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ミドルウェア

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短期間でPCサーバへダウンサイジング。
メインフレームと同等の安定稼働を支え、
効率的なオープンシステム運用を実現した「JP1」

マンション・ビルの総合管理大手の株式会社東急コミュニティー(以下、東急コミュニティー)では、全国の営業所等からの入出金情報の入力・管理等を行うシステムを、メインフレームから日立のアドバンストサーバ「HA8000」へとダウンサイジングした。PCサーバをメインフレームと同等に安定稼働させるために、日立の統合システム運用管理「JP1」の多彩な機能をフルに活用。管理要員の工数を増やすことなく、土曜日までサービス利用時間を延長するなどの成果をあげた。東急コミュニティーは今後、オープンプラットフォームの柔軟性を活かして、戦略的なIT活用に取り組んでいく。

競争力強化を目指してオープン化プロジェクトを推進中

石橋 健氏の写真
株式会社東急コミュニティー
IC事業部
企画統括部 部長
石橋 健氏

東急コミュニティーは、2007年3月をめどに、メインフレームのアプリケーションをオープンシステムに置き換えるプロジェクトを進行中だ。

「コストを低減しつつ、きめ細かいサービスを地域社会へ提供するには、ITの活用が不可欠です。メインフレームでは、多大な運用コストがかかるうえに、臨機応変なサービス追加は難しい。当社の競争力強化プロジェクトの中から、『脱メインフレーム』プロジェクトが生まれてきたのです」と石橋氏は説明する。

会計システム再構築として、2004年春に再スタートした、現在推進中の「脱メインフレーム」の先行プロジェクトが、会計フロントシステムである。このシステムは全国のマンション・ビルの管理部門から支払などの諸データを収集し、数百社にも及ぶ清掃・保守点検などの協力会社への支払をし、マンション管理組合との管理費の精算をするなど、さまざまな業務を包含する東急コミュニティー独自のシステムである。

「長年にわたって作り込んできたシステムであり、オープンシステム上ですべてをプログラミングし直す時間の余裕はありません。既存プログラムを流用できるところは流用して、とにかく予定期間内に『脱メインフレーム』の歩を進めることを優先させました」と石橋氏は言う。

メインフレームとの双方向連携もJP1とSANRISEで実現

システムの再構築は、売上計上入力を情報の発生現場で行う業務プロセス改革、自動処理を積極的に取り入れたアプリケーションの機能アップなどと並行して進められた。

開発期間の短縮化には、日立のオープンミドルウェア群が貢献。既存のCOBOLプログラムは「COBOL2002」を使って自動コンバートし、複雑な業務ロジックをスムーズに移行した。画面や帳票の作り直しには画面・帳票サポートシステム「XMAP3」、データはノンストップデータベース「HiRDB(ハイアールディービー)」に保管し、メインフレームと同等のオンライン通信は、分散トランザクションマネージャ「OpenTP1」で実現した。

さらに、オープンシステム上で安全確実かつ効率的な運用を行うために、統合システム運用管理「JP1」の多彩な機能を駆使している。

まず、バッチ処理などのジョブ運用は、ジョブ管理「JP1/Automatic Job Management System 2(JP1/AJS2)」できめ細かく自動化。その結果、オペレータの省力化に加えて、メインフレームで4時間かかっていた処理が2時間で完了するなど、バッチ処理の効率化と時間短縮にも成果があがっている。

日々のバックアップでは、日立ディスクアレイサブシステム「SANRISE(サンライズ)」のボリュームレプリケーション機能である「ShadowImage(シャドウイメージ)」とバックアップ管理「JP1/VERITAS」を使って、オンライン処理終了時、バッチ処理終了時にオンラインで使用する正ボリュームを、バックアップ用の副ボリュームに瞬時にコピー。全業務終了後、この副ボリュームを日立高性能テープアレイ装置(AIT*)「SANRISE TF700」へバックアップしている。

メインフレーム上では財務会計システムなどが現在でも稼働しており、メインフレームの完全撤廃までは双方向のデータ連携が不可欠である。そこで東急コミュニティーでは、SANRISEをメインフレーム領域/オープンシステム領域/共用領域の3つの領域に区切り、双方向の安全確実なデータ連携を実現した。

「メインフレームとオープンシステムとの連携は、双方向なのでうまくできるかと心配したのですが、JP1とSANRISEのおかげで、移行期の課題を難なく解決することができました」と石橋氏は評価する。

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Advanced Intelligent Tape

メインフレームと同等の安定稼働を多面的な監視機能で支えるJP1

羽鳥 聡の写真
株式会社日立製作所
産業・流通システム事業部 流通第二システム本部
第三システム部 主任技師
羽鳥 聡

メインフレームと同等の安定稼働を実現するため、JP1の多彩な監視機能が活用されている。

ネットワークの監視には「JP1/Cm2」を利用、サーバの稼働性能は「JP1/Performance Management (JP1/PFM)」で監視し、しきい値を超えた時点で警告を発するポリシー運用を行っている。

ネットワーク管理、ハードウェアの障害監視を中心としたサーバ管理、バッチやプロセスの処理結果で発生するイベントメッセージの監視を含むソフトウェア監視など、複眼的な視点で実行されている監視の状況はすべて、統合コンソール「JP1/Integrated Manager(JP1/IM)」で一元的に把握できる。

「平日の昼間13時間はメインフレーム用のオペレータがサーバルームに常駐していますが、その人数を増やすことなく安定運用しています。整理された情報がわかりやすくカラー表示されていますので、コンソール画面をのぞくだけで稼働状況がすぐわかります」と石橋氏は説明する。

現在の効果的な監視体制を確立するまでには、どのメッセージをフィルタリングするかといった試行錯誤を重ねている。

「日立が提供した運用管理のノウハウと、東急コミュニティー様が持っている豊富な経験とすばやい意思決定がマッチングしたことで、強固なシステム基盤を短期間で作り上げることができました」と新システムの構築を担当した日立の羽鳥は補足する。

JP1による無人運用でサービス時間の延長も実現

新システムは、2005年4月、予定どおりに稼働開始した。

「ゼロから開発していたら、とうてい間に合わないプロジェクトでしたが、日立は短期間でのマイグレーションを支援してくれました」と石橋氏は強調する。

JP1の強力な自動運用機能により、サービス時間の延長も実現できた。オペレータのいない土曜日も新システムでは利用できるようになったのである。

「PCサーバは、定期的にシステムの再起動を行う必要がありますが、これもJP1を使って、オペレータの負荷をかけずに、週1回自動リブートを行っています」(羽鳥)。

東急コミュニティーは、脱メインフレームが実現できれば、その後は、既に稼働中のWebシステムのサーバ統合や、運用のアウトソーシングなど、さまざまなシステム刷新を積極的に進めていく計画だ。

JP1を活用した新システムの安定稼働により、将来のビジネス基盤づくりに向けて大きな一歩を進めることができたのだ。

東急コミュニティーの新システム概要
東急コミュニティーの新システム概要

USER PROFILE (2006年6月現在)

東急コミュニティーのロゴ

株式会社東急コミュニティー

[本社] 東京都世田谷区用賀4-10-1
世田谷ビジネススクエアタワー
[設立] 1970年4月8日
[資本金] 16億5,380万円
[従業員数] 4,247名(2006年3月末現在)

マンション・ビル管理、賃貸運営、改修工事などを手がける建物総合管理会社。施設の管理運営手法がポイントとなるPFI (Private Finance Initiative)事業では、これまで培ってきたノウハウや提案力を基盤に力を発揮しており、今後の参画事業も、衆議院赤坂議員宿舎や参議院新議員会館など大型案件が決定している。

特記事項

  • この記事は、「日経コンピュータ(8/7号)」に掲載されたものです。
  • JP1HiRDBOpenTP1COBOL2002XMAP3の詳細については,ホームページをご覧ください。
  • 記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
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