中央研究所の構内でも特に貴重なのが「はけ」から流れ出る湧水です。構内の複数の箇所から湧き出た水は、10,000m2ほどの大池に流れ込み、そこから野川の源流となります。
「はけ」とよばれる国分寺崖線は、何万年も前、古い多摩川が武蔵野台地を侵食した跡といわれています。
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![[画像]「はけ」と湧水のイラスト](/environment/showcase/employee/ecosystem/musashino/images/layer.gif)
「はけ」は「関東ローム層」と呼ばれる火山灰の層と、「武蔵野礫層(むさしのれきそう)」と呼ばれる古い多摩川の川底だった層に分かれています。
表面の関東ローム層は水を通しやすく、雨水を通してろ過する一方、武蔵野礫層の下は水を通しにくい粘土層になっています。そのため、武蔵野礫層に水が蓄えられ、たまった水が噴出して湧水になります。
中央研究所の湧水が源流となっている野川の全長は約20km。周囲の湧水を集めて武蔵野台地を走ります。
いうまでもなく、水は生き物が生きていくために欠かせない大事な資源。中央研究所から流れ出た水は、構内の生き物たちだけでなく、流域の生き物たちの命も支えているのです。
![[画像] 構内数か所の湧水は、大池に貯められた後、水路から野川へ―
周囲の生き物たちの命を支えています](/environment/showcase/employee/ecosystem/musashino/images/case_txt06.gif)

「はけ」から湧き出ている水

大池に貯められた湧水は野川へ流れていきます
「はけ」沿いの湧水を集めて流れる野川の流域には、ここ数十年の間に水量が減少したり、すでに枯れてしまった湧水も多数あります。
土地と水の関係はとてもデリケートです。開発が水循環に与える影響も無視できません。
そうしたなかで、中央研究所の湧水が絶えることなく流れ続けているのは、現状維持に努め、自然環境を変えなかったことが大きい、と石井さんはおっしゃいます。




(左) 湧水のそばに見つけたヤゴの抜け殻
(右) ハグロトンボは、川の流水域に生息します

カルガモは家族で泳いでいました

カイツブリは水上に作った巣で抱卵中。もうしばらくしたら、小さいヒナを背中に乗せて泳ぐ姿が見られそうです
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大池のほとりに立つセンペルセコイアは、アメリカ原産のスギ科の樹木で、世界で一番背が高くなるといわれています。
センペルセコイアが日本に入ってきたのは明治の頃。
大きさから、中央研究所の木もその頃に植えられたものと思われます。これからもどんどん高く成長し、シンボル的存在になりそうです。
湧水を絶やさないためには、土の役割が重要です。地面がアスファルトで覆われてしまうと、雨水を浸透することができず、湧水の枯渇を招く原因にもなります。
中央研究所の森を歩いていると、木の下の土がふかふかなことに気付きます。これは人が踏み固めていない自然な状態の土だから。落ち葉や枯れ葉、生き物の死がいなどが、微生物や菌類の働きで腐食し、長い時間をかけて、豊かな土壌が形成されているのです。土中には、目に見えないものも含め、実に多くの生き物たちが活動し、土をふかふかな状態に保っています。

森の土。枯れ葉が積み重なり、腐葉土の状態になっています



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夏、桜の葉が穴だらけになっている姿を見たことはありませんか?なんだか痛々しく見えますが、「すでに役目を果たした葉っぱだからいいんですよ」と石井さんはおっしゃいます。
桜が葉を広げて光合成を活発にするのは、実を成熟させ、来年の芽を準備する春から初夏の間。真夏に、葉はすでに役目を終えているので、あとは地面におち、肥料になるだけです。
細菌や虫に食われると、葉を柔らかくしたり、消化してフンにしてくれるので、葉はより早く朽ちて、肥料になってくれます。つまり、効率のよいリサイクルを行っているのです。
(上) 細菌によって、穴だらけになった桜の葉
(下) 芽。来年に向け、準備はすでに完了しています
構内を歩いていて、私たちの目をひいたのは、そこかしこにあるキノコの姿でした。キノコが木を侵食している?と、にわかに心配になりますが、心配ご無用。石井さんによれば、キノコはすでに死んでいる幹や枝につくことが多いそうです。
森が折れた枝や葉っぱで埋もれてしまわないのも、キノコの分解者としての存在が大きいといえるでしょう。キノコは枝や生き物の死骸の上に生え、有機物をすべて無機物に戻していきます。土に還す役目を果たしているのです。


折れた桜の枝についたヒイロタケ。枝を持ってみると、とても軽い!キノコがすでに分解を始めているおかげです

ウチワタケ

ナラタケモドキ

こちらはカビのように見えますが、キノコの菌糸だそう
今回、自然観察という機会を得て、木々や草花、さまざまな生き物をつぶさに見ていくと、それぞれに役割があって、絶妙なバランスの上に生態系が成り立っていることがわかりました。
環境カウンセラーの石井さんによれば、この森の素晴らしさは、何といっても「湧水が途切れることなく流れていること」とおっしゃいます。元来、自然というのは移ろいやすいもの。淘汰も起こるし、外来の種が飛んでくることもある。そうした多少の変化は受け入れながら、もっと大きな視点、生態系のベースとなる森の「しくみ」に目を向けるべきだといいます。

![[画像] 環境カウンセラーの石井さん](/environment/showcase/employee/ecosystem/musashino/images/picture_30.jpg)
中央研究所から参加した河口さん、染谷さんにとって、今回のような環境カウンセラーの説明を受けながら構内を回るのは初めてのことでした。毎日通う職場ながら、初めて知ったこと、気付いたことがたくさんあったようです。 この森の価値を再認識した今、同僚たちにも伝えて、今後も現状維持に努めていきたいと思いを新たにしていました。
![[画像] 中央研究所から参加した河口さん、染谷さん](/environment/showcase/employee/ecosystem/musashino/images/picture_31.jpg)

中央研究所は「10年、20年後を目標とする研究を行なうとともに、今日の課題にも取り組む」という小平創業社長の理念のもと、1942年に設立されました。
以来、社会イノベーションを軸とした日立グループの幅広い事業を支え、将来の社会ニーズを先取りする情報通信、エレクトロニクス、ライフサイエンス・計測技術の分野で新技術の創生に取り組んでいます。
![[画像] 日立製作所 中央研究所](/environment/showcase/employee/ecosystem/musashino/images/picture_32.jpg)