2013年7月26日
人の行動を24時間センサーで記録・分析・可視化することで、生活や仕事に気づきを与え、新たな価値をもたらす。ライフログのビッグデータ解析は、個人の健康管理をはじめ、経営的視点からの社員の環境改善まで、さまざまな可能性を秘めている分野です。日立は、2012年7月と9月、柏レイソルアカデミーのU-18の選手を対象に、アカデミーと選手、ご家族の協力のもと、ライフログの実証実験を行いました。
J2から昇格した2011年のJリーグ優勝、2013年元旦に行われた第92回天皇杯全日本サッカー選手権大会優勝など、国内のみならず世界からも注目を集めている柏レイソル。柏レイソルアカデミーは、U-18、U-15、U-12、スクールクラスと年代ごとに将来柏レイソルの軸となる選手を育成する組織です。技術の習得に加え、人間形成をも視野に入れたその育成は、数多くのJリーガーを世に送り出しており、2011年のJリーグ優勝を決めたピッチには5名のアカデミー出身選手が立っていました。
今回の実証実験のきっかけは、センサー技術を使ったビッグデータ解析に可能性を見いだしていた、日立の長年のパートナーである株式会社JSOLより持ち込まれた企画でした。柏レイソルアカデミーの選手に協力していただいて、パフォーマンスや生活のログを分析する実証実験を行えないか。日立は、その企画の内容をディスカッションし、実証を行うための技術やプロセス、目的を明確化しました。これは実証する価値がある、そう判断した(株)JSOLと日立製作所 情報・通信システム社は、日立製作所 中央研究所に実験を依頼しました。3者のコラボレーションによって、この実証実験はプロジェクトとして動き出しました。
ビッグデータプロジェクトは、プロジェクトの意義や価値、目的を常に明確にする「企画力」、業務に関する深い知識とビッグデータの技術への理解という「ドメイン知識」、そして周囲を巻き込みながらハードルを柔軟にクリアしていく「突破力」が必要です。それを統括して進めていくのが、データ・アナリティクス・マイスターです。
日立には、ビッグデータ解析を確実にビジネス価値に結び付けるために、その上流工程を支援するデータ・アナリティクス・マイスター・サービスがあります。ビジョン構築から活用シナリオの策定、実用化検証、そして システム導入までをビッグデータのエキスパートがサポートするこのサービスは、今回の実証実験でも成果を得るための重要なプロセスとなりました。
今回のプロジェクトで用いたセンサーは、日立製作所のライフ顕微鏡。これは腕時計型センサネット端末で、人の活動に伴う3軸加速度を24時間365日収集することができます。これを試合中の選手に装着してもらい、運動量や歩数、距離はもちろん、ダッシュやジョギングなど走りの状態をとおしてサッカーのパフォーマンスを分析。ポジションごとの運動の質の違いや、運動量、試合ごとのデータ比較などを細かく解析することで、個々の特長を明瞭に把握できます。また、プロファイリングを続ければ、1か月前、半年前、1年前というスパンでの比較が可能となり、個人の変化や成長を視覚的に確認することもできます。
もうひとつの実験は、選手にライフ顕微鏡を数日間装着してもらい、ライフログから普段の生活と選手のパフォーマンスの関連を分析するというもの。トレーニングや試合以外の生活は、アカデミーのコーチも把握することはできません。ライフ顕微鏡なら、選手の日常の運動量や運動の質、睡眠の質といったことまで把握することができます。また分析を積み重ねることで、生活のリズムに潜在している疲労度などを把握できるため、けがを防止するトレーニングメニューの開発やアドバイスなどに役立てることができます。
今回の実証実験で、柏レイソルアカデミー内では睡眠とパフォーマンスが密接に関係していることが明確になりました。特にコーチをはじめとする関係者を驚かせたのは、選手がトレーニング前に昼寝をしていたこと。これはコーチのアドバイスではなく、トレーニングでのパフォーマンスを最大にするために選手が自主的に行っていることがわかりました。高校生でありながら、柏レイソルアカデミーに所属するプロフェッショナルとしての強い自覚があることを、データは証明しました。2013年も、4人の選手がトップチームに昇格しましたが、それは、こうしたレイソルイズムが育っているからかもしれません。
ライフログ分析を積み重ねることで、生活のリズムに潜在する傾向を明らかにする。そして問題点が明らかになれば、的確に改善の手段を講じることができます。また、ビジネスやヘルスケア、介護や教育などさまざまな分野への展開が可能です。さらに別のセンサーを使うことで、ビッグデータの新たな切り口も生まれます。これからも日立は、データ・アナリティクス・マイスターを中心にしたビッグデータ・プロジェクトを推進していきます。