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サステナビリティ ハイライト イノベーション2015 Case2:交通インフラの取り組み Case2:交通インフラの取り組み

1841年建設の高架橋(英国)

世界各地で過密化や老朽化が進行する都市の動脈を支える

交通インフラに関する社会課題

世界各国で都市への人口集中が進んでおり、2014年時点で世界人口の54%が都市部に居住しています。今後、先進国の経済が縮小する一方で、インド、ブラジル、インドネシアといった新興国は経済成長を続け、人口も増加、開発の進む都市部への集中はさらに加速し、2050年には世界人口の66%が都市に住むようになると予測されています。都市化を支える基盤として、目的地へ効率的に移動できる交通インフラへのニーズが高まっていますが、多くの新興国では鉄道などの整備が急速な都市化に追いつけない状態です。このため、慢性的な交通渋滞や交通事故の増加、交通関連の大気汚染による環境の悪化などが大きな課題となっています。都市の拡張能力や輸送能力が限定されると、経済成長は圧迫されることになります。
交通インフラに関する問題は先進国にも存在しています。都市交通システムを先駆的に導入した先進国では、既存インフラが老朽化しており、人口動態のシフトと産業基盤の変化に対応して、既存インフラを改善し、再編成する必要が生じています。
日立は、これらの新興国、先進国を含めた国や地域を支援し、持続的成長の中核となる交通インフラを効果的、効率的に維持するソリューションを提供します。

メガトレンド

  • 世界中で進展する都市部への人口集中
  • 経済発展に伴う大気汚染の悪化
  • 人口動態の変化に対応した交通インフラの整備

日立のアプローチ

健全で持続可能な都市の発展に貢献する鉄道システムを提供

現在、世界各地の都市圏において人とモノの輸送需要は増大しており、それを支える鉄道システムへのニーズが高まっています。しかし、経済面から安全、環境まで各地域が抱える課題はそれぞれ異なっており、適切なソリューションを提供するには、多様なニーズに対応し得るグローバルな体制が必要となります。
日立は世界各国のお客様が直面している課題をしっかりと把握するとともに、それぞれのニーズにきめ細かく対応しながら最適なソリューションを提供することで、都市の持続可能な発展と、都市住民の快適で利便性の高い生活に貢献することをめざしています。
日立は、安全性能と環境性能を両立させた車両から、安全かつ円滑な運用を確保する運行管理システム、ピークレベルを維持する保守・メンテナンスサービスなどまで、鉄道事業に関するさまざまな製品とサービスを取り揃えており、お客様のニーズに一括して対応するトータルなソリューションの提供をめざしています。
世界屈指の安全性と効率性を誇る新幹線などの車両製造で磨かれた高度な技術をはじめ、日立は常に最先端の技術を開発しており、それらを鉄道事業に投入しています。運行管理システムや保守・メンテナンスにおいても鉄道メーカーの中では豊富な実績を有しており、こうした技術やノウハウが日本の誇る秒単位の運行システムや完璧な安全運行実績を支えています。
日立が鉄道ソリューションの提供で最優先しているのが安全です。業績評価指標においても安全性をトップ項目としており、開発においては1カ所に不具合が生じても他のシステムに影響を及ぼさないよう合理的な設計を徹底しています。安全性に注力することは、各国・地域における規制要件を確実に遵守するだけではなく、お客様の生命と財産を何よりも優先する姿勢によってお客様の信頼を得ることにつながります。
また日立は、地球環境や生活の質向上に配慮しながら、技術革新およびシステム革新を推進しています。長年にわたる研究開発の成果として、軽量かつ安全基準に適合した車両を製造し、再生材料の活用を拡大し、騒音低減による静かな運行を実現したことは、乗客のみならず、周辺住民への影響を最小化することでもあります。さらに、電化区間では架線からの電力供給で走行し、非電化区間ではディーゼルエンジンまたは蓄電池(最先端の回生システムにより充電)からの電力供給に自動的に切り替わるハイブリッドシステムでも業界をリードしています。運行および信号システムの技術統合もグローバル・リーダーとして推進しています。
お客様は車両重量や環境性能、保守・メンテナンス、接続される輸送網との適合性まで、さまざまな条件を考慮して鉄道ソリューションを選択します。日立は、都市型軽量軌道から都市間鉄道、国際高速鉄道ネットワークに至る分野において、専門知識と培ってきたノウハウを提供しています。
鉄道システム事業において、日立は英国に統括拠点を置いた自律的経営体制を構築、世界各地の市場に向けグローバルな見地からのソリューション提供を可能にしました。現在、鉄道関連事業を32カ国で展開しており、2014年度時点では世界28カ国で鉄道システムを提供しています。

Case1:老朽化した英国の都市間高速鉄道をリニューアル

鉄道発祥の地である英国は、列車と鉄道網に関して長い歴史を刻んできました。この歴史の重みこそ、日立がグローバルな鉄道システム事業の統括拠点として英国を選んだ理由の一つです。鉄道事業をグローバルに拡大するための基盤を英国に置くことで、欧州や中東といった重要市場へのアクセスが可能になりました。
19世紀のビクトリア朝時代に建設された英国の鉄道インフラは、改良と刷新を絶えず繰り返してきました。現在進められている軌道の電化や信号システムの刷新に加え、駅、プラットフォーム、軌道、橋梁などすべての設備の更新は、英国の鉄道システムが長い将来にわたって経済活動の重要な役割を担うために不可欠な取り組みです。
日立は新幹線や他の高速鉄道網で培った鉄道技術をベースに、英国の鉄道インフラに柔軟に対応できる鉄道車両を開発しています。英国都市間高速鉄道計画(IEP)は、西はスウォンジからプリマス、北はスコットランドの主要都市へと延びる壮大な事業であり、開発に際しては、安全性能と環境性能の向上を優先事項に取り組みました。
入念な実証試験を繰り返しながら導入した安全対策は、欧州の規制に完全に準拠したものです。安全性は日立が最重要と位置づける業績評価指標であり、鉄道車両の安全性能はもちろん、生産工程をはじめあらゆる業務で重要視されています。お客様がパートナーを選ぶ際にも安全は最も重要な基準であり、英国鉄道史上最大のプロジェクトであるIEPにおいて、老朽車両の全面的なリニューアルと保守・メンテナンス事業を担う企業として日立が選ばれた最大の理由でもあります。
また、環境負荷を最大限低減するため、車両重量の軽減、空気力学特性の改善、再生素材の使用比率拡大にフォーカスしました。騒音の少ない列車はエネルギー効率に優れた列車でもあります。レール騒音と空気抵抗を低減する設計は、CO2排出と運行コストの削減につながります。さらに、移動時間の大幅な短縮にも成功しました。例えば、ロンドン・アシュフォード間の所要時間は、80分から最短で37分にまで短縮されました。
室内においては、人間中心設計に基づく最先端のインテリア工学を導入し、乗客の乗り心地を損なうことなく、座席定員数を最大化しました。また、英国運輸省当局や列車運行会社と緊密に連携し、これらの優れたデザインをユニバーサルデザインやその他の関連規制に確実に適合させています。
鉄道システムは車両だけで成り立つものではありません。IEPにおいても、路線信号システムと車上システムを統合したインテリジェントシステムを提供しています。他の列車がどの位置を走行しているのかを把握できるため、ブレーキの使用頻度を低減し、エネルギー損失の削減を実現しました。今後も、日立は車両、保守・メンテナンス、ネットワーク化された列車運行を可能とするITサービスを含めたトータルなソリューションを提供していきます。
完全電化区間でも自律的に運行できるハイブリッド車両により、幅広い選択が可能になるなど、英国の鉄道システムは柔軟で適合性の高いものへと進化しました。日立の完全一体型アプローチは、多様化する英国輸送市場において、必須の戦略であったことが証明されたといえます。
信頼性の高い最先端の鉄道網が創出されたことは、英国経済を根底から刺激するものであり、日立はその重要な役割を担っていることを誇りに思っています。2007年に完成したアシュフォード車両保守センターと、IEP向けに建設されている新たな駅は、英国鉄道向けの車両製造と保守・メンテナンス事業を推進する主要拠点になります。熟練したエキスパートに数百もの職務を創出するとともに、地域および国家経済を押し上げる効果も期待できます。日立が欧州向け車両生産拠点を建設するニュートン・エイクリフでは、近隣地域で進められているテクニカル・カレッジ設立への資金援助を行っています。このテクニカル・カレッジでは2016年以降、年間600人の若者を育成する計画であり、技術者の不足を補うことで、英国における持続的な鉄道事業の推進に貢献します。

写真
英国都市間高速鉄道計画向けClass800車両

Case2:交通事情の改善に向けてベトナム初の都市鉄道をトータルに提供

急速な経済成長を続けるベトナム。最大の都市であるホーチミン市では、人口が急激に膨れ上がったため、慢性的に激しい交通渋滞が発生しています。バス以外に公共交通機関がなく、市民の多くがバイクや自転車で移動しており、さらに数年前から自動車も急増している影響で道路交通事情は一層悪化し、交通事故や大気汚染などさまざまな問題が発生しています。
この交通問題を抜本的に改革し、環境の保全を図る対策として導入されたのが、ベトナム初の都市鉄道となるホーチミン市都市鉄道1号線の建設事業です。日立は鉄道システムをトータルに提供できる総合力を評価され、車両製造をはじめ、信号システム、列車無線などの通信システム、受変電設備のほか、ホームドアや券売機・改札機、車庫設備など11のサブシステムと、開業後5年間の保守事業を一括で受注しました。
また、開業後はホーチミン市に設立される事業者が都市交通を運営する予定ですが、現地スタッフが直ちに信号システムや軌道、架線といった設備の維持に携わることは現実的に難しいという背景があります。日立は、5年間の保守事業の契約期間に技術を移転し、人材育成の役割も果たします。さらに、ホーチミン市は電力インフラが十分ではなく、省エネルギーのため、回生インバータ装置を導入するなど環境に配慮した電源設備の構築にも取り組んでいます。

ホーチミン市都市鉄道1号線の予定図

1 ベンタイン(0km)から、2 オペラハウス(0.7km)、3 バソン(1.7km)、4 バン・タイン公園(3.5km)、5 タンカン(4.4km)、6 タオディエン(5.6km)、7 アンフー(6.5km)、8 ラックチエック(8.2km)、9 フォックロン(9.7km)、10 ビンタイ(11.1km)、11 トゥードゥック(12.8km)、12 ハイテクパーク(15.2km)、13 ナショナル ユニバーシティ(16.8km)、14 スオイティエン(18.8km)を経て、ロンビン車両基地までの19.5km。2から3までは地下軌道・駅、3から5までは高架軌道・駅。

Case3:渋滞緩和の切り札は安心・快適なモノレールシステム

韓国では、首都圏や地方大都市の人口過密化と自動車の増加によって交通渋滞が深刻化しています。問題解決の手段として、自動車に比べてCO2の排出量が少ない鉄道システムが見直され、中でも建設コストが比較的安く、環境負荷も少ないモノレールなどの軽量電鉄の導入計画が各都市で進められています。
約250万人の市民が生活する韓国南東部の中心都市・大邱広域市も同様の問題を抱え、豊かな緑や河川を有する環境の保全や省エネルギー化の解決策として、日立の跨座型モノレールシステムが選定されました。日立は東京モノレールをはじめとする日本国内の7路線や、中国・重慶やドバイなどでグローバルにモノレールシステムを提供してきた実績があります。今回の選定は数多くの実績とモノレールの技術、信頼性が高く評価されたものです。
韓国初の都市交通モノレールシステムとなる大邱広域市都市鉄道3号線は、市の北西部から南東部にかけて全長24km、30駅の区間を運行する路線で、28編成84両の車両で構成されています。ドライバーレス自動運転システムを採用する一方で、万が一の際に乗客の安全を確保するための設備として、車上スプリンクラー装置や、高い軌道から安全に脱出できる装置を整備するとともに、安全要員として添乗員を1名乗務させる運用を計画しています。また住宅地を走る際には、自動的にガラスが曇るミストグラス装置で、周辺住宅へのプライバシー侵害を抑制するなど、先進の技術が取り入れられています。なお、プロジェクトの運営においては地域経済復興に配慮し、日立コリアや、現地企業との協業を通じ、韓国産製品も積極的に活用しました。
大邱広域市都市鉄道3号線は2015年4月23日に開業し、市内各施設へのアクセス改善が見込まれるほか、モノレールそのものの観光資源化など、さまざまな波及効果も期待されています。

今後の展望

未来の「スマートシティ」をつなぐ完全一体型の鉄道輸送ソリューションを提供します

日立は、鉄道車両製造、列車機能の中枢を担う環境技術、列車と信号システムおよび列車運行センターを統合するインテリジェントネットワークなど、鉄道システム事業におけるあらゆる領域で技術革新を推進しています。今後も、グローバル市場において業界のトップレベルを維持し、高速都市間鉄道ソリューションや急増する都市部の輸送ニーズに対応した鉄道システムをターンキー方式で一括提供していきます。
鉄道輸送は環境に配慮した都市設計に不可欠です。都市化と人口集中が進み、「スマートシティ」の需要が増大するのに伴い、その重要性はさらに増していきます。日立の監視制御データ取得(SCADA)システムは、人とモノの流れを24時間体制で詳細に追跡し、収集したビッグデータを運輸セクターにとって有益なツールへと進化させます。また、部品の性能や運用状況に関するデータを保守技術者に送信する車上情報センサーの開発にも取り組んでいます。日立のトータルソリューションは、輸送ネットワークをさらに信頼性の高いものにするだけではなく、都市全体の環境性や効率性の向上に貢献します。
今後、鉄道インフラは国境を越えて融合し、鉄道事業は成長市場になると予測されます。日立は欧州市場における主要プレーヤーの獲得を積極的に推進しており、列車運行管理システムを開発するザ・レールウェイ・エンジニアリング・カンパニー(TRE)の買収はその一例です。2015年にはイタリアの航空・防衛・セキュリティ大手のフィンメカニカ社傘下で、信号および列車制御を事業とするアンサルドSTSの株式を相当数取得するなど、欧州やその他の地域で新たな市場を開拓し、事業を拡大するための体制を構築しています。
鉄道市場がグローバルに力強い成長を続ける中、日立は、世界屈指の鉄道サプライヤーとして認知され、お客様の輸送ニーズに対応できるパートナーとして期待される会社になることをめざしています。この10年、日立は鉄道車両メーカーからトータルな鉄道ソリューションプロバイダへと変身を遂げ、保守、ファイナンス、信号システム、運行管理、その他多くの事業を総合的に手がけるようになりました。日立は目標達成に向けて確実に歩みを進めています。

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