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24時間眠らない為替ディーリングシステム。
安定したスピーディな取引のために1,000近いジョブの稼働を支える「JP1」

株式会社三井住友銀行(以下、三井住友銀行)の強みは、スピード、効率性、収益性という3つのキーワードで表すことができる。ミッションクリティカル性の高いシステムのオープン化に早くから取り組んできたのも、この3つの要素を重視する経営戦略を反映したものということができる。そのひとつ、外国為替のディーリングシステムは、1980年代に脱メインフレームを図り、現在では、約90台のUNIXサーバでワールドワイドに稼働する巨大なオープンシステムになっている。1,000近いジョブ運用は、日立の統合システム運用管理「JP1」で制御。変化への柔軟な対応を実現しつつ、グローバルシステムの安定稼働を支えている。

オープンでグローバルな為替ディーリングの基盤システム「FOX」

砂田和久氏の写真
株式会社三井住友銀行
統合リスク管理部
システム企画室
業務企画グループ
グループ長
砂田和久氏

三井住友銀行の為替ディーリングシステムの歴史は、取引ライフサイクルを短縮する「STP(Straight Through Processing)」を追求する歴史ということができる。

早くも1980年代に脱メインフレームを図り、VAX(Virtual Address eXtension)で稼働するパッケージへ移行。2000年にはフロントシステム機能を切り出してUNIXシステムへ移行し、独自アプリケーション「FOX(FOreigneXchange system)」を開発。フロントシステムのオープン化を契機に、個々の取引をリアルタイムにリンクさせるCLS(Continuous Linked Settlement)決済も実現した。

さらに2003年には、メインフレームで稼働していたバックオフィスシステム機能もFOXシステムに統合。3度にわたるシステムインテグレーションは、いずれも日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)が担当して、グローバルでオープンな為替ディーリング基盤を作り上げたのである。

「取引発注から約定入力、執行、決済、照合に至る一連の取引処理をシステム化したことでSTP化を果たすことができました。同時に、システムへの依存度が高まり、システムはよりミッションクリティカルな存在になっています」と砂田氏は指摘する。

今やFOXシステムは、東京、ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、香港、バンコクなど17拠点を結ぶ地球規模のシステムとなった。稼働は1年365日で、24時間眠らない。

三井住友銀行はインターネットバンキングにも力を入れているが、インターネットを通じて為替予約や外貨預金振替などができるi-Dealサービスも、バックオフィスはFOXが支えている。二重三重の意味で、止まることの許されないシステムなのである。

膨大なジョブをきめ細かく運用管理する「JP1」

大鹿幸一郎氏の写真
株式会社日本総合研究所
銀行システム第二事業本部
市場国際第二グループ
マネジャー
大鹿幸一郎氏

FOXシステムのジョブ運用に、日立の統合システム運用管理「JP1」が導入されたのは、フロントシステム機能をUNIXシステムへ切り出すことが決まった1998年頃のことである。

「選定にあたり、FOXシステムで必要な機能をチェックした結果、きちんと機能的に網羅していたJP1を選んだのです」と三井住友フィナンシャルグループのグループIT戦略を担う株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)の大鹿氏は当時を振り返る。

たとえば、あらかじめ設定した営業日カレンダーに沿って「月初第1営業日にこのジョブを実施する」という設定ができるのがJP1である。「月初第1営業日」が何月何日であるか、人間が判断する必要がない。しかも、世界中の拠点を個別のカレンダーで管理しながら、互いのジョブの待ち合わせ時刻などを正確に設定できる。

「日立は米国にも強力なサポート部隊がいて、グローバルなサポートが期待できるというのも、採用の決定打になりました」と日本総研の若山氏は付け加える。
きめ細かいスケジュール設計が可能で、安定稼働に優れたJP1は、2003年のバックオフィスシステム機能統合のプロジェクトにおいても引き続き採用され、グローバルな為替ディーリング基盤全体を支えている。

機能拡張や拠点増加など変化への柔軟な対応を実現

若山竜太氏の写真
株式会社日本総合研究所
銀行システム第二事業本部
市場国際第二グループ
若山竜太氏

現在のFOXシステムは、約90台のサーバ上で800万ステップにのぼる膨大なプログラムが稼働する巨大なオープンシステムである。

バッチジョブは、朝5時の開局バッチ群、決済を履行したりメインフレーム上の他システムへデータを転送するなどの日中バッチ群、閉局と夜間取引用データベースに切り替える閉局バッチ群、バックアップを含む夜間バッチ群の4つのグループに大別できる。

JP1導入効果の第1は、この複雑なシステム全体の安定稼働を実現できたことである。
「為替ディーリングのサービスが多岐にわたるため、システムの機能もバッチジョブの動きも複雑です。他システムとのインタフェースもたくさんありますが、ジョブ運用はきわめて安定しています」と砂田氏は評価する。

第2の導入効果として、拠点の追加を含めて、変更への対応が柔軟にできることである。「数百のジョブを主要拠点ごとに動かしていますので、全体でのジョブ数は1,000近くにのぼります。これをツールを使わずに管理していたら、変更に際してミスが出るのは避けられません」(若山氏)。

ほかにも導入効果として、障害を監視してビジュアルに表示できること、ジョブの異常終了が起きた部分がわかりやすくカラー表示され、マウスでクリックしていけば問題点までドリルダウンして特定できるため、短時間で復旧ができることなどがある。

三井住友銀行では、ディザスタリカバリ対策も入念に講じている。東京で災害が起きたときには大阪のシステムに切り替えるというように、世界中のシステムがバックアップシステムを持っており、毎年、実地訓練を行っている。バックアップシステムへの切り替えには1拠点につき100程度のオペレーションが必要だが、これを的確に自動制御するのもJP1の役割である。

「20年近くにわたって為替ディーリングシステムをインテグレーションしてきた日本HPは、レスポンスが少し遅いと言えば、すぐに原因を解析して対処してくれます。JP1を含む多種多様なミドルウェアから、ハードウェア、アプリケーションまで総合的にサポートして、ワンストップでサービスしてもらえるので、とても感謝しています」と大鹿氏は評価する。

日本HPの運用保守を日立の開発部隊が支援するなど、日本HPと日立の密接なアライアンスもワンストップサービスを背後で支えているのである。

今後も市場の拡大とともに、FOXシステムは規模も機能も拡大していく。i-Dealサービスとの連携を強化するなど、他システムとのインタフェースも増えていく。

システムへの依存度が高まる一方で、変化の速度がますます加速している銀行の外国為替ディーリング業務にとって、JP1はなくてはならない存在なのである。

三井住友銀行 FOXシステム概要
三井住友銀行 FOXシステム概要

USER PROFILE

株式会社三井住友銀行

[本社] 東京都千代田区有楽町1-1-2
[設立] 1996年6月6日
[資本金] 6,650億円
[従業員数] 21,020名(2005年3月末現在)

日本の三大メガバンクのひとつ。個人向けコンサルティング、中堅・中小企業向けリスクテイク貸出、投資銀行ビジネスに注力。邦銀として唯一、2001年度から連続して、毎年1兆円近い業務純益を計上し続けている。

USER PROFILE

株式会社日本総合研究所

[東京本社] 東京都千代田区一番町16
[大阪本社] 大阪市西区新町1-5-8
[創立] 1969年2月20日
[資本金] 100億円
[従業員数] 2,962名(2005年3月末現在)

情報システム・コンサルティング・シンクタンクの3つの機能を有機的に結び付けた、付加価値の高いサービスを提供する知識エンジニアリング企業。2003年4月、三井住友銀行のシステム関連機能を移管・統合した。

PARTNER PROFILE

日本ヒューレット・パッカード株式会社

[本社] 東京都品川区東品川2-2-24 天王洲セントラルタワー
[設立] 1999年7月
[資本金] 100億円
[従業員数] 約5,700名(2004年10月現在)

大企業からコンシューマまで、幅広い顧客層に対してITソリューションを提供。数多くの有力企業と協調することで、提供可能なソリューションの幅を拡大し、迅速な対応やサービス・クオリティの向上などにも努めている。

特記事項

  • この記事は、「日経コンピュータ 2006年2月20日号」に掲載されたものです。
  • JP1の詳細については,ホームページをご覧ください。
  • UNIXは、X/Open Company Limitedが独占的にライセンスしている米国およびその他の国における登録商標です。
  • その他記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
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