
日立グループは、現在、事業の中心課題を「社会イノベーション事業」とし、これをグローバル市場で展開していくことにグループ一丸となって取り組んでいます。私たちが、自らの事業を「社会イノベーション事業」と呼ぶのにはいくつか背景があります。
その一つは、これまでのように社会のインフラストラクチャーに必要だとされてきた機器やシステムを提供するだけでは、社会が抱えるさまざまな課題を解決するには不十分だと考えられることです。個々の製品やシステムの機能、性能を真剣に磨き上げ、しっかりつくり上げることは、もちろん大変重要なメーカーの責任ですが、今、世界の多くの国々や地域が抱えている課題は、そうした個々の機器やシステムだけでは本当の解決にならない複雑な課題であることが多くなってきています。例えばエネルギー問題。多くの国々、地域で経済発展に伴い電力が不足してきています。その対策として大型の高効率火力発電所を建設することは一つの解決策ですが、同時に、火力発電で消費する燃料が排出するガスに起因する環境問題をしっかり検討し、環境負荷の最小化に努め、周囲の環境との融和を図らなければなりません。それが環境負荷の観点からみて許される限界を超えているようなことがあれば、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーを組み合わせる必要があるでしょう。しかし、再生可能エネルギーは、いわばお天気次第ですから、大きな変動電源でもあります。送電、配電系統に及ぼす影響についてしっかり対策を講じておかなければ、安心して使える安定的な電力エネルギーは供給できません。こうした複雑な課題の多くは日立グループだけで容易に解決できるものではないのですが、課題をできる限り深く理解し、お客様やパートナーと共にこれを解決する道を探ることが社会イノベーション事業の基本的アプローチです。日立は世界の国々や地域の方々と密接に対話し、日立の技術を徹底的に活用して社会的な課題の解決に努めてまいります。
第二の背景はイノベーション、すなわち革新ということです。社会の複雑な課題を解決するには、その課題の本当の姿をできる限り明確にすることが必要ですが、これは容易なことではありません。社会の課題ですから多くは政治的、経済的、歴史的な要因があります。そのために、社会のさまざまな現象をさまざまな角度からデータベースとして蓄積し、解析する技術が発展してきています。いわゆるビッグデータ(Big Data)やデータアナリティクス(Data Analytics)と呼ばれる技術です。この技術を総動員し、あわせて人間の行動を経験的、客観的に分析する手法を適用して、社会、ビジネスの現場に革新(イノベーション)をもたらすには多くの課題を乗り越える挑戦が必要です。こうしたことに日立はグループをあげて取り組み、事業を通じて、世界の多くの国々や地域で多くの方々との信頼をつくり上げていくことが事業を成長させていくことだと信じています。日立グループは「社会イノベーション事業」そのものを通じて社会に貢献していきたいと考えています。すなわち、「社会イノベーション事業」が持続可能な社会をつくり上げていく事業であるということでもあります。
本サステナビリティレポートでは、持続可能な社会をつくり上げていくという観点から日立グループのさまざまな活動をご紹介しています。日立の経営戦略とCSR、事業を通じた社会への貢献を示す多様なソリューション事例、人権の尊重やダイバーシティの推進、生産活動に伴う環境負荷の低減活動、世界各地での企業市民としての活動など、日立グループの活動は世界各地、多方面にわたっていることがおわかりいただけると思います。
日立は、事業展開そのものが持続可能な社会をつくり上げていくことに通じるよう、これまでも、そしてこれからも努力していきたいと考えています。
株式会社 日立製作所 執行役社長
中西宏明