査のパッケージソリューションを提供しており、国内上位20社のうち14社に採用されるなど高い実績を誇っている。すなわち今回の品質検査ソリューションは、そうした製薬業界における品質マネジメントシステム(QMS)など、特に厳しい要件が課せられている品質検査に携わる中で培ってきた業界最高水準の知見とノウハウを、裾野の広い製造業向けに横展開することをめざして開発に着手し、2019年から提案活動を進めてきたものなのである。

品質検査ソリューションを構成する4つの主要機能

品質検査ソリューションは、大きく分けて次の4つの機能で構成されている。

1つ目は「標準検査業務フロー定義」。試験依頼承認からサンプリング依頼、サンプリング採取、サンプリング受理、試験実施、試験項目自動判定、項目判定承認、自動総合判定、総合判定承認に至る品質検査の標準的な業務フローに、ユーザーの現状業務を適用することで不適切検査のリスクを低減する。「この標準検査業務フローこそ前述した製薬業界における品質検査のプロセスをベースとしたものであり、属人的な業務をシステムにより標準化するとともに担当業務ごとに権限を付与することで、部署ごとの役割を明確化します」(井川氏)という。

品質検査ソリューションにおける標準検査業務フロー定義の概要品質検査ソリューションにおける標準検査業務フロー定義の概要

品質検査ソリューションにおける標準検査業務フロー定義の概要 品質検査ソリューションにおける標準検査業務フロー定義の概要(クリックで拡大)

2つ目の「試験結果判定自動化」は、試験結果を登録後、そのデータが規格値の範囲にあるか否かをシステムで自動判定するもので、紙の検査記録書や試験成績書などへの手書きをなくすことで人為的ミスを排除するとともに省力化に寄与する。

3つ目は「検査データ自動取り込み」だ。工場内のさまざまな検査機器からのファイル転送や、型式の古い装置からの検査データもRS-232Cなどのインタフェースを介した物理的な結線により自動で取り込み、試験結果データと試験記録シート(バイナリファイル)を改ざんされない形でデータベースに保存する。これにより人間が介在してデータを転記していた作業をなくすことができる。

そして4つ目が「改ざんされないシステム」になる。担当者ごとに必要な権限を付与するとともに、標準検査業務フローの要所ごとにユーザー認証を要求し、登録された記録について変更履歴を保存する。万一、不正行為が発生した際の証跡となり、各担当者に対して不正を起こさせないための抑止力となる。

検査データの合否判定で80〜90%の工数削減も

実際に品質検査ソリューションはどのような導入効果を上げているのだろうか。

井川氏によれば、これまで手書きと手動で行っていた検査データの測定・記録および検査データの合否判定に品質検査ソリューションを適用すると、検査データの測定・記録については50〜67%の工数削減、検査データの合否判定については80〜90%の工数削減が見込めるという*1。「品質検査ソリューションによる自動化で品質検査業務を省力化することに加え、転記ミスや誤判定をゼロとするなどヒューマンエラーの低減にも大きく貢献しています」(同氏)。また、ある製造業では複数拠点に品質検査ソリューションを横展開し、不適切検査の撲滅に大きな成果を上げている。

品質検査ソリューションの導入効果の事例品質検査ソリューションの導入効果の事例

品質検査ソリューションの導入効果の事例 品質検査ソリューションの導入効果の事例(クリックで拡大)

日立はこれらの実績を基に提案活動のさらなる強化を図る一方で、より幅広い製造業に品質検査ソリューションを普及すべく、導入のハードルを下げるための取り組みも進めていく考えだ。井川氏は「今後に向けて、例えばSaaS型かつサブスクリプションモデルでのソリューション提供も検討しています」とその方向性を示す。

これまでもDX(デジタルトランスフォーメーション)が強く求められていた国内製造業だが、コロナ禍によって起こった事業や働き方の新たな日常(ニューノーマル)に対応するためにも、その取り組みをさらに加速していかなければならない。また、そうした中でも一貫して追求していかなければならないのが生産品質向上という観点であり、日立の製品経歴トレーサビリティと品質検査という2つのソリューションは、日本の製造業に新たな強みをもたらしてくれそうだ。

*1
本実績につきましては、当該お客さまの事例におけるケースとなり、必ずしも同様の効果が出るとは限りません。

アイティメディア営業企画 / 制作:MONOist 編集部 / 掲載日:2021年2月9日

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