日立では知的財産(知財)活動を事業戦略の一部として重視しています。このため、グローバルな特許網の構築に努めるとともに、社会イノベーション事業に注力した知財活動を推進しています。また、模倣品対策を通じて日立ブランドの保護を図るとともに、国際標準化活動を通じて市場の拡大を図っています。
2010年に発表した2012中期経営計画では、海外売上高比率50%超を目標としました。これに先駆けてグローバルな特許網を構築すべく、2009年度に47%であった海外での特許出願比率を2012年度までに55%に引き上げることを目標として活動してきました。2011年度の実績は55%で、目標を1年前倒しで達成しました。海外での特許出願については、特に中国・アジアなど新興国での特許出願・権利化を強化しています。また、ひとつの発明を多数の国・地域で効率的に出願するため、国際特許出願を活用しています。
事業戦略を知財面からサポートするため、特に次のような社会イノベーション事業に注力した知財活動を行っています。
事業を守るための知財活用が重要と考え、市場ニーズ、技術的潮流などに即応し、日立の「強み」である技術を中心とした特許網を構築しています。この特許網により他社が日立の「強み」とする技術を採用することを牽制し、他社との差別化を図ることで事業を守っていきます。また、場合によっては特許網を用いて他社とクロスライセンスを結び、日立が他社の知財による制約を受けることなく事業を展開できるようにしています。
充実した発明報奨制度により研究・開発の第一線で働く社員の発明意欲の向上を図っています。報奨金額の基準を設定し、社員に公開しているほか、支払われた報奨金に関する問い合わせや意見聴取のための仕組みを設けるなど、公正で透明性のある制度運営を行っています。
例えば、発明者と特許の実施部門とのコミュニケーションを促進する「発明情報システム」を構築し、発明者自身が実施状況を事業部門に問い合わせたり、実績報奨金の算定根拠を確認できるようにしています。
そのほか、2005年度から社長表彰制度である「実績報奨金年間トップ100」を実施し、2006年度からは35歳以下の発明者を対象に、入社後5年間の「出願報奨金受領金額上位50」という表彰制度を設けています。
日立は、「他者の知的財産権を尊重」するとともに、他者に対しては「当社の知的財産権の尊重」を求めています。他者の知的財産権については、新製品・新技術の研究・開発等に先立ち事前調査を行うことを社内の規則*1に明記し、知的財産権を侵害しない製品づくりに努めています。また、他者の知的財産権を使用する場合は、ライセンスを取得しています。一方、当社の知的財産権を侵害する企業があれば、交渉を通じてライセンスの取得を促し、必要に応じて法的手段に訴えています。
日立ブランドを装った模倣品の製造や販売、類似商標の不正な出願や登録など日立の商標権を侵害する行為に対しては、日立ブランド価値の維持・向上の観点から、毅然とした姿勢で対策を講じています。日立がグローバル企業としてさらなる成長を遂げるためには、日立ブランドを商標権で守り、第三者の侵害行為から保護することが必要です。現在、日立ブランドを200以上の国・地域で商標登録しています。
模倣品対策としては、模倣品製造業者、流通業者、卸売業者、販売業者に対する法的根拠に基づく警告や摘発などが一般的ですが、「需要者がいるから供給者がいる」という観点から、需要側である消費者に対しても模倣品に関する啓発活動を行い、“需要と供給”の両面から対策を講じています。
侵害対策には、各国・地域の警察や行政機関の協力も必要不可欠です。日立では、日本の経済産業省や外務省をはじめとする関係当局・機関はもとより、各国・地域の警察や行政機関など関係当局を訪問し、意見交換会やセミナー、ワークショップなどを積極的に開催し、より効率的で効果的な侵害対策を講じています。
IEC(国際電気標準会議)の副会長をはじめとする国際標準化団体の要職に人財を輩出するなど、国際標準化に積極的に参加しています。また、生体認証や暗号などの分野で日本開発技術の国際標準化に貢献しています。
例えば、環境配慮型データセンタのIT機器・空調連携制御インターフェースについて、Ecma International(情報通信技術に関する国際標準化団体)の技術委員会議長として標準化活動を主導し、2011年12月のEcma規格としての発行に貢献しました。スマートシティの分野においても、日本の基準認証イノベーション技術研究組合の一員として、都市インフラ評価指標の標準化作業がISO(国際標準化機構)の作業項目となるよう活動し、2012年2月の可決に貢献しました。
標準化活動の功績が評価され、日立製作所は2011年度、経済産業省が主催する工業標準化事業表彰において、「経済産業大臣表彰」を受賞しました。
知財活動を強力に推進するために、高度なプロフェッショナルスキルを有し、かつ事業のグローバル化に対応できる人財の育成に努めています。知的財産権本部は、98人の弁理士、6人の米国・英国の弁護士(2012年4月1日現在)を擁し、さらに海外実務研修制度として、毎年4〜6人を米国、欧州の特許法律事務所に派遣しています。