日本の将来を切り拓くカギは、
地球環境を守る「エネルギー技術革新」にあり。
経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長 上田隆之
株式会社 日立製作所 地球環境戦略室 室長 小豆畑茂
| もはや「待ったなし」の温室効果ガスの排出量削減。 日立グループも地球環境戦略室を設立して、グループ全体での環境対策の促進に取り組んでいます。 今回は、経済産業省の上田さんをお迎えして、 社会の成長力を確保しながら、温暖化対策を推進していく決め手は エネルギー技術革新にあるという視点から、 温暖化対策の現状やエネルギー技術革新の課題などについてお話をうかがいました。 |
もしも世界中が「日本」なら温室効果ガス半減も夢ではない?
小豆畑 今日は、たいへんお忙しい中、おいでいただきまして、ありがとうございます。今年2008年から京都議定書で取り決めた温室効果ガス削減の「約束期間」が始まったこともありまして、環境問題、とりわけ温室効果ガスの削減に対する社会的な関心も高まっています。私ども日立グループも2025年時点で、1億トンのCO2排出抑制をめざす「環境ビジョン2025」を昨年策定し、その実現にむけて活動しています。上田さんは地球温暖化対策を日本はどのように推進していくか、国としての立場からさまざまな政策の立案やその実施にあたって、ご活躍になられています。そこでまず温室効果ガスの削減について、現状や見通しについてお教えいただきたいと思います。
上田 私も、日本だけでなく世界的に地球温暖化に対する関心が急速に高まっていると実感しています。そこでまず地球の「平均地上気温」を見てみますと、過去100年間で0.74℃上昇しているのですが、その上昇の仕方は、過去50年間は過去100年間のおよそ2倍のスピードで、過去25年間は過去50年間をはるかに上回るスピードになっているというように、どんどん加速しています(図1)。
そして、この温暖化の主要な原因については、長い間議論がなされてきましたが、いまやCO2などの温室効果ガスであるということが多数意見となっています。このCO2について見てみますと、2000年から2005年までの人為的排出量は、地球の大自然が吸収できる能力の約2倍に達しています。このままではどんどん温室効果ガスの濃度が高まってしまいますから、少なくとも人為的排出量を現在の2分の1に減らさないといけません。そういうところから昨年6月のサミットで「世界全体の温室効果ガス排出量を2050年までに半減する」という目標も出てきたわけです。
■IPCC(*)の第4次評価報告書による分析(図1)
●過去100年間で世界の平均気温が0.74℃上昇
●近50年間の気温上昇傾向は、過去100年間のほぼ2倍
平均地上気温(1961〜1990年の平均気温との偏差)
環境省資料より抜粋
(*)IPCC…Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル
小豆畑 現在のように化石燃料を主要なエネルギー源とした産業や生活体系では、生活水準が上がって、エネルギー消費量が増えれば必然的に温室効果ガスの排出量も増えてしまいますね。そのようなエネルギー環境の中で、温室効果ガスを半減させるということは、生活水準を下げる努力をしない限り達成できません。その点がたいへん難しいのではないでしょうか。
上田 おっしゃる通りです。世界全体でCO2排出量を半減させるといっても、インド、中国のように、いままさに高度成長期を迎えて、これからさらにエネルギー消費量が拡大していく地域もあります。そのようなことを勘案すると主要先進国は今後ほとんど排出量ゼロにしていかないと世界全体でのCO2排出量の半減は不可能だということになります。
小豆畑 それはほとんど不可能といえますね。
上田 一気にゼロにするのは不可能です。しかし、それでは打つ手はないかというと、そうではないと思います。第一に省エネルギー化の促進です。この点で日本は世界を大きくリードする優れた技術と実績を持っています。
議論を分かりやすくするための一つの目安として、各国のGDP単位あたりの一次エネルギー供給量の比較というグラフを作成しました(図2)。これをみるとEU(27か国)やアメリカも、日本の2倍のエネルギーを使っていることが分かります。ですから、もしも、世界の国々のGDP単位あたりのエネルギー供給水準が日本並みになったら全世界のエネルギー供給量は半減できる計算です。もちろん国土の広さや気候の違いなどがありますから、現実的にこの計算通りになるとは考えていませんが、日本並みのエネルギー効率になれば、エネルギー供給量が大幅に削減されることは間違いありません。
小豆畑 日本は、エネルギー資源を輸入に頼ってきたこともあって、過去数十年にわたって省エネ技術の開発を続けてきました。また、産業分野でも家庭でも、省エネが当然という意識が行き渡っています。この蓄積が大きいですね。
上田 家電などは、世界中見渡してみても、日本の省エネ技術は断然進んでいます。省エネ技術に関しては、中国でも日本に学ぼうという意欲を持っています。私は、この省エネの技術と思想を世界に広めていくことが重要だと考えています。
■エネルギ−効率の国際比較(図2)
●各般の省エネ対策を通じ、わが国のGDP単位あたり一次エネルギー供給量は、世界で最小の水準。
各国のGDP単位あたり一次エネルギー供給量の比較
※IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)統計より算出一次エネルギー消費量をGDPで除した数値を元に、日本を1とした場合の指数。
機関誌「Uvalere(ユーヴァレール) Vol.10より
文=清田勝哉 写真=吉江好樹
記載の情報は取材時点のものです。
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