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 下駄箱でみつけた手紙にはこう書かれていました。

「夕刻、体育倉庫の裏で待つ」

 他には何も書かれていません。よっぽど慌てていたのでしょうか、宛先さえもないのです。紙一枚で封筒にも入っていません。

 もしかしてこれは手紙ではなくて、ただのメモ書きなのかも知れないです。それとも、「夕刻」さんが名前で「体育倉庫の裏で待つ」が内容なのかも。そういえば差出人の名前もありません。

 興味がないといえば嘘になります。むしろあります。だからこっそり、体育倉庫まで様子を見にやってきたのです。建物の角に身を隠しながら様子をうかがってみると、そこには、あなたが女性なら男性が、男性なら女性がいると思いなさい。好みのタイプを想像しなさい。

 その人物は、あなたの方を見てもいないのに、「手紙を寄越せ」と言いだします。あなたは少し悩んでみせてからその人物に歩み寄り、手紙を広げてみせるのです。

「ふむ」と文面を睨んだその人物は、懐から二枚の紙を取り出します。

「あなたのことが大好きです。つきあって下さい」と一枚の紙にはあります。あなたは大きく息を吸い、どうしようかと考えますが、その人物はあなたの様子は気にもかけずに、もう一枚の紙を渡してきました。そこにはあなたの知人の名前が、それだけでは性別がよくわからない名前が書かれています。

「この名前の人物に」とその人物は言うのです。「この紙をお渡しなさい」

 あなたは、あれっ、と思いましたが、その人物は背中ごしに軽く手を振ると、振り返りもせず行ってしまいました。あなたの手には二枚の紙が残されています。

「はい、これ」

 知り合いを見つけたあなたは、その手紙を、いや、紙を差し出すのです。

 知り合いの顔色がさっと変わって、あなたは慌てて顔の前で手を振ります。 「そうじゃなくて、言付かっただけだから」

「わかってる」と厳しい顔で知り合いは言います。鞄からハートマークのシールで封印された手紙を取り出し、あなたの手に押しつけてきます。

 その手紙を、あなたが本当に好きな相手に渡すようにと知り合いは言います。

 そう言うと、顔をわずかに赤らめ俯き、自分の上履きの先を見つめています。しばらくそうしていたあとで知り合いは顔を背けて、一人、哀しそうに頷きました。

「この手紙の中身は」と、受け取った手紙を見つめたままであなたは聞きます。「次の指令。それとも」それとも一体何なのでしょう。

「それを決めるのは」知り合いは言います。「受け取った相手の仕事だし、相手の仕事を決めるのは、その当人じゃないかも知れない」

 でも、とあなたは手紙を自分の胸に押しつけています。なんなんだろう。この気持ち。

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中間試験です。
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中間小説は、実は事前に設定されたある「お題」に基づいて書かれています。
お題は毎回かならず変わります。
お題は毎回かならず「る」で終わる動詞です。
たとえば、第10回『お願い工場』のお題は「祈る」。
たとえば、第9回『王国の鍵』のお題は「かぶる」。

さて、ここで問題です。

今回の『そんなこと急に言われても、』に設定されたお題は何でしょうか?
いつものように、「〜〜る」で終わる動詞です。

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