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HIGHLIGHTS 2004


千葉大学の宇野 求教授(左)と日立製作所 デザイン本部 情報ソリューションデザイン部の古谷 純デザインプロデューサー(右)


“Light City Tokyo”のイメージ(航空写真提供:東京都中央区)
浜離宮を起点にして,隅田川沿いに多様な生物が住む広域緑地帯を100年かけて築く。市井にも大小さまざまな緑が市民によって育まれ,「ガーデンシティ」であった,かつての江戸のように緑豊かな生活環境が広がっていく。



“tyo_e.2003.PRJ”のメンバー


「環境調和型都市デザイン」審査員特別賞“Introducing High Density into the City Center by the Mixed-use”
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都市再生への一つの解,
100年続く都市へのシナリオ
“Light City Tokyo”

環境調和型都市デザインの国際コンペティションで審査員特別賞を受賞

 先進国の少子高齢化,発展途上国の人口増加,世界的な産業構造の変化などを背景に,都市再生が国際的にも大きな課題となっている。そのような中で,2003年に開催された第22回世界ガス会議東京大会で「環境調和型都市デザイン」の国際コンペティションが行われ,千葉大学の宇野 求教授とフェイズアソシエイツの池村圭造氏,および日立製作所デザイン本部有志によるプロジェクトチームの作品が,審査員特別賞を受賞した。その作品“Light City Tokyo”は,都市再生への明快なビジョンと,実現の可能性が高い要素技術の活用法を示したものとして,各方面の注目を集めている。


3年間の研究活動の成果が,国際的にも高く評価

 2003年6月,第22回世界ガス会議が東京で開催されました。この会議は世界三大エネルギー会議の一つとして3年ごとに開かれているのですが,今回,その中の特別プログラムとして実施された「環境調和型都市デザイン」の国際コンペティションで,千葉大学の宇野 求教授とフェイズアソシエイツの池村圭造氏,そして日立製作所デザイン本部の有志によるプロジェクトチーム“tyo_e.2003.PRJ”の作品が,審査員特別賞“Introducing High Density into the City Center by the Mixed-use”を受賞しました。
 課題は,「22世紀に至る環境調和型都市デザイン―都市のあり方とその実現のプロセス」です。人口10万人以上の実在する都市を対象に,効率的なエネルギー活用や環境影響の極小化に配慮しつつ,今後100年以上にわたって持続的成長が可能な都市のビジョンと,その具体的な実現プロセスを示すというものでした。わが国からは,2000年5月に三十数チームが参加して行われた国内予選で,一次・二次審査をクリアした,私たちともう1チームが代表として参加しています。
 私たちのチームが実現したのは,昇降機の開発などで以前からコラボレーション関係にあった宇野先生から声を掛けていただいたことによります。こうした経験は必ず役立つからと,デザイン本部としてのバックアップもあり,自主的な研究会という形で活動を開始しました。月に一度のペースで,夕方から深夜に及ぶ勉強会や休日のフィールドワーク,また,社内の環境やエネルギーに関する専門家,基礎研究所や中央研究所の研究者からのヒアリングなども行ってきました。
 そして完成した作品が,世界8か国9チームの中でも高く評価されたことで,国内予選通過から3年間にわたる研究活動の成果が実ったと考えています。


サステイナブル(持続が可能)な都市を実現する技術とライフスタイル

 受賞した作品“Light City Tokyo”は,江戸時代から約400年もの間,庶民の生活や仕事の場として栄えてきた東京都中央区を,続く100年も持続的に成長,発展させるシナリオです。
 その概要は,高度なインフラに軽量で可変性の高い建築物を組み合わせ,ITの活用によって物質的な消費をコントロールし,自然と共生しながら時代に合わせて柔軟に変容する“Light City”,この中で,人々は高密度に暮らしながら非物質的な情報や文化に価値を置き,職住近接で柔軟なライフスタイル“Light Life”を展開するというものです。
 これを支えていく技術としては,まず,多様な輸送手段を組み合わせた効率的な物流ネットワークやECHONET(Energy Conservation and Homecare Network)などのネットワーク技術と分散制御技術による,地域全体でのエネルギー消費の最適化があげられます。また,家庭用燃料電池による分散電源,小規模浄水場と分散浄水システムによるオンデマンド浄水もキーテクノロジーです。従来のインフラを分散化してネットワークを構築し,ITでコントロールすることによって,利便性を保ちつつ環境負荷を軽減します。そして,人々の移動手段には,地下鉄ネットワークに加えてICカードを利用した共用自転車を活用し,エネルギー消費を抑えます。
 また,サステイナブルな都市を実現するためには,ライフスタイルのデザインも重要です。機能性や利便性は必須条件ですが,それに加えて,「住む人・働く人・訪れる人」にとっての魅力あるまちづくり,精神的,文化的な価値を大切にするライフスタイルへのシフトが求められるでしょう。浜離宮を中心とした墨田川沿いの緑地帯,建物の壁面・屋上緑化などによって自然を積極的に取り入れていくことも,そうした魅力あるまち,魅力あるライフスタイルを実現するための大切な要素の一つです。
 これらを約30年ごとの三段階で,世代から世代へ受け継ぎながら実現していく,ヒューマンスケールでの成長のシナリオを考えました。



100年の生活シナリオ
大切なのは個々の要素技術を生かすビジョン

 この作品が評価されたのは,高密度かつ自然に乏しい東京を対象都市としながら,持続的発展を可能とする明快な解を出したことと,個別の要素技術が具体的で実用性が高いことによるものと考えています。
 アジアの大都市の未来を考えるとき,人口増加,都市集中,経済成長と環境問題のバランスをとっていくことは重要な課題です。それに対する一つのビジョンを示せたことは,今回の大きな成果だと考えています。
 わが国でも,少子高齢化や産業構造の変化などにより,大都市への人口集中,地方都市の中心部空洞化,過疎化,ニュータウンや工業都市の衰退など,都市に関するさまざまな問題が浮上しており,都市再生が喫緊の課題となっています。その解決策として,大規模なスクラップ アンド ビルドだけでは限界があります。やはり,供給側ではなく生活者の視点で,現在の暮らしを生かしながら,より快適に更新していくくふうが求められているのではないでしょうか。
 日立製作所は,2003年4月から都市開発システムグループを発足させ,日立グループ内のさまざまな技術を活用した都市開発事業を推進しています。この作品で示した「生活者サイドから考えた持続的成長が可能なまちづくり」のシナリオは,日立製作所による都市開発の考え方の基盤としても生かせると思います。
 都市再生のためには,個別の要素技術と,そのポテンシャルを適切に引き出すトータルなビジョンの両方が欠かせません。今回,宇野先生を中心として示すことができたビジョンに,日立グループの技術力を生かすことができれば,さまざまな都市の再生・活性化,そして持続的成長に貢献できるはずです。私たちの活動が社会的ニーズとそれを満たす技術の懸け橋となれるように,この成果を次なるステップにつなげていきたいと考えています。

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