ページの本文へ

Hitachi

企業情報日立グループについて

Anthony Emeka OhazulikeAnthony Emeka Ohazulike

Anthony Emeka Ohazulike

Hitachi Europe,
European Research & Development Centre

2019 EUROPE
AIで環境にやさしい航海を
世界最先端の
AIナビゲーションシステムの開発

AIで環境にやさしい航海をAIで環境にやさしい航海を

航海の現場が抱えている課題

近年、海運業界では、船舶の燃料コストとCO2排出量が課題となっている。年間29,000回の航海を実施する、欧州を代表するフェリー運航会社Stena Lineでも、年間1海里あたり2.5%の燃料消費量の削減を目標に掲げている。これを達成するために、欧州の日立グループ各社から集結したデータサイエンスを専門とするチームは、Stena Lineと共に燃費効率を改善するソリューションの開発に乗り出した。

「船を操縦することはある種の芸術です」。プロジェクトを主導するAnthony Emeka Ohazulike (Hitachi Europe, European Research & Development Centre)は、航海の奥深さをそう表現する。たえず風や海流や波が変化し続ける海上ルートで、同じ状況は二度と訪れない。風を読み、潮の流れを読み、常に最適な舵取りが求められる船の操縦は、経験に裏打ちされた直感が何よりモノを言う。それゆえに、新人の船長と経験豊富な船長とでは、燃料消費量にも大きな差が出てしまうのだ。また、この船長という職業は、今後は徐々に人材不足に陥る可能性も指摘されている。生産年齢人口が減少傾向にある欧州では、年々後継者の育成が難しくなってきているのだ。

日立のAI専門の開発チームは、こうした状況を改善するために、船長の経験値に関わらず効率の良い航海を可能にするAIナビゲーションというソリューションを提案した。それは、熟練した船長の操縦術を機械学習によりAIに学ばせて、気象や環境や船の大きさに応じた最適な操縦プランを示すシステムである。

航海の現場が抱えている課題

あらゆる自然条件を分析するために

ただ、開発はスムーズに進まなかった。航海とは、人間の予想を超える自然との戦い。それを分析・解析するシステムの開発は、簡単な道のりではなかったのである。AnthonyとチーフデータサイエンティストのAatos Heikkinen (Hitachi Europe, Social Innovation Business)、同じくデータサイエンティストのLisa Knoll (Hitachi Consulting UK)がまず着手したのは、航海に影響を及ぼす様々な自然条件をデータ化することだった。Stena Lineの過去4年分の運航記録を洗い出し、また日々のフェリーの運航状況をトラッキングして、気象や海流や水深に関するモデルを構築していった。「大変だったのは、航海中のフェリーとのデータ通信です。陸上であれば一瞬で済むような送受信も、通信環境の悪い海上では長い時間がかかり、夜通しの対応になることもありました」とAatosは苦笑する。

日立はこうしたデータ分析をはじめとするプロジェクトの進捗を2週間ごとにStena Lineに報告し、AI開発への協力を仰ぐ上級船長Jan Sjöström氏との連携を密にした。「航海の現場からの信用が得られなければ、プロジェクトは絶対に成功しません」と、日立とStena Lineとの架け橋を担うプロジェクトマネージャーChristopher Attard (Hitachi Consulting UK)は語った。こうした誠実な関係づくりが実を結び、ある日、Jan船長から「AIナビゲーションシステムを、私の運航する大型フェリーに載せてくれないか」という要請が入った。Anthonyたちが我が子のように育ててきたAIは、ついに初航海に出ることになった。

あらゆる自然条件を分析するために

「誠」がつないだJan船長との協創

試作版AIナビゲーションシステムは、ステナ・スカンジナビカ号で稼働を開始した。それは、Jan船長のもとでの航海修行の始まりであった。航海の現場でテストを行い、そこで見つかった課題を修正し、また次の航海に反映させる。こうしたサイクルを、日立とStena Lineは幾度となく繰り返していった。

海流、波、水深、風という自然のパラメーターは相互に関係していて、どれが欠けてもナビゲーション機能に狂いが生じる。ところが、これらの中に一つ、当初の日立の開発計画には含まれていないものがあった。それは風だった。ある風の強い日、風の条件に対応していない試作版AIナビゲーションシステムは強風に翻弄されて全く機能できず、弱点を露呈した。翌朝、Jan船長からの厳しいコメントが届いた。「今後も風のモデルを取り入れる予定がないならば、私は二度とAIナビゲーションシステムにスイッチは入れないよ」。それは、Jan船長がAIの可能性を信じ、本気で航海に使いたいと考えているからこその叱責だった。開発チームはその言葉を真摯に受け止め、期待に誠心誠意応えようと、風のモデルを追加する作業に取り掛かった。

風をモデル化するのは困難を極めた。海流や波と影響しあうとともに、船自体にも直接影響を及ぼし、さらに船体のサイズや形によって負荷が変わってくる。そうした複雑な風のモデルを構築し、AIナビゲーションシステムに取り込むために、チームメンバーは幾度となく議論を重ねた。「皆それぞれ違う国から参加して、違う専門性を持っているため、意見が合わないこともありました。でも、異なる考えを持ち寄ったからこそ、最適な答えにたどり着くことができました」。Lisaがそう振り返るように、開発チームは“和”の力で課題を克服していった。

船長が航海中にAIナビゲーションシステムを使ってくれているかどうかは、地上でも分かる。スイッチが入っていれば、AIがうまく作動している証拠である。「ある日の航海で、Jan船長は航海中99%も使い続けてくれました。彼が日立を信頼してくれていることが手に取るように伝わってきました」とAnthonyは声を弾ませる。プロジェクトも終盤にさしかかり、試作版のパフォーマンスも安定してきた頃、Jan船長から一通の嬉しい報告メールが届いた。「今日は非常に強い風と波だったけれど、AIはよく頑張ってくれた。海流や風向きの変化に応じて、とても良い航海ができたよ」。Anthonyはその言葉を何度も読み返しながら、我が子が認められたような嬉しさに浸っていた。

「誠」がつないだJan船長との協創

AIと人間のより良い関係をつくるために

AIによる航海の最適化というテーマは、開発チームの“開拓者精神”を駆り立てるチャレンジだった。しかしその一方で、船長や乗組員に対しては、彼らの仕事を奪う技術という先入観を与えていた。こうした警戒心を解いたのは、日立がStena Lineと築いた信頼関係である。いきなりAIテクノロジーを押し付けるのではなく、その開発工程を一つ一つ誠実に開示することで、理解を引き出したのだ。「船長と乗組員たちは、AIが彼らのポテンシャルを引き出し、仕事をより効率的にするという、AIがもたらす本当のメリットを分かってくれました。それを機に、開発のスピードはさらに加速していきました」とAnthonyは言った。かくしてAIナビゲーションシステムは順調に改良を重ね、どのような天候でも効率的な航海が可能なシステムへと進化していったのだ。

では果たして、このAIナビゲーションシステムは、人間の船長に近づいたのだろうか?この問いに、Jan船長は一瞬考えて、こう答えた。「まだ私を追い越してはいないが、しかし、急速に近づいて来ているのを感じるよ」。そして、同じ問いにAnthonyは「新人の船長に比べれば効率よい操縦ができていますが、経験豊かな船長の“芸術”の域にはまだ遥かに及びません」と答えた。日立がめざしているのは、決して人間と競い合うAIではない。人間と協力してより良い仕事をするAIだ。それは言い換えれば、人間とともに次世代に貢献していくAIソリューションなのである。

「子どもたちにより良い環境を残していくために、私はこれからもAIで新たなテーマに挑戦します。確実なことだけをやっていたら、イノベーションどころか、失敗すらも経験できないのですから」。Anthonyがそう言って微笑むと、港からフェリーの出航を告げる汽笛が聞こえた。それはまるで、AnthonyとAIのまた新たな旅立ちを告げる合図のようだった。

日立グループ・アイデンティティとは

日立グループが社会において果たすべき使命 企業理念 優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する ミッションを実現するために日立グループが大切にしていく価値 日立創業の精神 和・誠・開拓者精神 これからの日立グループのあるべき姿 日立グループ・ビジョン 日立は、社会が直面する課題にイノベーションで応えます。優れたチームワークとグローバル市場での豊富な経験によって、活気あふれる世界をめざします

日立グループ・アイデンティティとは

MISSIONMISSION

日立グループが社会において
果たすべき使命

企業理念

優れた自主技術・製品の開発を
通じて社会に貢献する

VALUESVALUES

ミッションを実現するために
日立グループが大切にしていく価値

日立創業の精神

和・誠・開拓者精神

VISIONVISION

これからの
日立グループのあるべき姿

日立グループ・ビジョン

日立は、社会が直面する課題に
イノベーションで応えます。
優れたチームワークと
グローバル市場での豊富な経験によって、
活気あふれる世界をめざします

日立グループ・アイデンティティを
詳しく見る
  • Hitachi Group Identity Movie - I am Hitachi 2 -Hitachi Group Identity Movie - I am Hitachi 2 -
  • Hitachi Group Identity Movie - I am Hitachi -
  • I am Hitachi from around the world
I am Hitachi トップへ戻る