グローバル社会の進展とともに、政治・経済活動のさまざまな局面で「国際標準」への対応が不可欠になっています。世界の共通ルールとして「規準・標準」という思想がどのように生み出され、どんな役割を果たしてきたのか。その意味をとらえ直し、日本の方策や役割を考えます。
世界規準とは、世界を構成する人々がよりよく交流し、共存しつつ競い合っていくためのルール。だからこそ、よりよいルールをつくるために人々は知恵を出し合い、議論を尽くす。利害の異なる者同士がお互いの違いを認めつつ、共存していくために不可欠なものなのです。
EUの結束力を背景に国際標準のイニシアチブを握るヨーロッパ。国内標準やデファクトスタンダード重視から徐々に国際標準強化へシフトしつつある米国。中国、韓国、インドなど新興国も台頭するなかで、日本はどのように標準化活動に取り組むべきか。現状と課題を探ります。
ネットワーク上でのデータのやり取りの安全性を確保する暗号技術。暗号の性能を公的に証明するとともに、ユーザーの信頼感を得るためにも、国際標準に選ばれることが大きな意味をもっています。日立はこれまで一企業としては世界最多、「MUGI」「MULTI-S01」「HIME(R)」の三つの国際標準(ISO/IEC)を獲得しています。
開発スピード重視のコンピューター分野では、業界団体が定めるフォーラム標準が主流。ストレージ技術の標準化を行う団体SNIA(Storage Networking Industry Association)の結成当初から、日立は唯一の日本企業として参加。標準の策定とその技術の普及・教育に積極的に取り組み、SNIA会長も輩出するなど、功績が高く評価されています。
科学技術の発展は標準化の歴史でもあります。その発端は18世紀フランスにおける、修理しやすいよう部品に互換性をもたせた砲車の登場(グリボーヴァル・システム)。この互換性技術が米国に伝わり、大量生産技術を生み出す一方、重要な部品であるネジの規格化から工業製品の標準化が進んでいくのです。
[フォトエッセー] 14 武田徹 ジャーナリスト、 評論家
スカッシュコートの原子炉 「壁打ちテニスに興じる二人。シカゴ大キャンパスの昼休みの光景である。とはいえ筆者は、金網越しにそれを見物するために遠路はるばるシカゴまでやってきたのではない。シカゴ大に設置された原子炉CP-1は、1942年12月2日に臨界を達成、人類史上初めて核エネルギーを安定的に放出させた……」
フットボール場の観客席下のスカッシュコートに建てられた、小さな2階建ての家のような原子炉。核技術をむやみに特別視することなく、リスクとメリットを公正に判断できるようになれば、もっと身近な技術として生かせる日が来るのではないか……。
[ルポ] 14
科学技術ライターの永瀬唯氏が日立グループの現場や研究施設を歩き、レポートします。 今回はHDD(ハードディスクドライブ)をテーマに、日立グローバルストレージテクノロジーズと中央研究所を取材。昨今のHDDの大容量化はすさまじく、2.5インチサイズでも1テラバイト実現が目前に。それを可能にした巨大磁気抵抗(GMR)やトンネル磁気抵抗(TMR)は、原子レベルで磁性を制御する技術。さらに、ディスクへの記録方式を水平から垂直方向にした垂直磁気記録方式によって、データ記録をより高密度化。まさにナノレベルの技術革新に支えられているのです。
[インタビュー] 2 遠藤秀紀 東京大学 総合研究博物館教授
遺体科学
あらゆる動物の遺体を解剖し、その観察・分析から進化の謎に迫る遺体科学。遺体と真っ向対峙し、新たな発見をめざすという点が、従来の医学的な解剖とは異なるところ。解剖学を基礎科学として位置づけ直そうという試みです。
CoolCenter50 ――ITと設備機器を連携したデータセンター省電力化プロジェクト
データセンターでは今、機器の発熱や電力量増加が問題になっています。CoolCenter50はその消費電力を2012年までに最大50%削減するプロジェクト。IT機器や空調・電源設備など各装置の省電力化に加え、それらの稼働状況や消費電力、温度・湿度などのデータをネットワークで収集、統合的に制御するのが特徴です。
島根原子力発電所
1974年に運転開始した島根原子力発電所は、ほぼすべての機器を国産化した国産1号炉。1号機、2号機('89年)に続き、一昨年に建設が始まった3号機(2011年運転開始予定)も日立が受注しています。これは電気出力137.3万kWの国内最大級の大型炉。取材当日は、日立市から船で運ばれた重さ300tの復水器が世界最大の可動式クレーンで陸揚げされました。
日立エコキュート
大気中の熱をヒートポンプに取り込み、圧縮して高熱に換え、湯を沸かすエコキュートは、従来の燃焼式給湯機より30%も省エネ。日立エコキュートは強力熱交換器の採用で、業界初、風呂の追いだき機能付き。水道直圧タイプ「ナイアガラ出湯」なら台所と風呂のシャワーの併用もOK、3階に浴室を設置しても大丈夫!
X線診断装置
昔)二重焦点X線装置DR-10/2S(1952年)。ライトブルーの塗装、丸みを帯びた形など、医療機器に従来なかったデザイン要素を導入し、話題に。
今)オフセットオープン式多目的イメージングシステム「CUREVISTA」(2007年)。デザイン主導で開発を展開、多目的検査に対応するための高い操作性、安全性を実現。
『ひたち』第70巻第4号(秋号) 2008年10月1日発行 定価315円(本体300円)