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より早く、より確実な検査結果を提供するために

〜進化する検査自動化システム〜

さまざまな疾病の兆候を提示することで病気の早期発見や正確な診断を支援する検体検査。
データ活用とロボティクスにより人々のQoLに貢献できるシステム構築をめざしています。

最新の検査室

検体検査とは?

熱がある、なんとなくだるい、どこかに痛みを感じるなど、身体の不調は誰にでもあるものです。医師はまず、患者さんの話を聞いたり聴診器による診察を行いますが、これだけでは原因の特定や治療方針が決定できないことがあります。そこで医師は体から排出される尿や便、体の成分である血液などを採取して検査を行います。これが「検体検査」であり、心電図や脳波など身体の機能を直接調べる「生理機能検査」と合わせて「臨床検査」と呼ばれています。

疾患が疑われる患者さんに対し、診断の初期段階において医師の臨床的な意思決定の重要な部分を担っているのが臨床検査であり、その中でも画像診断と並んで頻繁に行われるのが血液や尿を検査する検体検査です。病院で診察を受けた際に、その場で採血・採尿された経験のある方は多いでしょう。予約の必要なくその場ですぐに検査に取りかかれるにも関わらず、さまざまな疾病の兆候がわかり、医師の診断内容の正確性を高めることができます。

血液は主に、赤血球・白血球・血小板などの細胞と、90%が水分で糖質や脂質などが含まれる血しょうからできています。たとえば赤血球・白血球の数や形などを調べると、貧血や免疫力低下の可能性がわかります。血液に含まれるコレステロール値・中性脂肪値からは動脈硬化症や高脂血症、血糖値からは糖尿病、肝機能検査からは脂肪肝や肝炎、肝硬変、腎機能検査からは、痛風や腎不全の可能性もわかるのです。アレルギーや感染症も血液検査で判明する一方、尿からは腎機能障害や、糖尿病などの可能性がわかります。

検体検査は、身体に関するたくさんの情報を私たちに提供してくれます。だからこそ現在、全国のあらゆる医療機関では毎日膨大な数の検体検査が行われているのです。

【臨床検査】[生理機能検査] 患者さんの身体そのものを調べる 例)超音波、CT、MRI、心電図 ほか [検体検査] 患者さんの身体から取り出したもの(検体)を調べる 例)血液、尿、便、組織 など

進化する検体検査の自動化

1940年代まで、検体検査は目視と手作業で行われてきました。1950年代に入り、アメリカのメーカーによる自動分析装置が登場したことから、本格的な検査の自動化が始まります。

最初に自動化されたのは、赤血球数の計測でした。1960年代(日本では1970年代)に入ると、白血球数の計測も自動化されます。検査がすべて手動で行われていた時代には、1検体あたりに大きく時間がかかり、さらに検査員の熟練度によって正確さにも差がありました。自動化が進んだことにより、正確性と速度の両面で抱えていた問題点が軽減されたのです。

その後、医療の発展に伴って検査項目が増えていき、それに合わせて検査のさらなるスピードアップが求められるようになりました。分析にかかる時間だけでなく、その前処理や検査の流れの中で必要な作業の自動化も進められたのです。日立が自動化に取り組む中で着目したのが、その中でも分注の工程でした。

分注とは、採血管に採られた血液を、検査に必要な量ずつ検査容器に分ける作業です。従来、検査技師がスポイトを使って元の採血管から吸い出し(吸引)、検査容器に吐き出す(吐出)作業を行っていましたが、作業効率化や、吐出時の血液の跳ね返りを原因とするコンタミネーション(混入)などが課題でした。こうした分注工程の自動化によって、検査前の処理にかかる時間が大きく短縮されただけでなく、質の向上にもつながったのです。

現在までに日立では、採血管の栓をはずしたり、分注された検査容器に識別用のバーコードラベルを貼るなど細かい作業を自動化したモジュールを提案することで、さらなるスピードアップに貢献してきました。また、それらのモジュールや各種の分析装置の間を専用の搬送ラインとITで結ぶ搬送システムによって、これまで検査技師が行っていた作業を自動化してその動線を合理化しています。

5検体をラックに乗せ、
各種の血液分析装置の間をスムーズに搬送する

検査技師の作業を自動化した検体前処理システム

IoT*やAI*の導入でさらに進化する検体検査

株式会社エスアールエルは全国に約90ヵ所の拠点を持ち、1日約20万人分の検体検査を行う、業界最大手の受託臨床検査企業です。SRL Advanced Lab Azabu(東京都港区)は、省人化・自動化につながるさまざまなシステムを導入し、顧客との接点を持つショールーム機能を持つ拠点であり、1日約2000人分の検査を請け負っています。ここに導入されているのが、日立の高精度分注システムおよび搬送システム、ロボティクスの技術などです。

「元々弊社は遺伝子検査や染色体検査などの特殊検査に強みがあり、東京都八王子市にセントラルラボを持っていますが、昨今のかかりつけ医の政策や、人間ドッグ・健康診断などによる開業医・クリニックでの一般検査の需要が高まってきたことに合わせ、開業医の多い港区にラボを開設しました。港区および周辺の区のクリニックから出される一般検査を請け負っています」と、同社首都圏検査部の丸山典子さんは話します。

「最近では、特に検査の結果をお返しするまでのスピードが重要視されています。たとえば半日の人間ドッグの場合、来院してすぐ採血・採尿された方が、すべての検査終了後に、検体検査の結果を反映した診断結果を聞いてお帰りになるというタイムスケジュールが当たり前のようになっています。そのために弊社では、約110種類の検査を最短で約30分で終え、電子カルテなどによって結果をフィードバックしています。もちろん、結果の正確性も追求していて、クリニックの先生方や患者さんにご満足いただいています」(丸山さん)

株式会社エスアールエル
首都圏検査部 港検査課 課長
丸山典子さん

検査ラボに検体が最も多く持ち込まれるのはクリニックの開院時間終了後の夕方から夜の時間帯で、翌朝までに結果をクリニックに報告するために24時間体制での作業が行われています。しかし、検査技師の不足や働き方改革の促進などから、夜中の時間帯の省人化が進められ、試験的に導入したロボットによる作業も行われています。「将来的にはたとえば検査・分析の過程でIoTやAIを組み合わせることで、人による大量の画像の識別作業の自動化や、検査精度の向上などに期待しています」とも丸山さんは話します。

日立はこれからも、ロボティクスとデジタル技術を活用し、医療にイノベーションをめざします。

*IoT : Internet of Things

*AI : Artificial Intelligence(人工知能)

SRL Advanced Lab Azabuでは、
再検査を行う必要がある検体を探して再度検査工程に
戻す作業を、ロボットが担当

より早く、より正確に、
検査結果を届けるために。
日立製作所
ヘルスケアビジネスユニット
分析システム事業部
設計本部 本部長 渡部正明
より早く、より正確に、検査結果を届けるために。 日立製作所 ヘルスケアビジネスユニット 分析システム事業部 設計本部 本部長 渡部正明

高精度分注のパイオニアであり、40年以上も検体検査の効率化を支えてきた日立。IoTやAI、ロボティクスなどのデジタル技術に注目が集まる一方、工場で培った技術や経験を生かすチャンスが増えてきていると話すのは、日立製作所ヘルスケアビジネスユニット 分析システム事業部の渡部正明だ。検体検査システムにおける日立ならではの強みとは?

検体検査の多くは、主に病院と検査センターで行われます。どちらも精度の高さはもちろん重要視されますが、特に検査センターには大量の検体が持ち込まれ、短時間で効率よく検査結果を出すことが求められます。その上、検査室の広さや形、また導入される分析装置にも違いがある中で、私たちはお客さまから詳細なヒアリングを行い、最適な搬送ラインや分注装置を核とした検体検査システムを提案します。さらに、多種多様な採血管の栓を自動で外す、検体の取り違いがないよう分注後の容器にバーコードラベルを貼付するなど、細かい工程を自動化したモジュールを各種そろえており、そこからお客さまのニーズに適したものをレイアウトします。お客さまの細かい要求に対し、最適なカスタマイズが行えるのは、日立ならではの強みだと考えています。

多様な業種へのデジタル技術活用の経験を生かす

お客さまからのヒアリングの中で、時にはヘルスケアの分野だけでは解決できない課題が出てきます。たとえば、各機能モジュールを含む検体検査システムでは万一急なシステムダウンが起こると、膨大な数の検査がストップしてしまうことで、人命に関わる事態にもなりかねません。そこで、これまで日立グループの製造部門で活用されていた機器故障などの予兆診断技術の導入を提案することで、お客さまに安心を届けられると考えています。

また、検査センターで膨大な数の検体を運ぶためには搬送ラインでは不十分なことがあったり、また搬送ラインを設けることで検査技師の動線が悪くなることもありました。こうした課題については、物流・製造業向けに使われていたAGV*や双腕ロボットの導入を提案しました。このように、多様な業種へデジタル技術を活用してきた経験を生かすことで、課題解決の選択肢の幅が広がっています。

今後の課題として考えているのは、検体検査の追跡システムです。以前よりは短時間で結果が出るようになったとはいえ、健康に関わることだけに患者さんにとって待ち時間は不安を感じられると思います。またお子さんや高齢の方が病院で長時間過ごすのは、ご本人も付き添いの方も大変でしょう。そこで「今、検査がどの段階にあるか」「あとどれくらい時間がかかるのか」などを追跡し、「見える化」することで、患者さんの不安や待ち時間にかかる負担を軽減できればと考えています。

さらに追求したいのが、AIやIoTなどを活用した検査室の無人化です。実は検査とは、人の手がかからない方が速くできるし、検査にかかる時間のぶれも生じません。たとえば鉄道の運行管理をする指令室のような場所で、複数の検査工程を集中管理することなどで、検査の省人化・省力化を実現していくことが今後の目標ですね。

*AGV: Automated Guided Vehicle(無人搬送車)

関連リンク
検体検査装置