2013年8月1日
これまでコンセプトや仕組み、技術動向といった観点から語られることの多かったビッグデータが、本格的な利活用へ向けて動き出そうとしている。その象徴的な分野ともいえるのがマーケティングだ。もともとデータの収集や分析を重視してきたマーケティング領域においてビッグデータ利活用への関心は高く、経営のあり方や成長戦略に大きな“変革”をもたらすと期待されている。そうした中で始動したのが、博報堂と日立による協働プロジェクト「マーケット・インテリジェンス・ラボ」である。博報堂が培ってきたマーケティングコンサルティング力と日立のIT力の融合によるシナジーによって、ビジネスや社会にイノベーションを起こしていくことをめざす。
![[写真] 山之口 援(たすく)氏](/products/dream-real/innovation/004/images/index_p01.jpg)
株式会社博報堂
エンゲージメントプロデュース局
マーケティングプラットフォーム
ソリューション部
部長/エグゼクティブコンサルタント
山之口 援(たすく)氏
![[写真] 安田 誠](/products/dream-real/innovation/004/images/index_p02.jpg)
株式会社日立製作所
情報・通信システム社
スマート情報システム統括本部
副統括本部長
安田 誠
インターネットの利用拡大、スマートフォンやタブレットに代表される多機能なモバイルデバイスの普及、センサー技術の発展などにより、ヒトのさまざまな行動やモノの稼働にともなう膨大なデータが次々に生成されてくる。
これらの多様かつ大量のデータをそのまま使い捨てにするのではなく、情報システムに取り込んで、いま起こっている事象や変化をリアルタイムに判断したり、長期的に蓄積してデータ間の因果関係を分析したりすることで、ビジネスに役立てようという取り組みが活発化している。いわゆる「ビッグデータ」の利活用だ。
なかでも大きな期待が高まっているのが、マーケティング分野での利活用である。
もちろん、これまでもマーケティングの世界では、さまざまな局面でITが活用されてきた。市場調査などから得られたデータを分析し、キャンペーンや広告展開などに生かしていくといった取り組みだ。コンピュータの処理能力の向上とともに、分析できるデータ量や精度も大きく向上してきた。それでも、従来のITがマーケティングの方法論やプロセスまで変えてきたとは言えなかった。
![[写真]](/products/dream-real/innovation/004/images/index_img01.jpg)
周知のとおり、マーケティングには4P(Product:製品、Price:価格、Place:流通経路、Promotion:販売促進)、3C(Customer:顧客、Company:自社、Competitor:競合)、4C(Customer Value:価値、Customer Cost:代価、Convenience:買いやすさ、Communication:伝達)といった多様な要素があり、これらが複合的に作用し合った結果が売り上げやシェアに結びついていく。
そこにある因果関係はあまりにも複雑であるため、「こうすればこうなる」といった将来を予測した手を打つことは非常に困難だ。したがって最終的には、経営者やマーケティング責任者の“勘”と“経験”に基づいた判断が下されることになる。しかし、それらの多くは過去の成功体験からもたらされたものであり、激しく変化していく市場や顧客においては、進むべき道を見誤ってしまうおそれがある。あるいは、せっかくのチャンスに気づかないまま見逃してしまうかもしれない。
ビッグデータは、こうしたマーケティング領域にかつてないイノベーションを起こそうとしているのである。日立製作所 情報・通信システム社 スマート情報システム統括本部の副統括本部長を務める安田誠は、次のように語る。
「ビッグデータによってどんなことが起きているのかというと、一人ひとりのお客さま、すなわち“個”の行動や意識を識別し、リアルタイムに変化や特別なイベントをつかむことが可能になりつつあるのです」
従来のような「30歳代、首都圏に在住する男性」といった大枠なターゲットではなく、個人を単位としたマーケティングが行われるようになり、なおかつ個人からのレスポンスが即座に返ってくるとなれば、その取り組みはもはやセールスと一体のものとなる。さらに、得られたデータは新たな製品開発やサービス拡充へのインプットにもなっていく。
「ヒトにまつわるデータを核としてそこに多様なデータが集まり、相互につながり合って、複合的な情報活用を呼び起こしていくのです。お客さまとのリレーションシップをより深め、従来にないマーケティングプロセスを生み出し、企業のビジネスそのものを変革していく可能性があります」
データの集め方、組み合わせ方によっては個人のプライバシー侵害につながる可能性があるため、クリアしなければならない課題が残っているのも事実だ。しかし、“個”をターゲットにしたアプローチは、大局的なビジネスの潮流であることに間違いはなく、マーケティング領域におけるビッグデータ利活用はますます発展しつつある。