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社会貢献活動

【日立ボランティアセミナー】
第48回「日本の原風景『棚田』の保全を学ぶI~田植え編~」

2014年5月10日

  • 環境
  • ボランティア支援

日本の原風景である「棚田」。里山風景のひとつであり、その景観はどこか懐かしさを感じさせてくれます。棚田は山の斜面や谷の傾斜地に階段状につくられた水田で、先人たちの知恵や苦労の結晶であり、地すべりや洪水を防ぎ、地下水を蓄えるなどの機能も持っています。そして、そこは生物多様性の宝庫でもあります。しかし近年は里山の過疎化や農家の高齢化、食生活の変化による米の消費量の減少などにより、耕作放棄された棚田が増え、棚田と一体となっている周辺の雑木林も荒廃が急速に進みつつあります。
そこで今回は棚田保全活動に取り組んでいる特定非営利活動法人 棚田ネットワークのご指導のもと、栃木県茂木町にある岩ノ作棚田にて、日立グループ従業員とその家族も含め総勢27名で棚田・里山保全について学び、田植えや雑木林の整備作業を体験しました。

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左:茂木町岩ノ作棚田 右:田植え体験

棚田の応援団~NPO法人 棚田ネットワーク~

棚田ネットワークは棚田の荒廃に危機感を感じた都市住民が中心となってスタートしたNPO法人です。棚田は平地にある田んぼに比べ『労力は2倍、収穫は半分』といわれ、政府による減反政策がはじまった1970年代より、棚田の転作・放棄が多くなりました。当時と比べ今では40パーセント以上の棚田が耕作放棄されているといわれています。荒廃が進む棚田を保全するためにはどうしたらよいかと、1995年に新潟県で「たんぼシンポジウム」、高知県で「第1回全国棚田サミット」が開かれ話し合われました。1995年は棚田復興運動の始まり(棚田ルネッサンス)とされ、同じ年に棚田ネットワークの前身団体である棚田支援市民ネットワークが立ち上げられました。

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NPO法人 棚田ネットワーク理事 安井氏

現在は「棚田地域での農作業体験・援農活動や、都市地域での棚田の多面的機能に関する普及活動などを行い、都市と農山村の人々が相互に理解し協力し合える関係を作り上げることによって、持続可能な循環型社会を創出する」ことを目的に、棚田のデータ収集、地域間のネットワーキング、体験プログラムの提供、耕作放棄地の棚田の復田や農作業支援など、棚田の応援団としてさまざまな棚田支援活動を行っています。

茂木町岩ノ作棚田と棚田・里山保全について

今回訪れた茂木町岩ノ作棚田には全部で約180枚の田んぼがあり、総面積2ヘクタール、典型的な盆地で、まわりは山で囲われています。わかりにくい場所のため、昔は年貢を逃れるための『隠し田』だったのではないかと言われているそうです。

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左:岩ノ作棚田の入り口での説明の様子
右:雑木林での説明の様子

「棚田は今、過疎化・高齢化問題のほかに『耕作放棄』という問題に直面しています。岩ノ作棚田も30パーセントほどが耕作放棄地となっています。日本の耕作放棄地や休耕している田んぼでも、世界の食料事情などにより、いつかお米を作らなくてはいけない時期がくるかもしれません。荒れた田んぼを元に戻すのは容易ではありませんので、その時のためにも、今お米を作らなくても、すぐに米作りができる田んぼに戻せる方法を10年くらい前から検討していました。その結果、耕作放棄地の対策のひとつとして、お米を作らなくても水をはっておくという方法が有効だとわかりました。3年に1回ほど耕して水をはっておくと、お米を作りたいときにいつでも作ることができ、さらにこれまで姿を消していた生き物たちが戻り、種類や数も増えることまでわかりました。棚田は生物多様性にもとても良い環境なのです。  
また、岩ノ作棚田の水源は、『絞り水』という山からの湧き出し水であり、池や大きな川から水路をつくって水を引いているわけではありません。絞り水だけで夏の間の棚田にずっと水を供給しています。そのためには、絞り水を枯らさないように山や雑木林の手入れが必要となります。昔は山で薪や炭などの燃料をとっていたのですが、今は家庭用の燃料は電気やプロパンガスであり、山の手入れもあまりできていません。棚田を保つためには、周辺の山や雑木林の手入れも必要なのです」と、安井氏は教えてくださいました。

田植えと雑木林の整備作業体験!

まずは棚田を身体で感じてもらうため、地元の農家の皆さまにご指導いただきながら田植えを体験し、午後からは棚田の水源林ともなっている周辺の雑木林の整備作業として、篠竹の除伐やコナラなどの剪定・間伐も行いました。

田植え体験

裸足で田んぼの中へはいり、ロープにそって一列にならび苗を植えていきました。通常は苗を3、4本一緒に植えますが、成長にどのような違いがあるのかを確認するために、実験として苗を1本ずつ、2本ずつ、3本ずつの列もつくりました。9月の稲刈りの際には、成長の違いを確認する予定です。

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田植え体験の様子

篠竹の除伐作業

裸竹の特徴は純林(一種類の樹木の林)になりやすく、他の植物にも影響を与えてしまいます。篠竹を刈ることにより、日も差し込むようになり、他の植物も育ちます。そうすると、落ち葉がおち、腐葉土になり、そして梅雨時期などの雨を吸い込んで、少しずつじわじわと絞り水となっていきます。

コナラなどの整備作業

コナラなどの切り株に、翌年の春に横から新芽が10本くらい生えてきます。これを「ひこばえ」といいますが、この生えてきた新芽10本をほったらかしにしてしまうと小さい枝ばかりになり、日も差し込まず健全な林になりにくくなります。新芽のうちに3、4本を残して他を切ると、残された新芽は健やかに成長し、ちょうど20年くらい経つと切り頃の大きさに成長します。

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雑木林整備の様子

参加者からは、「田植えの体験だけでなく 米の話、生態系の話、里山整備の大切さなど学ぶことが多く、子どもにも良い経験になったと満足しています」「棚田と森林がつながっていると言うことや、耕作放棄されてしまっている棚田があると言うこと等、初めて知ったことがたくさんありました」「自然の美しい風景と棚田と里山について、子供たちへ残していく努力を私たち大人がしていかなければいけないと思いました」「日本の米や農産物を大切に守っていきたいと思い、里山の魅力も体感することができました」などの感想が寄せられました。

事務局より

当日は天気にも恵まれ、カエルやアメンボ、その他めずらしい植物も観察することができました。行きのバスの中では安井氏より、棚田米は昼と夜の寒暖差が大きいことによりじっくりと成熟するため美味しいことや、お茶碗一杯のお米は約3500粒くらいであることなど、日本の米作りの現状や棚田保全についてクイズを交えながら楽しく教えていただきました。現地での作業に加え、大人も子どももより知識が深まった一日となりました。自然豊かな茂木町には多くの種類のトンボがおり、準絶滅危惧種のトンボも生息しているのだそうです。

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作業後の記念撮影

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左:茂木町農家の皆さま 右:棚田にいたアマガエル

田植え体験の後には農家の方々から、この時期でなければ味わえない採れたてのタケノコやフキの煮物、棚田で作られたもち米のおにぎり、キュウリの漬物を差し入れしていただきました。青空の下、美しい棚田を眺めながらみんなで食べる昼食は格別でした。
棚田ネットワークのスタッフの皆さま、茂木町の農家の皆さま、ありがとうございました。秋には同じ棚田での稲刈りを予定しています。

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農家の方からの差し入れ

連絡先

特定非営利活動法人 棚田ネットワーク
東京ボランティア・市民活動センター

事業所・グループ会社 日立製作所
講師 特定非営利活動法人 棚田ネットワーク 安井一臣氏、上久保郁夫氏、小川順子氏、茂木町農家の皆さま
進行 東京ボランティア・市民活動センター 若林明子 氏
場所 栃木県 芳賀郡 茂木町 岩ノ作棚田
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