「2012中期経営計画」では、グローバル市場での競争力を高めるため、海外調達比率の拡大、特に新興国における調達活動の強化を経営基盤強化策の一つに定めました。日立グループは、グローバルな調達活動において、サプライチェーンにかかわるすべての人びとの人権や労働に関する基本的権利を尊重するとともに、調達取引先とのガイドラインの共有や積極的なコミュニケーションを通じて、ともにCSR活動を推進しています。
「2012中期経営計画」では、2010年度に36%であった日立グループの海外調達比率を2012年度までに50%とすることを目標に掲げました。この目標を達成するため、「日立グループ調達中期施策」を策定し、グループの調達戦略や安定的な資材調達、サプライチェーンにおけるCSRの徹底など、グローバルに調達パートナーシップの確立を図ってきましたが、この間の事業ポートフォリオ変動等の影響もあり、2012年度の海外調達比率は38%でした。2011年度からは、世界4地域(中国・アジア・欧州・米州)それぞれに現地調達活動を統括する「地域調達責任者」を配し、新興国・地域での調達取引先の開拓を推進するとともに、サプライチェーンがグローバルに拡大するなかで懸念されるCSRリスクへの対応を強化しています。
日立製作所では、調達基本方針として「購買取引行動指針」を定め、サプライチェーンにおけるグローバルな課題を日立グループ各社と共有しながら調達活動を行っています。グループ各社もこの指針に則って活動しています。
本指針は、国連グローバル・コンパクトの原則に則り、雇用と職業における差別の撤廃、児童労働・強制労働の排除も遵守項目としています。
本指針は、当社業務運営に必要な材料・製品・サービス・情報を外部より調達するにあたり、当社の役員及び従業員が遵守すべき行動の基準を示すものである。
1. 購買取引においては「日立製作所企業行動基準」をすべての行動の基本とする。
2. 購買取引先と良きパートナーシップを築き、長期的観点より相互理解と信頼関係の維持向上に努める。
(1)すべての購買取引先に公平に対応し、特定の取引先を有利に、あるいは不利に扱ってはならない。
(2)購買取引先との公正な取引関係を尊重し、正常な商慣習に照らして不当な行為により、取引先に不利益を課してはならない。
(3)購買取引において知り得た購買取引先の営業秘密は厳格に管理し、機密の保持に努める。
3. 広く世界に目を向け、最適な購買取引先を開拓し、競争の維持に努める。
(1)新規に取引を希望する企業等の申入れに対しては誠実に対応し、進んで取引品目等に関する情報を開示する。
(2)継続する購買取引においては、購買取引先の適格性を定期的に見直し、他の取引先より有利な取引の可能性について検討する。
4. 購買取引先の選定は、資材の品質・信頼性・納期・価格、および取引先の経営の安定性・技術開発力等に加え、公正で透明性の高い情報開示、法令および社会的規範の遵守、人権の尊重、雇用と職業に関する不当な差別の撤廃、児童労働や強制労働の排除、環境保全活動、社会貢献活動、働き易い職場作り、ビジネスパートナーとの社会的責任意識の共有等の社会的責任を果たしているかを十分に評価した上で、所定の適正な手続きに準拠して行なう。
(1)明らかに購入する意思のない見積り要請は行なわない。
(2)社内手続きにおいて、購入仕様、契約条件、および受領(検査)を決定する権限と責任は、それぞれ要求元部門・購買部門・検査部門に属する。
(3)購買取引先との契約は、購買部門が当社を代表して行なう。
5. 購買取引に関して、購買取引先から個人的給付を受けてはならない。
2009年改定
日立グループは、「すべての調達取引先と良きパートナーシップを築き、長期的観点より相互理解と信頼関係の維持向上に努める」という調達基本方針に基づき、自由競争の原則に則って、国内、国外を問わず、進んで調達品目などに関する情報を開示し、調達取引先の新規開拓に努めています。
その取り組みの一環として、2012年7月に大連、12月にイスタンブール、2013年3月に高雄、バンコク等で、当該地域における新規調達パートナーの開拓を目的とした「サプライヤーミーティング」を開催しました。今後も、主要マーケットとして位置づけている国・地域を中心に、ビジネスのグローバル化に対応した新規エリアの調達取引先の開拓に努めていきます。
日立グループは、ビジネスのグローバル化に伴いリスクの拡大が懸念されるなか、サプライチェーン上の調達リスクは経営問題につながる可能性が大きく、できるかぎり事前回避が必要であると考えており、リスクの把握・マネジメントを強化しています。
日立製作所は、CSRサプライチェーンマネジメントを強化するため、2011年度に「CSR・グリーン調達センタ」を本社に設置しました。さらに社内カンパニーおよびグループ各社のCSR・グリーン調達委員からなる「日立グループCSR・グリーン調達委員会」を組織し、CSR調達およびグリーン調達の方針と施策を日立グループ全体に徹底できるよう体制を整備しています。
日立では、調達取引先に遵守してもらうCSR行動規範・基準として、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が策定した「サプライチェーンCSR推進ガイドブック」に準拠した「日立サプライチェーンCSR推進ガイドブック」を2009年度に改定しました。このガイドラインは、社内カンパニー・グループ各社とその関連会社の調達取引先約2万1,000サイト(国内約1万1,000サイト、海外約1万サイト)へ配布し、周知徹底を図っています。
調達取引先へ提示した行動規範・基準がどの程度浸透しているかを点検するために、2009年度よりJEITA「サプライチェーンCSR推進ガイドブック」付属のチェックシートを用いて主要サプライヤーに自己チェックを依頼し、その結果を回収しています。2011年度以降は、その対象とする調達取引先の範囲を、中国・アジア地区の企業にも拡大しています。
自己チェック回収状況
| 年度 | 国内調達取引先 | 海外調達取引先 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 2007 | 100 | 0 | 100 |
| 2009 | 132 | 0 | 132 |
| 2011 | 0 | 101 | 101 |
| 2012 | 57 | 41 | 98 |
| 累計 | 289 | 142 | 431 |
日立では、2012年7月より、自己チェックの結果を提出した調達取引先から、中国・アジア地区の調達取引先を抽出し、監査を実施しています。2012年度は、中国の調達取引先10社、韓国の調達取引先1社、インドネシアの調達取引先1社、合計12社のCSR監査を実施しました。実施にあたっては、CSR監査の経験が豊富なJACO(日本認証機関)/DNV*1の支援を受けています。現地法令に精通した現地監査員により、「労働・人権」「安全衛生」「環境」「倫理」を中心に調達取引先を点検しています。監査結果では重大な違反事項はなかったものの、是正が必要な事項があり、調達取引先と協議し改善を図っています。今後も中国・アジア地区サプライヤーを中心に計画的に監査を継続する予定です。

海外調達取引先の製造現場や環境設備の監査状況
日立ではグリーン調達*1に取り組み、環境に配慮したモノづくりの考え方を調達取引先にも共有してもらっています。
地球環境に配慮した部品・製品の調達に関する基本的な考え方や、調達取引先への要望事項を、他社に先駆けて1998年度に「グリーン調達ガイドライン」にまとめ、調達取引先とともにグリーン調達を推進しています。「グリーン調達ガイドライン」では、調達取引先の環境保全活動に関する事項(環境経営体制の確立、認証規格の取得推奨等)や、当社への納入品について環境負荷低減に関する事項(省資源、省エネ、リサイクル、製品含有化学物質の適正管理、適切な情報提供等)を遵守するよう要請しています。
2012年度には、昨今の製品含有化学物質に対する各種規制、特に欧州のEU域内の化学物質管理を規定するREACH規則で指定された制限物質、認可物質、SVHC(高懸念物質)への対応を主眼とした管理対象物質の区分の見直し((1)禁止物質への変更、(2)管理物質の細分化、(3)業界団体リストの採用)を行い、グリーン調達ガイドラインを改訂して調達取引先へ配布しています。
化学物質に関する規制は世界的に強化される傾向にあります。日立では、インターネットを活用したグリーン調達システム(A Gree’Net)を構築し、製品に含まれる化学物質の情報など、環境に関する情報を調達取引先から適時入手し、適切な管理を実施しています。当システムでは、アーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)が公表している報告様式(MSDSplus*1/AIS*2)を調達取引先に推奨し、情報伝達の円滑化・省力化に努めています。

新MMM倶楽部総会での講演の様子
日立では、環境認証を取得し、環境マネジメントシステム(EMS)の構築に積極的に取り組む調達取引先を「グリーンサプライヤー」と称しています。2009年度にはグリーンサプライヤーをメンバーとする新MMM倶楽部*1を発足させ、環境技術の先進事例や環境関連法令などに関する情報を発信して、調達取引先のEMS構築を支援しています。
2012年度は、97社の調達取引先が新MMM倶楽部総会に出席しました。総会では、日立から「日立の環境方針」「環境フットプリント動向」「廃棄物管理」を説明しました。また一般社団法人産業環境管理協会から講師を招き、「製品含有化学物質の規制動向とサプライチェーン情報伝達の必要性」について講演していただきました。会員の調達取引先からも「環境活動の取り組み事例」を発表していただきました。
グループ共通で事務用品を購買できるインターネットシステム「e-sourcing Mall」を運用し、環境に配慮した事務用品の購入比率である「グリーン購入比率」の拡大を図っています。「e-sourcing Mall」では、グリーン購入の対象製品数を増やすとともに、インターネットの購入画面に対象製品を明示して、選択を促しています。2012年度のグリーン購入比率は、92%(前年度比2%アップ)に達しました。
2012年8月、米国SEC(証券取引委員会)は、2010年7月に成立した「金融規制改革法」(ドッド・フランク法)の第1502条に基づき、コンゴ民主共和国とその隣接国(以下、「DRC諸国」)で産出される「紛争鉱物」(武装勢力の資金源となっている、金、タンタル、スズ、タングステンの4鉱物)の製品を使用している米国上場企業に対して、2014年より報告義務を課する最終規則を採択・公表しました。同法は、紛争が絶えないDRC諸国で暴虐行為など重大な人権侵害を行っている武装集団の資金源を断つことをねらいとしています。
日立製作所は米国市場への上場を2012年3月に廃止しており、同法に基づく報告義務はないものの、DRC諸国で問題となっている人権侵害行為に加担する意思はありません。今後も責任ある調達活動を実践するために、グループ各社や調達取引先、業界団体のJEITAと連携して、サプライチェーンの透明性向上を図るとともに、人権侵害を行う武装集団を利することのない鉱物の調達に取り組んでいきます。