日立は、「利用品質」「アクセシビリティ」「(製品の)ライフサイクル」の三つを基本テーマとして、ユニバーサルデザイン(UD)に取り組んでいます。利用品質とは、使いやすさや気持ちよさを感じさせる製品の品質のことです。また、アクセシビリティとは、製品やサービスがどのくらい多くの人にとって利用可能かを示す指標を、ライフサイクルとは商品選びから廃棄までのすべてのステージを指します。
この基本的な考え方に基づき、すべての局面でユーザーや有識者などの声を取り入れながら、多様なユーザーの行動特性や認知特性に関する基礎研究を行い、製品に必要な要求項目をガイドライン化し、製品開発に反映させています。また、開発で得られた情報をデータベース化し、グループで共有するとともに、社外へも情報を発信し、標準化活動や啓発活動を推進しています。
お客様が製品に興味を抱いたときからユーザーであると考え、使いやすさや役に立つ機能、環境との調和、安全性、メンテナンスなど、購入前から廃棄までの全シーンをUDの視点からとらえるようにしています。同時に、ユーザー一人ひとりの心身機能、生活スタイルにフィットさせ、いつまでも愛着をもって使用していただける製品を提供していきたいと考えています。
また、製品そのものだけではなく、取扱説明書のUDにも力を入れています。例えば、NPO法人神奈川県視覚障害者情報雇用福祉ネットワーク(View‐Net神奈川)と共同で取扱説明書のテキストファイル化に取り組んでいます。写真、図、表などを含む全文を、音声読み上げソフト(視覚障がい者向けスクリーンリーダー)で読み上げられるように構成したテキストファイルにし、それをWebに公開して、視覚障がい者が製品を安全かつ容易に使えるようにすることをめざしています。このファイルの作成にあたっては、視覚障がい者に実際にテキストファイルの音声を聞きながら操作・検証してもらい、そのご意見に基づいて再編集しました。この取り組みは、2013年2月に神奈川県の「第5回神奈川県バリアフリー街づくり賞」に選定され、View‐Net神奈川とともに神奈川県知事から表彰を受けました。
このほかにも、製品の使い方をわかりやすく紹介した「使いかたDVD」を製品に同梱したり、操作ボタンに点字表記を採用するなど、多機能化する家電製品を高齢者や障がいをもつ方々にも使いやすいようにするため、さまざまな取り組みを行っています。

使いかたDVD

音声テキストファイル作成のための操作・検証
公共機器・システムは、施設や駅、鉄道、病院などの公共空間で、子どもを含む不特定多数の人が個別にまたは同時に利用します。加えて、公共空間での機器・システム利用シーンを考えると、利用者のセキュリティやプライバシーの保護、安全対策など、使い勝手以外の機能にも配慮することが重要です。
例えば、現金自動取引装置(ATM)では、さまざまな利用者が特別な気遣いなく、同じように使える機器をめざして、「人が中心」という考え方に基づいたきめ細かい配慮と工夫を取り入れています。本体の外枠に触れると通帳やカードなどを出し入れする媒体出入口へ手を自然に誘導するアーチ型のガイドフレームを採用したり、車いすを寄せやすいように足下のスペースを大幅に拡大したりしています。また、色覚の個人差を問わず、できるだけ多くの方に見やすいように配慮した表示画面は、NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構のカラーユニバーサルデザイン認証*1を取得しています。

次世代現金自動取引装置「AKe-S」

媒体出入口に自然に手を誘導するアーチ
型のガイドフレーム

車いすを寄せやすい足下のスペース

色覚の個人差に配慮した表示画面

「画面の色作成支援ツール」画面の一例
Web・情報システムは、すべての人にとって、さまざまな情報を入手したり、コミュニケーションを図ったりするうえで欠かすことができないものです。特に身体的な制約があって情報にアクセスすることが困難なユーザーにとって、アクセスのしやすさやわかりやすさ、確実なセキュリティの確保は必須の条件です。
Web・情報システムについては、アクセシビリティを確保するためのガイドラインである Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)2.0*1に沿って、UDに取り組んでいます。見やすい画面の配列や、画面を読み上げるスクリーンリーダーへの対応、利用者が文字の大きさや色を変えられる機能などはその例です。
「CSS3*2で表示する画面の色作成支援ツール(CSS3ジェネレーター)」は、グラデーション、影、光彩、文字の縁取り、角丸などの表現が可能なCSS3を用いて、色覚特性に依存せず、識別可能な色を容易に選択でき、画像を使わなくてもより多くの人に見やすい画面を効率的に作成するためのツールです。このツールは、画面のデザイナーやシステムの開発者に利用していただくために、2012年7月19日から無償で公開しました。