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教育は、あこがれにあこがれる関係づくり。 明治大学文学部教授 齋藤 孝さん

教師であるということ

教師自ら工夫を重ね、自分の教育スタイルを見つけていく。
これができれば、人と人の関係は明るく前向きになり、場がクリエイティブになると齋藤先生は語ります。

学びの場をつくる。それが基本です。

■教えること、学ぶことの基本を教えてください。

齋藤さん教育の基本は、「学ぶ」ということが起こっているかどうかです。先生が教えているつもりでも、生徒が寝ていたら学んでいないわけです。
逆に先生が教えなくても、学びが起こっていれば、それは教育になるわけです。いかに学びの場をつくるかが教育の基本ですね。

学びを起こすためには、いくつか方法があります。ひとつは、子ども自身が「ひとりで学ぶ時間」をつくってやることです。宿題をやる、作文を書くなどがひとりの時間ですね。もうひとつは、グループでディスカッションする「グループで学ぶ時間」です。誰かが発表し、それにプラスして先生が話すのを生徒が聞くことで、学びが活性化します。

しかし、先生が1時間話し続けるだけでは、生徒の意識がだんだん鈍ってきます。一方、生徒たちが1時間ディスカッションするだけでも刺激が足りません。個人とグループ、それぞれ質が違う時間を、授業の中で組み合わせることがより効果的です。

全体の時間をうまく組み合わせるには、時間あたりどれだけの問題を盛り込めるのかという感覚を持つことです。1時間かけて1つの問題に取り組めば、何かじっくり考えた気がする人もいるでしょうが、僕は1時間に1つの問題では少ないと思います。

時間は限られた資源だと考えよう!

■どのように授業を構成すれば良いのでしょうか。

齋藤さんやはりタイムマネジメントというか、ストップウォッチを使うのが一番早いと思います。大学の教職課程で教えているのは、1分間で考え30秒で発表することです。それを教育実習でもやってもらいます。なぜなら時間は限られた資源だからです。

同じ時間にみんなが集まる意味は、その時間に何かを学んで感動したり、喜びを感じたりできることです。そのためにも1時間という授業時間に応じた時間配分や構成を考えることが重要なのです。

例えば、「なぜ明治維新が成功したのか」「なぜ日本は戦争に突入したのか」などの大きな問いを3つぐらい組み合わせて1時間の授業を構成します。このとき、問題を羅列するのではなく、全体を関連付け構造化して捉えることが大切です。

教師は、表面的に見えている要素だけでなく、隠れた要素にも注意して因果関係を想定します。こうして全体の構造から問いを発し、その都度答えを出していきます。誰からも答えが出ない場合、それは問いの立て方がおかしいということになります。だからこそ、発問に工夫を凝らすことが重要です。

教師に求められるのは感じる力。関係する力。修正する力。

■教師に欠かせない能力とはなんですか。

齋藤さん必要なのは、相手の意識がどのぐらい活性化しているかを感じ取る能力です。この子はいまほとんど考えていないなとか、この子はすごく頭が働いているなとか。それに気づかない教師は、やはり向上しません。まずは生徒の頭の中、心の状態が30人が相手でも瞬時にわかるようになることです。

このとき1対30ではなくて、1対1の線が30本あるとイメージしてください。その線の先にいる生徒と繰り返しアイコンタクトし、話しかけ、その線を太くしていきます。すると、次第に関係性が強くなるので、相手の意識が目覚めてきて、学習意欲も高まります。

休み時間にも「○○さん、最近、部活どう?」とか「元気か?」と声をかけると、次の授業のときにはちゃんと話を聞くんですね。基本は、生徒に配る意識の量を多くすることです。意識の量が少ない人、教えることで手いっぱいの人は、そもそも他者に気を配れません。

実際の授業においても、クラスごとに雰囲気が違ったり、生徒ごとに状況が違ったりします。その場合「疲れぎみだから、これをやってみようか」と融通をきかせ、その後、「今日はどうだった?」とフィードバックを受けます。つまり、自分のやっていることを修正する能力も必要です。