本文へジャンプ

Hitachi

ヘルスケア

2019年1月11日
国立大学法人北海道大学北海道大学病院
株式会社日立製作所
国立研究開発法人日本医療研究開発機構

認知症早期診断に向け、MRIシステムによる撮像・解析技術を開発

1.事業概要

  国立大学法人北海道大学(総長:名和 豊春/以下、北大)と株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)から『未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業「QSMとVBMのハイブリッド撮像・解析による認知症の早期診断MRI」(研究開発代表者:北海道大学病院 准教授 工藤 與亮)』を受託し、研究開発を進めています。本事業は、MRIシステムを用いたQSM(鉄濃度定量の分布を解析する手法)*1とVBM(脳の萎縮の程度を客観的に評価する手法)*2に必要な撮像時間の短縮、QSMの解析精度の向上、およびQSMとVBMのハイブリッド解析によるアルツハイマー型認知症の早期診断や診断精度の向上を目的としています。

2.成果概要

  アルツハイマー型認知症では脳の特定領域の萎縮を評価するVBMが一定の有用性があると報告されています。一方で萎縮が顕著になる前の早期の変化を診断する方法が求められており、その一つとして、脳の特定領域に沈着する鉄を検出可能なQSMが期待されています。北大と日立はアルツハイマー型認知症の早期診断および検査時間の大幅な短縮を目的に、QSMとVBMを組み合わせたハイブリッド撮像・解析法を共同開発しました。北海道大学病院(病院長:寳金 清博/以下、北大病院)は、アルツハイマー型認知症と軽度認知障害、健常成人の判別において、VBM単独よりもQSMとVBMのハイブリッド撮像・解析法の方が判別精度が高いことを臨床研究により確認しました。さらに2018年7月からは、有効性の検証を加速するための多施設臨床研究を実施しています。今後、多施設臨床研究に基づくQSMとVBMのハイブリッド解析法の有効性の実証やハイブリッド撮像法を搭載したMRIシステムの製品化を進める予定です。今回開発したQSMとVBMを用いた新たなMRI検査法により、アルツハイマー型認知症の早期診断実現が一歩前進したと言えます。

2−1.QSMとVBMのハイブリッド撮像・解析法の開発

  従来、VBMに必要な高精細3次元T1強調像*3と、QSMに必要な磁化率強調画像の両方を取得するには撮像時間が10分以上かかっていました。今回、QSMとVBMの同時撮像ができるハイブリッド撮像法を新たに開発し、撮像時間を現在の10分以上から5分以内に短縮しました。これにより、検査中の患者の負担を軽減することが可能になります。また、計算上の制約で困難であった脳の表面付近のQSM解析が可能となる方法を新たに開発しました。アルツハイマー病理で重要な内側側頭葉を含む脳の全領域でVBMとのハイブリッド解析が可能になります。

2−2.臨床研究の進捗と多施設研究への拡大

  北大病院でQSMとVBMのハイブリッド撮像・解析法を用いた臨床研究を実施し、アルツハイマー型認知症、軽度認知障害と健常成人の鑑別診断において、VBM単独よりもQSMを併用することで診断精度が向上することを確認しました。さらに検証を加速するために、北大病院と岩手医科大学附属病院、徳島大学病院、名古屋市立大学病院から成る多施設臨床研究を2018年7月から行っています。この多施設研究では、アミロイドPET*4とQSMとの相関解析を行っており、アミロイド病理と鉄沈着の関係についても研究していく予定です。現在、少数例ではあるものの、アミロイドPETとQSMの間に有意な相関が見られています。

3. 今後の展望

  アルツハイマー型認知症の診断精度向上に関して、多施設臨床研究による症例数の増加とアミロイド病理との対比に基づき、QSMとVBMのハイブリッド解析法の有効性を実証します。さらに、長期前向き研究での実証を経て、早期の認知障害の検知や認知症への移行予測などアルツハイマー型認知症の早期診断法の確立をめざします。

*1
QSM(Quantitative Susceptibility Mapping): 磁化率の分布を画像化する手法。生体内の磁化率を変化させる鉄沈着や出血、脱髄などを検出することが可能になる。
*2
VBM(Voxel Based Morphometry):MRI の 3 次元画像から脳の萎縮の程度を客観的に評価する手法。
*3
T1強調像:水分以外を強調する画像。脂肪などは白く、水分は黒く表現される。脳の構造が見やすい特徴を持つ。
*4
アミロイドPET:たんぱく質の一種であるアミロイドベータの蓄積をPET(Positron Emission Tomography)で調べる検査。
アミロイドベータの蓄積がアルツハイマー型認知症の一因と言われている。

QSMとVBMのハイブリッド撮像・解析法の概念図

学会発表

アルツハイマー型認知症の国際学会Alzheimer’s Association International Conference (2018年7月、米国シカゴ)で以下の発表を行いました。

  • Sato R, Kudo K, Kawata Y, Udo N, Matsushima M, Yabe I, Yamaguchi A, Shirai T, Bito Y, Ochi H. Hybrid sequence and analysis of T1-weighted imaging and quantitative susceptibility mapping for early diagnosis of Alzheimer’s disease. Alzheimer’s Association International Conference 2018; P2-384.
  • Yamaguchi A, Kudo K, Sato R, Kawata Y, Udo N, Matsushima M, Yabe I, Shirai T, Ochi H. Detection of increased magnetic susceptibilities in the cerebral cortex in patients with Alzheimer’s disease: comparison of quantitative susceptibility mapping between conventional and brain surface correction method. Alzheimer’s Association International Conference 2018; P2-388.

照会先

北海道大学病院 放射線診断科 工藤與亮
〒060-8648 北海道札幌市北区北14条西5丁目
電話: 011-706-5977(直通)

株式会社日立製作所 ヘルスケアビジネスユニット 診断システム事業部 [担当:尾藤]
〒110-0015 東京都台東区東上野二丁目16番1号 上野イーストタワー
電話: 03-6284-3094(直通)

AMED「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業」に関するお問い合わせ先

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
産学連携部 医療機器研究課
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-7-1 読売新聞ビル23階
TEL: 03-6870-2213(課代表)

以上

本サイトは医療従事者向け情報を含みます。