日立は、「生態系の保全」を環境ビジョンの柱のひとつに掲げ、環境保全行動指針に取り入れています。また、具体的な活動内容を「日立グループ生態系の保全手引き」に定めて取り組んでいます。
企業は、紙や水などの供給や、大気、水、土壌の質や量の調整といった生態系から受ける恵み、生態系サービスに依存しています。この生態系サービスを維持・回復するために、日立では「事業」と「自然保護に関する社会貢献活動」の両面から、生態系の保全に貢献できると考えています。具体的には、事業を通じた貢献として、製品のライフサイクル(原材料の調達、生産、輸送、使用、回収・リサイクル、適正処理)における生態系への負荷を低減する設計・生産活動を推進するとともに、水や空気の浄化など、直接的に生態系を保全する製品・サービスを提供しています。化学物質の管理についても、生態系保全の一環と位置づけ、継続的に適正管理に努めています。また、自然保護に関する社会貢献活動では、社員のボランティア活動による植林や希少生物の生態調査など、生態系の保全につながる活動を推進しています。
生態系と企業のかかわり

2011年3月に発行した「生態系の保全手引き」で、社員に対し、企業活動と生態系のかかわりに関する考え方、世界の動向とその取り組み事例を紹介してきました。社員の認識をさらに深めるため、2012年5月に「事業を対象とした生態系の保全アセスメント」を発行し、事業活動全般に関する取り組みを評価しています。今後定期的にアセスメントを見直し、グループ各社の取り組みを継続的に向上していく予定です。
また、さまざまな分野の企業や有識者が産業競争力の強化のために政策を提言する「産業競争力懇談会」に設けられた、「企業活動と生物多様性研究会」のリーダーならびに事務局を務めました。同研究会は最終報告書で国内外の動向を報告するとともに、生物多様性に配慮するための企業活動のチェックシートを掲載しています。
上記のような企業活動全体に関する取り組みのほかに、個別のプロジェクトの生態系への影響についても、WBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)が開発した「企業のための生態系評価(CEV:Corporate Ecosystem Valuation)」を使って2011年度に2件評価しました。CEVとは、生態系の劣化と生態系サービスから提供される便益との双方を評価することにより、より良いビジネス上の意思決定を行うプロセスを取りまとめた手法です。
ひとつは(株)日立プラントテクノロジーのモルディブにおける水処理事業を取り上げ、水供給関連のインフラ整備が、周辺の生態系にどのような影響を与え、その結果発生する社会的・環境的コストを可視化するとどうなるかを評価しました。もうひとつは、(株)日立ソリューションズが提供する農業情報管理システムGeoMation Farmで、ITの農業への適用による効率向上と環境負荷低減効果の定量化を試みました。今後、さらに効果の検証を進めていく予定です。
WBCSDは2012年2月に、企業の社員が生態系保全と事業活動の関連性を学習できる教材 “Business Ecosystems Training: BET”を公開しました。より多くの日本の企業にBETを活用してもらうために、日立が日本語版を作成し、Web上で公開しています。今後は、日立グループの社内研修用資料として使用したり、この教材が広く活用されるように、情報発信や紹介に努めていきたいと考えています。

ITエコ実験村入り口

村内で撮影したニホンリス
日立製作所 情報・通信システム社では、生態系と生物多様性の保全活動にITがどのように役立つかを実証・検討する場として、神奈川県秦野市に「ITエコ実験村」を開村し、生態系保全・環境コミュニケーション活動を推進しています。2011年度は地域や自治体の関係者、近隣の幼稚園の子どもたちと一緒に、休耕田を再生した田んぼで春には田植え、秋には稲刈りを行いました。また、東海大学などの協力を得て、生きものの生息状況が人の手が入ることによって、どのように変化するかをモニタリングしています。
2012年度も引き続き、地域の方々と生態系保全活動、モニタリングを実施し、センサーとクラウドを活用して、村の温湿度情報をWeb上で表示する「環境情報見える化」実験を行うなど、人とITの両面から活動を進めていきます。