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企業情報CSRへの取り組み

[画像]日立製作所 新事業開発本部 ビジネスリレーション推進部長 望月明
日立製作所
新事業開発本部
ビジネスリレーション
推進部長
望月 明

船舶の排出するバラスト水が生態系をおびやかすという問題が、世界の港湾で報告されています。日立は独自の技術で環境負荷の小さいバラスト水浄化システムを開発しました。

深刻化するバラスト水問題

[画像]東京湾での実証運転東京湾での実証運転

タンカーや貨物船は、空荷になると船体が浮いて航行できません。そこで、重しにする海水(バラスト水)を積むタンクを備えています。30万t級の大型タンカーなら約10万t、50mプール約50杯分もの海水を積み込みます。しかし、これを荷受け先で排水すると、異なる外来生物がその地域の生態系をかく乱する場合があります。

お客様との対話で見出した浄化技術

バラスト水浄化の仕組み
[画像]バラスト水浄化の仕組み

中東の「JAPAN TODAY」セミナーで講演した際にバラスト水の生態系破壊の深刻さを知り、2001年に開発した、湖沼の富栄養化などにより発生するアオコ*1を超伝導磁石を用いて凝集除去する技術を応用し、バラスト水浄化システムを開発しました。
原理は、磁石で砂鉄を集めるのと同じで、海水に鉄粉と糸状ポリマーを混ぜて撹拌することで生物を小さなフロック(塊)に凝縮し、磁石で回収します。
従来は磁気に超伝導磁石を使っていましたが、磁場は強い半面コストが高く、温度管理しにくいという課題がありました。この課題は、コンパクトで維持管理しやすい日立金属(株)の永久磁石を採用することにより解決しました。また、水処理技術を有する(株)日立プラントテクノロジーも加わってプロジェクトを進めました。
試行錯誤を重ねた結果、1ml中に10〜50μm未満の生物5個、50μm以上の生物ゼロ、大腸菌もゼロと、国際海事機関(IMO)が決めたバラスト水の水質基準値を大幅にクリアできました。
IMOは、2017年までに段階的に浄化装置の装備を全船舶に義務づけています。IMOの水質基準を満たすには、殺菌方式が一般的です。しかし、その処理水を海に捨てれば、残留塩素などによる二次汚染の心配があり、またタンクにたまる生物の死骸が錆の原因にもなります。これに対して、日立の「凝集磁気分離方式」は、海水に含まれる生物をフロックとして回収するため、二次汚染の心配がありません。特に欧州は「グリーンシップ」*2に対する関心が高く、日立のシステムに注目しています。

*1
アオコ
藍藻と呼ばれる藻類の植物プランクトンが水面に浮き上がり、緑色の粉を浮かべたような状態になること
*2
グリーンシップ
低環境負荷型外航船

2009年製品化をめざし実証実験中

現在、東京湾で実証運転(陸上試験)を行っており、2009年からは船舶搭載試験を実施します。バイオ研究に取り組む日立の研究者も参画して、生態系への影響などを精査しながら2009年の製品化をめざしています。
また、この技術は石油の代替資源として注目が集まっているオイルサンド(油砂)の油を生産する際に排出する油濁水の浄化にも応用でき、カナダで実証実験中です。

(2007年7月掲載)
(望月 明)