(2011年3月掲載)
歌手として、いつまでも美しい歌声を聴かせてくださる太田裕美さん。人生の原点は、自然の中で暮らした子ども時代にあるようです。

子ども時代を過ごしたのは、埼玉県春日部市です。今でも緑が多く残る町ですが、昔は駅から家まで一面の田畑の中に、ポツン、ポツンと家が建っているのんびりした場所でした。
学校の授業でも放課後でも、外に出ることが多かったです。春になると、理科の授業では学校のすぐ近くにある小川に出かけておたまじゃくしをつかまえたり、れんげ草をつんで遊んだり…。冬になって雪が降ると、体育の授業でみんなで雪合戦をしたり…。おもちゃも豊富になかった時代でしたが、その分、想像力を働かせて遊んでいましたよ。五感をフルに使って、自然あふれる土地で過ごしたことは、私の人生の大切な原点になっています。
だから、春日部の自然は、私の心のふるさと。今でもふと、子どもの頃に遊んだ風景を思い出します。
歌手としてデビュー後、太田さんにとって人生最大の転機が訪れたそうです。

小さい頃から音楽が好きで、デビューして以来、歌手の道をまっしぐらに歩んできました。その後、結婚し、子どもができたことをきっかけに、人生の転機が訪れたんです。
妊娠という出来事は、私の身体と心に大きな変化をもたらしました。今まで食事に無頓着だった私が、食べたものがそのまま、赤ちゃんの栄養につながるんだと思うと、食べ物の添加物が気になり始めたんです。
たとえばハムのお買いものひとつでも、成分表示を気にするようになりました。スーパーでハムの成分表示を見ると、いろいろな食品添加物が含まれている場合があります。でも当時はまだ珍しかった近所の自然食品屋さんでハムの成分表示を見てみると、「肉・塩」しか書かれていなかったんです。こんなにシンプルな材料で作られる食べ物なんだと知って、すごく驚きました。家族のためにも、安心・安全な食べ物をいただきたいと思ったんです。
それ以来、約20年。近くの自然食品屋さんに通って教えていただいたり、宅配サービスを利用したりしながら、無理のない範囲で有機農法で栽培された食材を取り入れて、毎日の食事を楽しんでいます。
妊娠を機に、“食”を見直された太田さん。子育て中は、子どもたちの未来を考えて社会のできごとに興味や関心が広がり、世界が広がったとおっしゃいます。

食生活を見直したのをきっかけに、社会のこと、子どもたちが暮らす未来の地球のことへと、興味や関心が自然と広がっていきました。
子育てを始めた頃は都心に住んでいました。子どもと一緒に公園に行っても遊ぶ道具が少なく、近所のお友達も誰も来ていなくて、本当にさみしいなぁと感じていました。そこで思い出したのが、緑あふれる春日部で遊んだ子ども時代。息子にも可能な限り自然に触れて育ってほしいと願い、家族で緑の公園が多い世田谷に引っ越しました。
子育ては、“食”と同様、親にとっても“暮らし”を見つめ直せる時間なんですよ。子どもと一緒に、自分たちが生きる上で何を大切にしたいのか、もう一度考え直すことができました。今振り返ると、子どもたちからそのような貴重な時間をプレゼントしてもらったのかもしれないですね。