モノづくりを事業の中心とする日立グループは、「モノをつくる」ことは「人を創る」ことであると考えています。社員一人ひとりに社会との対話を通じてそのニーズに応える感性を身につけてもらうとともに、新しい分野にチャレンジする精神や夢を実現する技術力を高めてもらうことに注力してきました。日立がこれまで培ってきた知識や技術を、次世代を担う人財の育成に役立てるため、青少年を対象とする科学教育など、さまざまな活動を行っています。

社員といっしょに磁石を製作
日立グループでは、教育支援活動の一環として「日立サイエンス・セミナー」を2011年度から実施しています。子どもたちに理科やモノづくりに興味をもってもらうため、グループ各社が事業を通じて培った技術や知識を、実験や製作作業を交えながら楽しく伝える体験型プログラムです。2012年度は、東京の科学技術館で日立金属(株)、日立マクセル(株)、(株)日立ハイテクノロジーズ、日立製作所が、磁石と乾電池を使ったクリップモーターづくり、電子顕微鏡を用いたミクロの世界の観察、凝集磁気分離技術による浄水、コンピュータによる音声合成といったテーマで連続講座を開催し、延べ70人の小中学生が参加しました。9月に開いた東北・日立グループ主催被災地域巡回イベント「東北みらいづくりDAY with Hitachi in 気仙沼」でも、イベントに来場した親子にクリップモーターづくりを楽しんでもらいました。これからも各社の技術や特徴を生かしてさまざまなテーマを取り上げ、楽しく学べる体験教室を開催していく予定です。

ユニバーサルデザインの考え方を取り入れた
リモコンをデザイン
日立では、製品開発者の視点から見たユニバーサルデザインの重要性を子どもたちに伝えるために、グループの社員ボランティアが小学校などに出向いてユニバーサルデザインの考え方を知ってもらい、体験してもらうプログラムを実施しています。
2005年に日本でスタートしたこのプログラムは、現在、米国、英国でも実施され、これまでに授業に参加した子どもの数は世界中で1万人を突破しました。
英国では、より多くの子どもたちに授業に参加してもらえるよう、ケンブリッジ日立ソフト・エデュケーショナルソリューションズ社などの専門家の協力を得て、教育ツールを開発しました。このツールはホームページ上で無償で提供され、ボランティアが訪問できない学校でも、PCや電子黒板などを利用して教員が同様のプログラムを実施することができます。

タブレットを使ったグループワーク
2011年度から小学校向けの出張授業を実施している(株)日立ソリューションズは、「未来へつながる情報技術」を2012年度のテーマとして、ITと生活のかかわりを考える社会科プログラムを開発しました。
社会科、IT教育、キャリア教育の要素を取り入れた本プログラムは、社会基盤を支えるITに対する子どもたちの興味を喚起し、将来にわたって発揮できるICTリテラシーを身につけてもらうことを目的としており、小学校教諭による事前授業と、有志の日立ソリューションズ社員が講師を務める出張授業があります。
出張授業では、同社の電子黒板「StarBoard(スターボード)」にタブレット端末を連動させ、講師が電子黒板を用いて出題した問題に子どもたちがタブレット端末から回答し、その回答を電子黒板上に表示するなど、双方向で授業を進められるようになっています。
2013年2月には東京都杉並区と江東区の小学校で授業を行い、児童からは「iPadを使ったことで積極的に授業に参加できた」「ITはみんなの夢をかなえる材料になるとわかった」などの感想が聞かれました。本授業におけるタブレットを使った情報活用の習熟度は88%に達し、児童が主体的に学ぶ授業を実現できました。今後も社会の要請や期待に応えるプログラムの構成やコンテンツの開発に取り組みながら出張授業を続けていく予定です。

STEM教育者のための特設Webサイト
「Inspire STEM EDUCATION」
日立ハイテクノロジーズグループでは、電子顕微鏡を用いた理科教育支援活動を通じて、子どもたちにミクロやナノの世界を体験する機会を提供してきました。卓上顕微鏡Miniscope®の製品化により、学校や博物館といった社外施設に赴くことも可能となり、実験装置や科学関連の展示品をトレーラーに搭載して巡回する展示イベントのほか、科学技術分野の人材育成を目的とする米国のSTEM*1教育関連イベントへのMiniscope®の貸し出しやデモンストレーションに協力するなど、活動の範囲を広げています。
特に、米国では、幼稚園・小学校から大学までそれぞれのレベルに応じたMiniscope®を用いた授業カリキュラム案などのコンテンツをWebサイト上で提供するなど、教員に対するサポートを拡充し、将来、科学技術分野で活躍する若い世代の育成を支えています。

15周年記念レセプション
米国の次世代を担うリーダーを毎年4、5人日本に招聘し、各自のテーマに沿った研究をしてもらうプログラムを、米国の外交分野の有力なシンクタンクである外交問題評議会(CFR:Council on Foreign Relations )と提携して1997年度から実施しています。これまでに50人のフェローが来日しました。
2012年度は本プログラム15周年を記念し、藤崎一郎駐米大使(当時)のご協力を得て、15周年記念レセプションをワシントンDCの日本大使公邸にて開催しました。当日は、藤崎大使とCFR理事長のカーラ・ヒルズ氏(元米国通商代表)より、本プログラムが両国の友好に果たした功績を評価していただきました。

フォーラムの様子
2012年5月に第13回「EU—日立科学技術フォーラム」をロンドンで開催しました。同フォーラムは、欧州社会が抱える課題の解決に科学技術がいかに貢献できるかという観点から、官・民・学の有識者が討議・提言を行うもので、毎回テーマを変えて欧州各国で開催しています。
今回のフォーラムには約150人が参加し、「Transport and Mobility toward 2050」をテーマに、欧州委員会運輸総局のロマーツ局長や、国際エネルギー機関(IEA)政策局長のフルトン氏、フラウンホーファー研究所のラデュッシュ博士など各機関を代表する方々に講演していただきました。討議内容は提言書にまとめ、欧州委員会や欧州議会等に配布しました。

ヒンドゥ日立スカラシップ・プログラム
日立製作所は、インドの有力英字紙「The Hindu」と共同で、インドの若手技術者を養成する「ヒンドゥ日立スカラシップ・プログラム」を1960年度から実施しています。毎年インドの官庁や民間企業に勤める技術者を日本に招聘して、日立グループの事業所で技術研修を行っており、これまでに134人が研修を修了しました。
2012年度は、1人が(株)日立プラントテクノロジー(当時)でプロセス遠心圧縮機の設計を、2人が日立事業所で発電所内電気システムを学びました。
2012年12月には、ニューデリーでの取締役会の開催に合わせて、日本大使館と共催した環境フォーラムに歴代のスカラシップ修了者を招待しました。あわせて開かれた同窓会では、日印関係のさらなる協力推進等について、活発な意見交換が行われました。
2012年度の研修修了者からは、技術研修はもとより、日本人と日本の文化から多くのことを学ぶことができ、優れた技術者になろうという自身の目標がこの研修を通じて明確になった、日立で情熱・ひたむきな姿勢・責任感という人生において大切なものを学んだといった感想が寄せられました。
また過去の修了者からも、日立で学んだことがその後の職業人生において大変役立っているという声を聞いています。