「中期経営計画」の目標達成を阻害するさまざまな要因(リスク)を、国内外のグループ全体で洗い出し、あらかじめ対策を講じることによって、リスクの発生頻度や影響の低減を図っています。
日立グループでは、内部監査により各担当部門が業務運営上のリスクを管理しています。また、昨今の複雑化するグローバルなリスクに対応するため、グループ全体でリスクマネジメント体制の強化に取り組んでいます。2009年度以降、全カンパニー、グループ会社、研究所、海外地域本社を対象に、自然災害リスクや市場環境、原材料価格などの事業リスクといった従来型のリスクに加え、環境リスク、風評リスク、ダイバーシティやサプライチェーンにおける労働条件の不備など人権にかかわるリスク、グループ全体の信用やビジネスの持続可能性に影響を及ぼすと思われるリスクに関する情報を本社に集約しています。
今後は、リスク評価基準の精査、集約したリスク情報のより詳しい分析・評価を行い、経営レベルでその対策を審議する、包括的なリスクマネジメント体制を強化していきます。同時に、社員一人ひとりのリスクに対する意識を向上させるため、リスク情報の共有や社員教育などの施策を推進していきます。

日立グループBCP策定のためのガイドライン
(部門編)
社会インフラに深くかかわる日立グループでは、リスクの発生によって事業が中断し、社会に甚大な影響を及ぼすことのないよう、事業継続計画(BCP*1)の拡充に取り組んでいます。具体的には、2006年12月に「日立グループBCP策定のためのガイドライン(導入編)」を作成、2010年度には本ガイドラインを英語と中国語に翻訳して国内外のグループ各社に提供し、大規模災害などのリスク対策の強化を図ってきました。2011年度には東日本大震災の教訓を踏まえて「日立グループBCP策定のためのガイドライン(部門編)」を作成し、2012年度には英語と中国語に翻訳しました。日立グループの各社・事業所は、このガイドラインに基づき、それぞれの事業に応じてBCPの見直しや策定に努め、国内のみならず海外の主要拠点におけるBCP策定を加速させています。

パンデミックを想定したシミュレーション訓練
世界的な大流行(パンデミック*1)が懸念されている新型インフルエンザに備えるため、日立製作所は2008年度に執行役社長を最高責任者とする専門組織(リスク対策本部)を設置しました。パンデミック発生の際は、この組織が中心となって、グループの社員と家族の安全を確保するとともに、医療、治安対策のほか、ライフライン、物流、情報システムなど、社会機能の維持に不可欠な事業が中断しないように対策を講じる体制を整えています。2009年度には、その一環として「新型インフルエンザ対策ガイドライン」を策定し、2010年度に英語と中国語に翻訳してグループ各社に提供しました。さらに2011年度には、グループ内のサービス事業会社3社と日立製作所が協力して、新型インフルエンザのパンデミックを想定したシミュレーション訓練を実施するなど、対策の一層の充実に努めました。

関西支社の訓練風景
日立製作所では、大規模災害に備えて1998年度から図上訓練を毎年実施し、これまでに全国20事業所で訓練を終えています。これは、3カ月から半年をかけて開発した被災シナリオに基づいて、シナリオを全く知らされていないプレーヤーチームがさまざまな危機状況を適宜判断し、対応するロールプレイの訓練で、大規模災害に対する防災計画の有効性を検証し、改善することを目的としています。2012年度は、過去に阪神・淡路大震災を経験し、現在は三連動地震などが懸念される関西支社で実施しました。図上訓練を実施した事業所は、実施した訓練やその成果を日立グループのリスク対策担当責任者約200人が参加するリスク対策全体会議で報告しています。こうした活動を通じてグループ全体で図上訓練の成果を共有し、大規模災害に対するBCPの改善に努めています。また、衛星通信システムを活用した月例訓練も実施しています。

eラーニングの新型インフルエンザのページ
1997年度以来、日立グループの全社員を対象に、イントラネットにリスク対策ページを掲載しています。ここには、提携通信社や外務省の情報、グループの社員が経験したトラブルなどを入力する一方、有事の際は、注意を喚起するとともに、トップの方針に基づく対策や被害状況などを掲載しています。毎日80件程度の有用な最新情報を入力し、更新しているため、アクセス件数は平均約50万件/月に達し、グループのリスク対策上、不可欠な役割を果たしています。また新型インフルエンザの脅威と対策について学べるeラーニングも提供しています。
事業進出地域の広がりに伴い、危険な地域への業務渡航も増加しています。日立グループでは人命尊重を第一に考えて、1993年度から海外緊急医療を中心とする24時間対応の海外渡航時コールセンターシステムを導入しています。また、海外赴任者および若手の海外派遣プログラム参加者に対して、海外におけるリスク対策の事前教育を実施しており、2012年度は約1,500人が受講しました。
特に渡航リスクの高い国・地域については、外部の専門家を含めた現地調査ミッションを派遣して具体的な対策を検討、実施し、社員の安全確保に努めています。2013年1月のアルジェリアにおけるテロ人質事件の発生後は、世界的に同種の事件発生のリスクが高まっていることから、社長のメッセージを発信して安全確保について万全の態勢をとるよう再徹底するとともに、世界各地域でのリスク対策連携を強化しました。
2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震が発生しました。日立グループでは、発生直後に「日立グループ大規模地震対策統括本部」を設置し、グループの全社員と家族の安否を確認するとともに、各拠点の被災状況の把握に努めました。福島県や茨城県などにある日立グループの多くの事業所が被災し、復旧には相当な期間を要すると予想されましたが、1カ月後には、主な事業所は驚異的な復旧を果たし、おおむね生産を再開することができました。この素早い復旧は、各社・事業所が日ごろから有事に備えていたことと、社外の関係機関のご支援があって達成されたものです。
同年3月23日にはこの統括本部を母体として「日立グループ震災復興統括本部」(本部長:日立製作所執行役社長 中西宏明)を発足させました。日立グループの司令塔として被災情報の一元化を図るとともに、支援要請を集約して支援・復旧作業の効率化を図り、グループ一丸となって被災地の復興に取り組んできました。
日立グループは、日立ブランドをグローバルに共有し事業を展開しています。このことは、革新と信頼のブランドとしてグループシナジーを発揮する半面、事故や風評が発生した場合にはグローバルなリスクになります。こうしたレピュテーションリスクに対応すべく、海外地域本社にコミュニケーション部門を設け、各国のメディア、政府関係機関、さらには人権や環境問題に高い関心をもつNGOやオピニオンリーダーとの定期的な対話を通じて日立の取り組みを広く認識してもらうとともに、経営と世論との間に齟齬が生じないように努めています。
また、日々お客様からお寄せいただくご意見やお問い合わせについては、グループ共用のWebお問い合わせ管理システムを導入し、レピュテーションマネジメントのための貴重な情報資源の一つとして蓄積・活用しています。
万が一、事故や風評が発生した場合は、本社と各カンパニー、グループ会社、海外地域本社が連携して問題の解決にあたると同時に、他地域、他事業における類似事案についても調査し、悪影響の拡大や再発の防止に努めています。