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サステナビリティ ハイライト イノベーション2015 Case1:エネルギーソリューションの取り組み Case1:エネルギーソリューションの取り組み

大きな経済的損失を生じさせた2003年8月の米国大停電(ニューヨーク市)

社会基盤として需要が増加する電力の安定性と持続性を確保

エネルギーインフラに関する社会課題

電力はあらゆる経済活動を支えるものであり、現代社会を生きるすべての人の生活基盤となる重要なライフラインです。新興国では都市化や人口増加が進展し、電力需要がさらに高まると予想されています。
電力への依存度が高まった現代社会で、ひとたび電力供給がストップすれば、医療や交通、行政など社会インフラによるあらゆるサービスが機能しなくなる事態が発生します。近年、先進国においては電力を流通させる設備の老朽化が、新興国においても慢性的な電力不足が問題となっています。また、世界各地で、小規模の送電障害の影響が広範囲の発電所に及ぶ大規模停電が発生しています。発電のためのインフラだけではなく、安定的に供給するための送電や配電のためのインフラの整備が急務です。
また、世界全体で進展する経済の発展に伴い、CO2の排出量も増大する傾向にあり、地球温暖化の進行が危惧されており、集中豪雨や寒波といった異常気象、海面上昇、洪水、食糧不足など深刻な問題が発生しています。温暖化の進行をやわらげるには、CO2の排出源となっている化石燃料から得られるエネルギーの使用を抑制し、風力や太陽光などによって生み出される再生可能エネルギーの利用を拡大することが求められています。一方、再生可能エネルギーの課題としては、天候などによる発電量の変動が大きく、大量導入を促進するには電力系統の不安定化があるため、その課題を解消するソリューションが必要とされています。

メガトレンド

  • 新興国における人口増加などを背景に、電力の需要が増大
  • 世界各地で大規模停電が発生するなど、電力供給の不安定化
  • 経済発展に伴うCO2排出量の増加などにより、地球温暖化が進行

日立のアプローチ

発電から送配電までITを活用した総合システムで電力の安定供給を実現

電力を供給するエネルギーインフラにおいて環境負荷の低減と電力の安定供給を両立するには、発電部門で再生可能エネルギーの普及を推進するとともに、安定的に電力を流通させるインフラを整備することが不可欠です。
一方で、エネルギーインフラを取り巻く環境は、国や地域によって異なります。新興国では増大する電力需要に対応するため、電力を安定して供給できるインフラの整備が課題になっています。また電力インフラの拡大に伴い懸念される大気汚染や地球温暖化の進行に対応するため、再生可能エネルギー導入へのニーズが高まっています。エネルギーの自由化が進展する欧米では、社会インフラの老朽化や再生可能エネルギー導入の増加に対応した電力の安定供給が課題となっています。電力システムの改革が進行している日本では、再生可能エネルギーの導入を加速させるため、電力系統の安定化や蓄電ソリューションといったニーズが拡大しています。
多様化する課題を解決するには、社会やお客様が抱える課題を把握し、お客様とともにソリューションを協創することが求められています。発電から送電、蓄電、配電、エネルギーマネジメントまでエネルギー分野で多くの経験と技術を培ってきた日立は、さまざまなニーズに対応しながら安定供給を実現するエネルギーソリューションをトータルに提供しています。
その一つが電力系統安定化ソリューションです。現代社会において電力供給がストップする影響は計り知れません。大規模停電の発生を防止するなど、電力供給を安定させるには、送電や配電をしっかりと整備した電力系統システムを構築しなければなりません。日立は、世界各地で異なる電力事情に対応しながら、先端のITを駆使したソリューションを提供しています。
また、将来世代が持続的に電力インフラに支えられた快適で利便性の高い生活を享受するには、再生可能エネルギーの大量導入が不可欠です。2011年に発生した東日本大震災ではエネルギー需給課題が浮き彫りとなり、災害に強く環境負荷の小さい地域づくりに向け、再生可能エネルギーを活用した自律分散型エネルギーシステムの導入が求められています。日立は風力発電や太陽光発電の信頼性や競争力を向上するための基盤技術の開発を推進。世界初となる「浮体式洋上ウィンドファーム」をはじめ、再生可能エネルギーを活用した発電の実用化に取り組んでいます。さらに、再生可能エネルギーが大量に導入された際に電力の需給バランスを維持する蓄電ソリューションや、発電量に合わせて需要量をITでコントロールする次世代電力網「スマートグリッド」の構築にも取り組んでいます。
日立は創業以来、世界各国の電力インフラの構築に貢献し、67カ国への輸出実績をもち、北米や欧州などでエネルギーソリューション事業を展開しています。

Case1:再生可能エネルギーの電力安定化に貢献する蓄電ソリューション「CrystEna」

近年、風力や太陽光など再生可能エネルギーによる発電システムの普及が進められています。しかし再生可能エネルギーは、天候などの条件によって発電量が変動しやすく、電圧や電流、周波数の乱れが発生すれば電力系統全体に影響が波及し、電力の品質低下や大規模停電などを引き起こす可能性があります。また、需要が少ない時間帯では発電抑制が必要になるなど、需給バランスの調整が不可欠です。こうした課題を解決するため、注目されているのが蓄電システムです。蓄電システムのデバイスをはじめ、民生、産業、自動車向けまで多彩な蓄電池の生産実績をもつ日立は、蓄電ソリューション(CrystEna*1)の研究開発から構築、導入、保守、運用まで幅広く取り組んでいます。

*1
CrystEna:日立グループの蓄電ソリューション全体のブランド、登録商標。日立グループの技術の結晶(Crystal)とエネルギー(Energy)を組み合わせて名づけられている

コンテナ内にすべての機能を積載したオールインワンパッケージシステム

米国では発電はもとより送電網の開放や電力小売の自由化が進む一方で、再生可能エネルギーの導入も進んでおり、風力や太陽光の発電量が世界でもトップクラスです。再生可能エネルギー導入の増加に伴い、電力供給の不安定化が懸念され、電力を安定化する「調整力」そのものを売買する市場として「アンシラリーサービス(電力品質を維持するために電力系統運用者が行っている系統運用サービス)市場」が生まれるなどビジネス化が進んでいます。
日立は大量の電力を貯蔵することで電力系統の安定化に貢献するオールインワンパッケージシステムを開発し、2015年2月から米国北東部のニュージャージー州で実証実験を開始しました。本システムは、長年にわたる蓄電システムの基盤研究における成果として、大電力の放電と8,000回以上の充放電を可能としたリチウムイオン電池を約1,600本搭載。そのほか制御装置、パワーコンディショナーなどすべての機能を40フィートクラスのコンテナにオールインワンパッケージで積載しています。コンテナ型の開発によって据え付け工事が最小化され、工期の大幅な短縮が可能になり、工事費の低減に貢献できます。またコンテナを複数台設置することにより、大容量システムにも対応できます。
また、日立は電池寿命を予測するシミュレータを開発し、10年にも及ぶ長寿命の性能評価を行いました。異常時の遮断設備や自動消火設備など万全な安全対策も施されています。実証実験では、短時間に変動する周波数や電圧などの信号に即応し、数秒単位で瞬時に入出力を調整するなど電力系統安定化への有効性を確かめることができました。今後、検証結果をもとに、さらなるコンパクト化や低コスト化、長寿命化などに向けた開発を進めていきます。

写真
横幅40フィートクラスのコンテナ型システム「CrystEna」

耐久性と低コストを実現した大規模ハイブリッド型蓄電システム

伊豆大島などの島しょ地域は、化石燃料によるディーゼル発電を主な電源とする独立した電力系統で電力を供給しています。自立的なエネルギー供給を実現し燃料費を低減するためにも、風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーの早期導入が期待されています。
再生可能エネルギーの余剰電力を利用し、電力の安定供給を実現する有望な手段として、日立は電力貯蔵に有利な「高入出力・長寿命鉛蓄電池」と、電圧および周波数の短周期変動を抑制するのに有利な「リチウムイオンキャパシタ」を組み合わせた「1.5MWハイブリッド大規模蓄電システム」を開発しました。電力インフラに接続される蓄電システムは長寿命であることのほか、耐久性や信頼性、低コストが求められます。このハイブリッド大規模蓄電システムでは、入出力電流を従来製品の約1.7倍とするなど電池特性を向上させるとともに、電池寿命も20年に延ばす見通しが得られるなど要素技術で大きな成果を上げています。2015年度から伊豆大島の電力系統に接続し、ピークシフト対応や短周期変動抑制の機能および寿命などを検証していきます。
また、再生可能エネルギーを導入した際の影響や、安定化に最適なシステム構成をシミュレーションするシステムなど最先端の技術も導入し、島しょ向けシステムとして、遠隔監視による運用や保守性の向上にも取り組んでいきます。

Case2:ITを活用した広域系統安定化ソリューションで大規模停電を防止し電力系統を安定化

電力系統において、送電線への落雷といった事故が発生すると、送電する電力が瞬間的に低下し、電圧や電流が変動する電力動揺が発生します。電力動揺が持続すれば影響は広範囲に波及し、大規模な停電に至る場合もあります。また、風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーは、天候などの影響を受けるため出力が変動しやすく、電圧や電流、周波数の乱れが発生すれば、電力の品質低下や大規模停電を引き起こす可能性があります。日立は、長年にわたって培ってきた発電・送電技術に加え、ITを活用した電力系統の監視制御・系統安定化などの制御システムまで、電力流通を安定化するソリューションをトータルに提供しています。

大規模停電を防止する新たな「統合型系統安定化システム」をオンラインで検証

電力系統を安定化するためには、送電の際に電気の流れを常に把握し制御することで、電力品質の向上を実現しなければなりません。日立は2012年から米国エネルギー省ボンネビル電力局(BPA)と共同で「自然エネルギー導入促進化に適応する系統安定システム」の研究に取り組み、2014年10月、大規模停電防止のための系統制御を行う新たなシステムの実証プロジェクトをスタートしました。
従来、系統状態の監視は「電力系統監視制御システム(SCADA)」で行ってきましたが、SCADAで計測可能な情報は電圧や電流などの大きさだけで、位相を計測することはできませんでした。今回のシステムでは米国で普及が進んでいる「フェーザ情報計測装置(PMU)」を採用することで、電圧、電流に加え、位相などの計測情報をリアルタイムに収集し、分析することで大規模停電を回避するための対策の策定が可能となります。
現在、PMUは世界的に普及しつつあるものの、系統の状態を監視するという用途にとどまっています。日立はさらに電力系統の解析技術とITを組み合わせることで、系統運用上の課題を解決する新たな統合型系統安定化システムの実現をめざしていきます。

発電所からの送電系統で電力を最適に制御

火力発電所のほか、水力発電所や風力発電所などの再生可能エネルギーでつくられた電力は、送電系統を経由して配電用変電所に送られ、家庭や企業に配電されます。日立は給電情報をリアルタイムで取得し、中央演算サーバ*1で電力安定度シミュレーションを行い、制御指令を出すことで、送電系統への過負荷を防止し、電力系統の安定化を図っています。

*1
中央演算サーバ:コンピュータシステムにおいて中心的な役割を担うサーバもしくは装置のこと

風力や太陽光など再生可能エネルギーを含め、発電所でつくられた電力は送電系統を経由して変電所に送られ、家庭や企業に配電されます。日立はこれまで培った技術と知見を生かし、発電から送変電、配電まで安定した電力システムの構築に貢献しています。

スマートグリッドで電力インフラ老朽化と再生エネルギー導入に対応

ポーランドは電力供給に占める再生可能エネルギーの比率を2020年までに15%に、2030 年までに19%に増加させるという高い目標を掲げ、風力発電の導入を推進しています。一方、50%以上の電力インフラ設備が40年以上前に建設されたもので老朽化が課題となっており、電力インフラ設備の更新や増強は経営的な負担となっています。設備投資を抑制しつつ、再生可能エネルギー導入を加速するために、電力系統の安定化を実現する系統安定化技術に関心が高まっています。
日立は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業」の一環として実施するポーランドのスマートグリッド実証事業の委託先に選定されました。日立が培ってきた系統安定化技術に加え、リアルタイムに風力発電の出力を抑制する制御技術や蓄電システムなどを導入し、ポーランドにおける再生可能エネルギーの導入拡大と、電力インフラへの設備投資の抑制、電力系統の安定化を同時に実現する系統安定化制御システムの構築をめざします。

Case3:5MWの洋上風力発電で再生可能エネルギーの大量導入を促進

地球温暖化防止に貢献する再生可能エネルギーに注目が集まっていますが、中でも風力発電は、出力の大きさとコストが従来の化石燃料や原子力を用いた発電方式に匹敵する水準に達してきており、世界中で大型化・高度化が進んでいます。
日立はこれまでに日本の丘陵地に適合した「2MWダウンウィンド方式風車」を開発しました。2MW風力発電システム「HTW2.0-80」は日本国内において多数の納入実績があり、国内トップシェアを維持しています。また経済産業省や環境省が実施している浮体式洋上風力発電の実証事業に参画し、2010年には日本国内で初となる外洋に設置された着床式洋上風車7基が運転を開始しました。2013年はさらに8基を増設しています。
この経験を生かして開発したのが、5MWの洋上向けダウンウィンド方式風車「HTW5.0-126」です。平地が少なく海洋面積の大きい日本では、海洋での風力発電のポテンシャルは陸上を上回っています。立地の確保や景観への影響、騒音などに対して制約が少ない洋上風力発電ですが、陸上の風力発電所と比較すると、建設・運用費が高く、保守も難しいため、1基当たりの出力が大きく、高い信頼性のある洋上風力発電システムの開発が求められてきました。
今回建設を完了した「HTW5.0-126」は、今後建設が見込まれる洋上風力発電所に向けた風車の大型化ニーズに対応したもので、従来製品の2MW級風力発電システムと比較した場合、定格出力が約2.5倍の5MW、ローター直径が約1.5倍の126mとなる風力発電システムです。ローターを風下側に配置した日立独自のダウンウィンド方式を採用しており、日本のように台風が多い気象条件下でも、暴風時にローターが横風を受けない向きを保持し、風荷重を低減する特長があります。また新たに永久磁石同期発電機と中速増速機を組み合わせたことで、出力に対してシステム全体の軽量・コンパクト化と信頼性が向上し、基礎工事や浮体工事の費用低減とより高い安全性が期待できます。
日立は、今後も拡大が見込まれる風力発電分野において積極的に事業を展開し、低炭素社会の実現に貢献していきます。

今後の展望

電力インフラが支える豊かな生活を世界のすべての地域に。
日立はITを駆使した電力インフラを整備し、電力供給の安定化に貢献します

今後、再生可能エネルギーの導入はグローバルに拡大し、再生可能エネルギーの発電設備が都市部などのエネルギー需要地から遠く離れた広大な土地や洋上に建設されるケースが出てきます。エネルギー需要地まで電力を長距離送電するには送配電システムや基幹系統の系統安定化対策が不可欠です。また、自然災害などにより発電システムがダウンした場合、広域にわたる電力系統を連系させることで電力供給を維持する必要も出てきます。海外では電力自由化や信頼性向上の目的から広域での連系強化が求められています。長距離送電や広域連系の安定化ソリューションとして注目されているのが「高圧直流送電(HVDC)」です。2つの異なる電力系統間で送電するためのシステムで、直流に変換した上で送電するため、電気的な損失や設置面積、建設コストを低減でき、周波数が異なるため交流のままでは直接に接続できない系統の連系にも適しています。日立は、日本国内で設置されたすべてのHVDCプロジェクトに参画し、電力系統の安定化に貢献してきました。
2014年12月、日本市場でニーズが高まるHVDCの新技術をタイムリーに提供するため、日立はスイスのABB社とHVDC事業の合弁会社を設立することに合意し、2015年6月に正式契約を締結しました。今後、日立が主契約者として受注するHVDCプロジェクトに、ABBの最新技術を導入することで、直流システム部分の設計からエンジニアリング、機器供給を一括で請け負い、アフターサービスを含めたトータルなサービス提供を行います。日立のもつ営業ネットワークやプロジェクトマネジメントでの知見、品質保証プロセスと、ABBがもつ最先端のHVDC技術や、システムインテグレーション能力を結集し、日本の電力広域連係に貢献していきます。
世界にはまだ電力の届いていない無電化地域がたくさんあります。電力システムに支えられた豊かな生活をすべての人が享受できるように、日立は送電から変電、配電に至る課題をワンストップで解決し、世界のあらゆるところに電力を流通させることをめざしていきます。そして最先端のITを活用した電力インフラによる社会イノベーションで電力の安定供給に貢献し、電力流通の信頼性を高めていきます。

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